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コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

戻り梅雨の陰鬱

夏が来たと思ったら急に梅雨の天気に戻ったせいか、どうにもぼんやりとした不具合を感じる。
報告書を一文書いては消してばかりで全く仕事がはかどらない。
東京がいたらぼうっとするなと怒られそうだがいない奴の事を考えても仕方ない。
「君津ー、元気?」
「……急に来るなよ」
後ろからフラッと現れた鹿島に思わずため息が漏れた。
「えー、俺LINEしたでしょ?既読もついてたし」
スマホを確認してみると確かに遊びに行くというLINEに既読がついている。
「あー、悪いちゃんと読んでなかった」
「いきなり天気悪くなったもんねえ」
空いた事務椅子に腰を下ろした鹿島に「お前こそいいのか?」と聞いてしまう。
「俺は大丈夫、至って順調だから職員さんも文句言わないで送り出してくれたよ」
どこか能天気な鹿島の笑顔が今はちょっと快く思える。
やっぱり今日の俺は疲れてるんだろうか。
鹿島が近くにいた職員呼び止めると俺の腕を引っ掴んで突然口を開く。
「ちょっと君津借りてくんで所長さんに伝言しといてください」
日本人離れした美しい相貌を生かしたビジネススマイルには有無を言わさぬものがあり、職員もうんうんと頷くのを見ると鹿島は俺のほうを見た。
「行こう」
そう言って引きずられるがままにうちに帰らされると、そのまま布団に放り込まれる。
クーラーをつけてカーテンも閉め、いつだったか鹿島が持って来た古い家庭用プラネタリウムをつける。
「……なんだよ」
「だっていかにも疲れたような顔してるから」
「東京みたいなこと言うな」
「たまにはね」
そう言って何の遠慮もなく「おやすみなさい」と目を閉じた。
天井に浮かぶ星空を見上げながらほうっと息を吐く。
人口の夜空は今も昔も変わらずに瞬いていて、この部屋の外に溜まる梅雨の空気も憂鬱な報告書も今だけは置いておけと言われてるようだった。


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君津と鹿島

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ちょっとしたお知らせ

こんばんは、あかべこです。
実はだいぶ今更ではあるのですがえふいーの東京ちゃんこと東京地区が2020年5月で閉鎖になっていたことを把握しまして、それに伴い一部のお話を非公開にする事にしました。
対象は「風邪をひく」「ただ春の夜の話」のふたつです。
東京ちゃんのその後とかはいずれ本編に書きますし、キャラ紹介も修正しますので気長にお待ちください……。

Qなんでそんなに把握遅いの?
Aごめん……

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カモミールティーどこだっけ

ニュースに嫌気がさした日にはカモミールティーが効く。
釣り戸棚のお茶コーナーからハーブティーをいれたかごに手を伸ばそうとするも、微妙に手が届かない。
諦めて踏み台を取り出そうと背伸びを辞めると後ろから手が伸びた。
「姐さん、きょうはハーブティー飲まはるんですか」
「スティーラーズも飲む?」
「貰います」
ポットやティーカップを出してもらい、お湯を沸かす間部屋にはジムノペティを流して。
カモミールティーはぬるめに淹れておく。
マグカップに注いだものとティーカップに注いだものを作って、マグカップのほうを渡しておく。
「はい、スティーラーズの分」
「助かります」
ちびちびと飲みながら心のよどみを吐き捨てるように深く息を吐く。
「……長く生きてるとこういう事ばかり上達してくわね」
「それが長く生きる事なんやないんですか」
お茶に再び口をつけて、ジムノペティに耳を澄ませる。
げんなりする現実と折り合いをつけていかなくちゃいけない。
神様とは名ばかりの何の力もない私たちは無力だし、ただ人間社会に寄り添って傍観するだけの存在にすぎない。
なのになぜ私たちには人と同じ心と体を持つのだろう。
刺されても撃たれても死ぬことを知らず、製鉄所という存在とともに生まれて死んでいく。
その癖死ぬことが誰よりも怖い臆病な自分がいる。
(こんなこと考えてたって何の答えも出ないのにね)
それは私自身がよく知っている。折に触れて自問自答してきた問いはいまも答えが出ないままだ。
……こういう時は頭を切り替えよう。
「スティーラーズ、」
「はい?」
「あなたがやってるパブリックビューイングって明日の試合でもやるんだっけ?」
「明日はないですね」
「じゃあ二人で現地観戦行きましょうか、私仕事休むから」



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神戸ネキとスティーラーズ

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ビアガーデンはじめました

熊谷に引っ越して迎える夏はやはり過酷だった。
「これ、一歩間違えたら死ぬんじゃない?」
「夏だからね」
まだ朝の9時だというのに30度超えの外気温のなか、ストレッチの時点で汗がダラダラと吹きだしてくる。
「夏ってこんな死と隣り合わせだっけ?」
「そういうもんでしょ」
根っからの熊谷人だからなのか、それとも昭和の夏を知らずにいるからなのか、アルカスはそういうものだという口ぶりだった。
さっさと日陰に逃げ込んで出ていった分の水分を補いつつ、改めてグラウンドを見返す。
広く青い芝生に面した俺のクラブハウスにアルカスのいる管理棟。
そのはす向かいにはカフェやショップ、そして大きなホテル。
「つくづく、良いもん貰ったな」
「ホントにね。あんたのおこぼれとはいえ私も助かってるしね」
「そりゃよかった」
そんなことを話しつつ水分を取り体を冷やしていると、アルカスが思い出したように口を開く。
「……今度ホテルのほうでビアガーデンやるんだって」
「ビアガーデン?」
「そう、オープンは1日なんだけどその前に練習も兼ねてプレオープンやるから来ないかって支配人が」
「初耳なんだけど」
「今思い出したから、明日一緒に飲みに行く?」
「奢り?」「奢りというかただ酒」「じゃあ行く」
熊谷の暑い夏の夜に冷たいビール。
想像しただけでなかなかおいしそうだ。




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ワイルドナイツとアルカス。
ビアガーデンで思い付いたネタでした。

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プールにいた話

最近知ったけど、京浜さんは泳ぐのが好きだ。
『お迎え頼んでごめんなさい』
「別に大丈夫ですよ、どうせ目的地は同じですし」
塩素の匂いが残る湿った髪にプールバックをぶら下げたその姿は誰がどう見てもプール帰りと分かる。
車の助手席に京浜さんを乗せ、荷物を後部座席に積んでもらう。
「お昼ご飯どうします?」
『コンビニで大丈夫』
「じゃあ見かけたらコンビニ入りますね」
エンジンをつけてクーラーもかける。
ここからだと京浜さんとこの事務所までの道順が分かりづらいので近くまでカーナビをセットして、さっそく車を走り出させる。
あんまりよく知らない道なので間違えないよう集中して走り抜ける。
しばらくするといつも通る太い道に出た。ここから先は何とかなりそうだ。
「そういえば、京浜さんって潜水士取ってましたよね?」
こくりと彼女が頷く。
前に浚渫工事で潜水士が足りないときに手伝って貰った事があるが、知った時はびっくりした覚えがある。
「泳ぐの好きなんですか?」
京浜さんがスマホをポチポチと打つのが横目に見えた。
しばらくすると読み上げソフトで文章が再生されてくる。
「京浜さんというよりも私個人が泳ぐのが好きで、その一環で潜水士も取った感じかな」
私個人、という事は渡田さんとかは泳ぐのにはそこまで興味がないという事だろうか。
「水の中にいると元気になるの」
「穏やかに?」
「渡田は『扇島は元々海水浴場だし原初の記憶がお前を水に引き寄せてるのかもな』って言ってた」
「そうなんですか?」
「私は覚えてないんだけど、元々海水浴場の小島だったところを埋め立てて製鉄所にしたのが私だからその影響じゃないかって」
お前たちの性格は土地の歴史や文化に影響されるところがある、と親父さんが生きていた時に言われたことがある。
土地と工業のはざまで複合的な要素が絡み合った末に人のなりを得て俺が生まれ落ちたのだとすれば、生まれる前の事が性格や趣味嗜好に影響しててもおかしくないのかもなあ。
そんなことを考えながら車を走らせていく。
「京浜さん、というか扇島さんか。扇島さんは海の子なんですね」
そう告げて横目に見てみるとどこか納得したように彼女が微笑んだ。




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千葉と京浜。
この間おけいさんちを見に行ったときに聞いた話から生まれた設定の小話。

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