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コーギーとお昼寝

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ただ騒がしき土曜の夜更け

土曜日の夜、家を訪ねてきたシャトルズとブルーレヴスがうちに来た。
「……本当に中継のためだけにうちに?」
「中継がWOWOWだけ言う理不尽のせいじゃんね、あん巻き持ってきた」
「僕は浜松餃子と地ビール持ってきたんで台所お借りしていいですか?」
「あー、うん。頼むわ」
手土産のあん巻きを受け取り、ブルーレヴスが足早に台所へ向かう。
今回の日本対アイルランド戦がWOWOWのみ中継のため、見れる環境にないブルーレヴズがテレビを貸してほしいと連絡してきた。
それに便乗するような形でシャトルズまでうちに押しかけて来たのだ。
「シアタールームって地下だら?先行ってるに」
「使用中の看板かけとけよ」
親兄弟で共に使ってるこの家には専用のシアタールームがあり、使ってるときは入り口に使用中の看板を掛けるのが決まりになっている。
今回はこのシアタールームで代表戦を応援する予定になっている。
台所で餃子を焼くブルーレヴズは嬉々としてフライパンで餃子を焼き、良い匂いがする。
「持ってきたビールまだ冷えてませんけど」
「いや、レヴズって今回の遠征に自分とこの選手いないよな?」
「それ言ったらシャトルズさんもでしょ。それに日本ラグビーは代表あってこそですからね、シンさんが育てたスクラムがどこまで通用するか見届けたい気持ちもありますし」
「確かにな」
日本代表はこの数年で大いに羽ばたいた。
アジア初のラグビーワールドカップは日本ラグビーが世界に通用することを証明し、これから強豪へ並び立とうとする気概を世界に示した。
プロチームはそのための人材のゆりかごでもあり、俺たちは日本ラグビーの見届け人でもある。
「まあそれはともかく、楽しみましょうよ。久しぶりに集まって飲みながら応援するんですから」
熱々の餃子がゆでもやしとともに大皿にドンと出される。
餃子とビールを肴に、日本ラグビーの羽ばたきを追うために今日は集まったのだ。
「そうだな、先にやってていいか?」「どうぞ」
大皿の餃子と冷蔵庫に冷やしておいた大瓶のビールとグラスを手に地下のシアタールームにおりていけば、部屋は紅白とラグビーに彩られている。
「準備できたに」
「先に一杯飲ろう」



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本日22時、日本対アイルランド戦!

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真夜中テンションのハロウィンが一番怖い

「先輩、トリックオアトリートです!」
布マスクを外したイーグルスがうちに押しかけてきたのは日付も変わった午前零時すぎ。
妙に雰囲気のいいスーツに謎の棒とそれっぽい牙までつけてきている。
「……Halloweenのコスプレか?」
「移転先の横浜にちなんでネットミームでお馴染みの吸血鬼Y談おじさんです!」
この可愛い後輩の口から猥談という単語が出て来る事に何とも言えない気分になるがまあいい。
あと眼の下に大きめのクマが出来ているが大丈夫なのだろうか。
「因みに悪戯の中身は?」
「口を開くと性癖丸出しになる催眠をかけます!」
「其れは危ういな、寒いし中に入ると良い」
後輩を中に入れた後とりあえずデカフェのホットラテと一緒におからのクッキーを出してやる。
「お菓子はこれらで良いか?」
「はい」
即答だった。善良な吸血鬼で何よりである。
もりもりとクッキーをかじりコーヒーを飲む姿を妙に穏やかな心地で見守っていると、ふとあることが思いつく。
皿の上のクッキーが切れたタイミングで目の前の後輩にこう問いかけた。
「イーグルス、Trick or Treat」
「え」
しばらく考え込むと「ちゅーでいいですか」と聞いてくる。
「然うだな、キスは甘いからお菓子だ」
微かな笑みを零して菓子よりも甘い口づけを一つ。
「然し此れだけでは足りぬな」
「……僕もです」
何よりも甘いものを欲する夜はまだ始まったばかりだ。



なお、翌朝正気を取り戻してふたりは恥ずかしさで死んだ。

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ブラックラムズとイーグルスのいちゃいちゃ

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それぞれにそれぞれの土曜日

*本日は短編集です

・大分に行くはなし(レッドスパークス+キューデンヴォルテクス)
先輩の用意してくれた日本代表戦のチケットと往復の特急券を握り締めて待ち合わせた博多駅の改札は、日本ラグビーの色で彩られていた。
「こういうのを見ると華やかでいいですよネ」
「本当にな」
改札を抜けて特急のホームを目指すと同じ方向を目指すらしき人たちもちらほらと見かける。
赤は私の色でもある。コカ・コーラレッドスパークスの色。
その色をまとう人々をもっと見続けて居たかった、という気持ちがじわりと沸いてくる。
「ブルースが来れんのは残念やったなあ」
「練習試合はしかたないデスヨ」
日本代表戦と言えどこんなによく晴れた土曜日の昼下がり、試合向きのいい日だ。
そんな日に試合をサボるなんて絶対にありえない。
青い特急が静かにホームへ滑り込む。
「今日はめいいっぱい楽しんでこな」

・三宮駅前にて(スティーラーズ+神戸)
秋晴れというよりも冬晴れという言葉が良く似合う土曜日の朝だった。
イベントの設営を終えてかいた汗をぐりぐりと拭いながら今日の大分の天気を確認する。
「向こうも晴れか」
試合向きの実にいい日だ。
本当は大分まで応援に行きたい気持ちもあるが今日は地域イベントのほうを手伝う日なので、気持ちばかりを送るしかできない。
姐さんからLINEが届いた。
『昭和電工ドーム着いたわよ、代わりに応援してくるからイベント頑張ってきなさいね』
一緒に届いたのは日本代表のタオルマフラーを巻いてユニフォームを着た姐さんの自撮り。
既にファンが到着して並んでいるのも写真からうかがい知れる。
『うちの奴らちゃんと応援してくださいね』
『当然でしょ?お土産はマッチデープログラムでいい?』
『ついでに何か大分の美味いもんがあると嬉しいです』
ちらりと周囲の様子を伺うとさっそくお客さんが来る。
こういうイベントも大事な仕事だ。神戸にラグビーの花を咲かせるのが俺の使命なのだから。

・充電がない(ブレイブルーパス+シーウェイブス)
「げっ」
隣にいたブレイブルーパスが小さなうめき声をあげたので「なんかあったか?」と尋ねると「スマホの充電がない」と言う。
見てみれば充電がもう一桁しかない。
「スタッフに頼んで充電させてもらうか?」
「チームテント遠くない?」
「テレビスタッフに借りればええ、わしが頼めばコンセント一つぐらいなら借りれるじゃろ」
「じゃあお願いできる?」
スマホと充電コードを受け取って近くにいたテレビスタッフからコンセントを借り、繋ぐとすぐに充電が始まった。
「試合実況に使うのか?」
「いや、代表戦見るのに使う。今日2年ぶりにとくさんが代表ユニ着るからさ」
「確かにそいつは見逃せないな」
自分も同じ状況ならやはり確認するだろうと思えば納得の笑みがこぼれる。
すっかり代表戦などというものは縁遠くなってしまったが、またいつか自分にもそんな縁が降りかかる日が来るんだろうか。
「でも目の前の試合に集中しないと勝てるもんも勝てなくなるぞ」
「……言うねえ」
ブレイブルーパスが笑いながら「でもうちは強いよ」と返すのだ。

・熊谷の秋(アルカス+ワイルドナイツ)
昨日ちょっとばかりの手伝いを買って出てくれたワイルドナイツは、設営が終わっても特に帰る気配もなくぼんやりと試合を眺めていた。
「あんた女子の試合そんなに興味ないんじゃなかった?」
「正午過ぎには帰るよ、代表戦見たいし」
「……暇つぶし?」
「まあ、そうだね」
ワイルドナイツの目にはうら若き少女たちのラグビーはどういう風に見えてるのだろう。
伸びしろがあると見るか、稚拙ととらえるのか。聞いてみたいような恐ろしいような心地だ。
「真剣にやってるんだから真剣に見なさいよ、そうじゃなきゃ追い出すから」
「うん」
何を考えてるのかいまいちよく分からないまなざしだった。

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日本対オーストラリアは本日午後1時半から!

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お疲れさまとオニオンスープ

久しぶりの自宅は埃っぽい空気に満ちていた。
スーツから部屋着のジャージに着替え、窓を開けると冷たい夜の風が吹き込む。
一足飛びに冬に突き進んでいくせいで具合を悪くさせる人もいてつくづくげんなりする。
(……最近は何もかもの動きが早くて嫌になりますね)
タバコの火をつけるといつもの煙がふわりと漂って風に流れて消えていく。
この後どうしようかと夜空を見上げて考える。
そういえば空港で食べるつもりだった夕飯をまだ食べていなかった事を思い出した。
この時間だとすでに寝てるだろう戸畑をこき使うのは些か忍びない、小倉を叩き起こしてもいいが余計な喧嘩を売るのもおっくうだ。
買い出しに行くのも面倒だし冷凍庫に何かあっただろうかと開けてみると、冷凍のスープセットが出てきた。
いつ買ったのかは覚えてないが少なくとも期限は切れていない。
レンジに入れてスープを解凍し、買い置きしてあるくろがね堅パンを軽く砕いて食べやすくする。
この家で過ごす時間はそう多くないので日持ちするものしか置かないようにしているが、しばらくはこちらで過ごせそうなので明日買い出しに行ってもいい。
チンとレンジが音を鳴らせば熱々のスープが出来上がると同時に煙草を消す。
大きめのマグカップにスープを注いで砕いた堅パンをざらざらと流し入れる。
スープを一口すすれば玉ねぎの甘みがしてホッとする。
窓の外には己が育ち、育てた北九州・八幡の夜。
ここはやはり自分の街なのだと思えば思うほど、誰にもここを傷つけさせまいという思いがじわりと胸に染みていった。



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八幡さんの夜食

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不安と向き合うクッキーモンスター

八幡が宝山を特許侵害で訴えるという。
そんなニュースを聞いた時、何となく教え子だった宝山の事が心配になった。
新日鉄が技術供与して生まれた宝山の世話を俺に命じたのは八幡だし、宝山も俺にはよく懐いてくれた。
何というか、長男と末弟の喧嘩に巻き込まれて居場所がない次男のような、そんな言葉にしがたい居心地の悪さがぼんやりと胸の奥に渦巻いた。
スマホを手に取ってLINEを立ち上げる。
宝山の胸の内を聞いてみたいような、かえって火に油を注ぐのではないか、とぐるぐるした気持ちで言葉をまとめられず結局スマホを伏せた。
(……なんか違うことするか)
しかしこういう時に限ってやることが無いのが困りものだ。
とりあえず無心になれる事で検索をかけると料理-特にクッキーづくり-が良い、というので作ってみる事にした。
そういや卵と無塩バターがない。まずそれを買いに行くところからか。

―数分後
とりあえず無塩バターと卵、ついでに味付けに使えそうな奴とちょうど切らしてた牛乳を買ってきた。
レシピはネットで探したものを参考にする。
とにかくレシピ通りに材料を延々と混ぜているとそれだけに集中できる感じがして、少し気分が落ち着いてくる。
基本のクッキー生地ができた。3つに分けて味付けを変える。
まずはチョコチップ。どれくらい入れればいいのか分からず目分量でクッキー生地に練りこむと多すぎて苦笑いが出た。
(……まあ生地の状態で凍らせれば日持ちするらしいし、なんとかなるか)
次は抹茶。混ぜていくうちにじわじわと生地が緑に染まっていくのが面白い。粘土細工に似た感触を楽しみながらしっかりと混ぜ込む。
あとはそのままの味にしておこう。
これらをラップで巻いて休ませ、落ち着いた後に焼くらしい。
小麦粉とバターが切れるまで延々とクッキー生地を作っていくと気持ちが落ち着くような気がする。
2度目の生地作りでチョコチップを使い切ると、3度目の生地作りではほうじ茶の茶葉で味付けした。紅茶を切らしているので仕方ない。
バターと卵が切れた頃には100人前ぐらいはあるのでは?というほどのクッキー生地が生まれている。
「……無心にはなれたけどこんなに要らねえな?」
まあ焼いて従業員関連会社等々の人の胃袋に収めて貰えばよかろう。
試しに一つ焼いてみる事にしよう。
ぼちぼちお休みも終わらせていいだろうクッキー生地を取り出して、ナイフで5ミリほどにスライスする。とりあえず各味3枚もあればいいか。
残りは冷凍庫に戻し、オーブンで焼いてみる。
オーブンの中でクッキーが焼けるのを待っていると置いてあったスマホが音を立てた。
『君津老師、お元気ですか?』
「宝山……」
電話の相手は懸案事項の宝山だった。
このところずっと多忙にしてる宝山だ、仕事の隙間を縫ってわざわざ電話してきたのだろうか?
『私のために悩んでた声ですね』
「……多少はな」
『見た目の割に優し~い人ですからね、君津老師は』
「俺の見た目の事は別にいいだろ、八幡が急になんか言いだしてびっくりしたろ?」
『本当ですよ、吃驚しすぎてアイヤーのあの字も出てきませんでしたし!まあ私売られた喧嘩は買う人なのでね!気にしなくていいですよ!』
「買うのか」
『もちろんですよ。でも悪いのは八幡さんであって君津さんじゃないです』
「そうか」
オーブンから焼けた香ばしい匂いがして、残り1分もしないうちに完成する。
「色々落ち着いたらまた遊びに来いよ」
『はい』
オーブンがチンと音を立てたのでまた今度と電話を切る。
もう少しクッキーを練習したら、中国茶に合う味を考えよう。
何があろうとも宝山は可愛い弟子だから。



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君津と宝山。

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