忍者ブログ

コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

イーハトーブのもてなしを

「掃除はこれでよし、と」
グラウンドから枯れ草や鹿の落とし物(なんせ市街地を鹿が歩き回る土地柄なので)を回収し、袋の口を結ぶ。
ボランティアによるスタジアム整備ももうそろそろ終盤だ。
「……シーウェーブス」
「ああ、ダイナボアーズか。まだテント組むには早いんじゃないか?」
「天気や風を見たくて来たんだが」
「今日は大丈夫じゃろ、海風もゆるい方じゃし天気の急変もなさそうだからな」
うのスタは海が近いのでどうしても海風の影響を受けやすいし、芝も時々鹿に喰われたりする。収容人数も決して多くない小規模なスタジアムだ。
「いつもシーウェーブスのもてなしには感服するものを感じていたが、今回は直接関わり合いのないトップリーグの試合だと言うのに本当によくしてくれて助かっているんだ」
「うのスタで試合する奴はどこの誰でもみんなもてなすのがわしらの流儀なもんでな」
10年前のあの日、ラグビーが結んだ関係に救われて助けられた身の上だ。
ラグビーという縁でこの土地に来た人がここを素敵だと思って帰って行くことは本望なのだ。
「そうだ。今日の試合見にいくからな。チケットもとってある」

「……勝って帰ろう」

ダイナボアーズのその目に闘志の火がカチリと灯るのが見えて、ああ今日はいい試合になるなと確信した。

___
シーウェイブスとダイナボアーズ

拍手

PR

ラグビーの友を探しつつ

「あーこの空気久しぶりー!」
うんと背伸びをしながら久しぶりに感じる甲州の風を思い切り肺に取り込んでいく。
メインホームである東京とはまた違うこの街の空気を浴びながらやる1シーズンに一度の試合は、俺のささやかな楽しみでもある。
「サンゴリアスさん」
「あ、お疲れ様。先に準備しといてくれて助かった」
昨日のうちに甲府入りしていたブルースが準備しておいてくれたグラウンドやテントの様子を確認すると、頭が下がる思いだ。
「今日は天気も持ちそうやけんみんな安心してやれそうで良かったっち思います」
「うん、そうだな」
ブルースが天気予報アプリと空の様子を見比べてそうつぶやく気持ちもわかる。
雨でも試合はあるけれど降らないに越したことはないのだ。
「あ、そうだ。今日ワイン持ってきてあるんだけど要る?」
行きがけに寄った道の駅で購入した甲州ワインの瓶を数本と、酒のつまみに購入した乾き物類をいくつか鞄から持ち出す。
「……先輩からの気持ちはありがたかことばい、だけんど今日はグラウンドで給水の手伝いがあるけん飲むんは遠慮しときます」
「ならしょうがないか、ワイン持ってく?」
「ええ」
赤と白を一本づつブルースにプレゼントしてやると、薄く笑う。
「ワインと一緒に勝ち点ば貰うて帰りますけん、今日は楽しみに」
「おっ、言うようになったな!」


-----
サンゴリアスとブルース。ときどき甲府で試合してるのを見ると結構アレ楽しんでるのかなあと思う。

拍手

愛をこめて花束を

通勤途中に花屋の軒先に並ぶ早春の花を見て、あの人に渡そうと思った。
突然風に攫われたように亡くなってしまったあの人は開幕戦の惜敗をどんな想いで見ていたのか、聞いてみたくなった。
ブーケを買った俺はスタッフさんに連絡だけして、あの人に会いに行く。
春の匂いがするブーケを揺らしてあの人が眠る場所へ向かう。
府中から一時間弱、慣れない道はスマホに教えてもらいながら辿り着いたそこにあの人が眠ってる。
「ユハさん、花束買ったんだ」
墓石にそう語りかけながら買ったブーケをそっと花瓶に生けておく。
どうかなと語りかけても返事はない。
「ねえ、ユハさん。この間の試合の時さ、喪章つけてたんだけど気づいた?あれね、ユハさんのために作ったんだ。俺も手伝ったんだよ」
ああだこうだと語りかけて見ると、ああ本当に俺は大切な人を亡くしたなあって思う。
「ユハさん、俺みたいに長く生きてても死に別れってほんっとに慣れないもんなんだよ」
特に風に攫われたみたいにいなくなった人はね。
俺には何もできないけれどさ、春を告げる花束を持ってきた。


「ね、ユハさん。もう春だよ」


----
ブレイブルーパスさんの早春の話。
タイトルはあの曲から。

拍手

Love so sweet

一目見た瞬間に確かにきらきらしてる、と思った。
「はじめまして、四日市から来ました三重パールズです!」
風になびく金と青のポニーテールが最高に綺麗だった。
「あ、ホンダヒートです」
お互い握手で手を伸ばそうとすると後ろからラブソングが流れだし……って
「……誰だよいま嵐のLove so sweet流した人!」
反射的にツッコミ入れたらスタッフの悪乗りだった。
危ない、うっかりこのまま恋に落ちてしまうところだった。
今はラグビーと仕事で十分なのにと思ったら「なんだ、」とパールズが笑う。
「私の幻聴だと思ったのに」
「は?」
そこから付き合うという話になるのは早かった。ほぼ勢いである。
インスタに応援メッセージを見返していると、心にふわっと春風が吹いてきた。
「……何にニヤてるんです?」
シャイニングアークスからのドストレートな暴言も今は平気で受け流せる。
「彼女からの応援見てた」
「誰ですか彼女って」「自粛中に出来た恋人」
スマホを伏せた俺がニヤッと笑うと、本気で意味が分からないという顔で見てきた。
恋人ができて史上最高に浮かれてる俺なので今日はとても調子がいい。
「さーて、開幕スタートダッシュ切りますか!」
「勝つのは私ですが?!」




----
ヒートさんとパールズちゃん。
お互いに一目惚れした三重コンビ書きたかった。

拍手

待ちわびていた今日のため

「なんか今日まで長かったねえ」
試合会場の開門に向けた準備を終えて、アルコールで手を拭っていた時ぽつりとスピアーズが呟いた。
門の外には開場を待ちわびる人がちらほらいる。
「……一年近く試合しとらんかったけんね」
「中止になったの3月だもんね」
そう思うと今までよりも長いオフシーズンだったことを改めて気づかされる。
本当ならば1月には開幕してたはずのリーグ画延期され、ようやく迎えられた今日の重みは大きい。
「ブルース、俺つくづく思ったんだけどね」
「うん?」

「やっぱ、俺ラグビー大好き!」

「……みんなそうたい」
長い一年は終わった。
俺たちの手元にようやく、ラグビーのある日常が帰ってきた。
遠くのスタッフが開場知らせてくるのと同時に響く足音はどこまでも明るく高らかに響いた。


----
スピアーズとブルース。
ようやく帰ってきたラグビーのある日々に感謝!

拍手

バーコード

カウンター

忍者アナライズ