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コーギーとお昼寝

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ああ素晴らしきかな、自由視点映像!

ラグビー組のハイテンション小話


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生きたがりな彼女

「この間、八幡に自分の仕事ぐらいちゃんと定めろって怒られたのよね」
姉さんがぽつりとそんな言葉を漏らした。
グラスの氷はだいぶ溶けていて、そう言えばこれでもう7杯目のスコッチだと思いだした。
「あいつならそう言うだろうね」
此花さんが軽く笑いながら、グラスにウィスキーを注いできた。
「お水取ってきますね」
「いやいいよ、私が取ってくるから加古川が聞いてやんな」
此花さんがそう言ってふらふらと台所に向けて歩き出した。
妙にハイペースな姉さんに合わせて此花さんも相当飲んでいるはずで、足取りはどこかおぼつかない。
「八幡に言わせれば、私は『意地汚い』そうよ」
「私はそう思わないですよ」
「死ぬときは潔く死ぬものだって、今どきそんな事言う奴がいることに驚きだわ……ねえ、加古川。あなたも覚えてるでしょう?19951月17日を」
その日付はきっと神戸の人間ならば誰もが忘れられない日付だ。
当然私もその日の記憶ははっきりとある。
「ええ」
「死は、いつだって私たちの背後に張り付いている。『話好きが暖炉に背を向けるように、 人は死と背中合わせになっている』」
「ポール・ヴァレリーでしたっけ」
「ええ。私ね、八幡と言う人間の人間性だけはどうしても好きになれないの。八幡は、死を知らないもの」
「……死を知らない?」
「死ぬという事を皮膚感覚として分かってない。本質的に日本国のことと、釜石のこと、まあ釜石は個人としての感情だからビジネスはまた別でしょうけど、それ以外の大抵のことは心底どうでもいいと思ってる。ああいうところだけは、私個人の感情として好かないわ。まあ単純バカだと思えば愛嬌はあるけれどね」
「でも、ビジネスとしては切らないんですね」
「個人の感情と生存戦略は別よ。

……加古川、神戸製鋼の火は永遠に絶やさないでね。たとえ世界中の高炉の火が落ちて、鉄鉱石が地上から消え失せても、神戸製鋼の火はこの神戸の街で煌々と燃える炎であるべきなの」

姉の手が私の手に掴まれる。
その目に燃えるのは命への執着であった。
(そうか、私は神戸製鋼という命を引き継ぐ炎なのだ)
たとえ自らの死が訪れようとも、神戸製鋼と言う名が存在する限りその存在が消え失せることはない。
「わかってます、」
この誰よりも生きることに執着する人の名を、私は永久に背負うのだ。





コベルコ姉妹の話。
BGM:ぼ/くたちがやり/ました

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晴天、秋の頭にて。

「開幕二連敗なんやて?」
『……それは俺への嫌味と捉えていいのか?』
電話越しに少しばかりの不機嫌の色を漏らした80年代の王者に「まさか、」と答える。
昨日のひどいスコアでの負け方についてはネットで確認しているが、まだ少し引きずっているのかもしれない。
「ただの電話越しの陣中お見舞いやて」
『そっちだってまだシーズン中の癖に何を言うんだか』
「ははっ、気に障ったんならごめんな?」
『別に』
「ならええわ、こちとらもう20年近く待たされてることを忘れんでくれな?」
『……分かってる』
ぼそりと低い声で漏らした。
大丈夫、まだこの男の心の火は消えてない。
どれだけ時間がかかっても、ここまで会いに来てくれるという覚悟が声に混ざっている。
「ノエビアの芝の上で逢おう」
そう告げると『おう』と告げて電話が途切れる。



(ほな、あいつが来るまでここに残っとらんとなァ)


スティーラーズさんとシーウェイブズさん。
昨日の初観戦で脳裏に残っている感想はまあ色々あるんですが、とりあえずの感想代わりに。

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おじいちゃん息してない

ただのゆるゆる室蘭釜石の会話


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堕ちる太陽と消えない月

どうせ福岡まで来たのだし、久し振りに会ってやろうかと思ったのだ。
市営の運動場の片隅で彼はあの頃よりも少しだけ暗くなった瞳でボールを磨いていた。
こっそりとその中に忍び込んで意外によく整備された芝生の上に腰を下ろした。
「生きとったんやなあ」
「第一声がそれですか」
ボールを磨く手は止まることもなく、視線もこっちに移すことはない。
少し前に世界遺産にまでなった官営製鉄所の名を冠する彼の瞳の深い黒を、何度敗北の悲しみで染めてやりたいと思った事だろう。
「下位リーグなんて見てられひんからなあ、神戸んとこのと違って俺は忙しゅうてあかんのや」
神戸はよく釜石に早くトップリーグへ帰ってきて欲しいと嘆いている、その気持ちは正直さっぱりわからない。
こいつにに帰って来いと言ったことは無いし、もし奇跡的に昇格してきたってあの頃のあいつは永遠に帰ってこない。
「その割にはよくこんなとこまで一人で来れましたね」
「……今どきはネットでちゃちゃっと調べられるからなあ」
二つ目のボールを磨きにかかるが、それでも視線はこっちを見ない。
それでいいのだ。
今はもう水平線の向こうに沈んだ太陽でしかないこいつに、今も1部リーグにかじりつく自分は眩しいのだということを分かっている。
あの頃、日本が天井知らずの成長を走り抜けていたあの時代に競い合っていた。
誰よりも勝ちたかったあの背中は半世紀もの月日の中に溶けて消えたまま、その光は弟分が継いだけれど彼もまた神戸から伝え聞く限りまだまだのようだ。
「せいぜい2部リーグに落ちない程度の努力はしたらどうです?随分1位と勝ち点差ついてるみたいですけど」
「あれはあいつの実力からしたら順当やろ、それに俺が2部に落ちるならあんたもこんなとこに燻っとらんで2部に来てもっぺんやったろや。そん時は完膚なきまでに負かしたる」
そう告げるとボールの尖った方で思い切りみぞおちを殴られた。
石炭の黒さに似た目に映るのは、怒りと闘志だ。
「……闘志がまだ消えてへんならええ」
そう笑うと、なんとも不愉快そうにこちらをにらんで「早よ大阪帰れ」と呟いた。




ライナーズさんと鞘ヶ谷。

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