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コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

俺にも彼女が出来たなら

「最近さあ、ちょっとよく遊んでる子がいるんだよ」
ビールを飲みながら尼崎がそんなことを言う。
居酒屋やバーで酒を飲みながら可愛い女の子を眺めるのが尼崎の趣味なことは知ってるが、仲良くしてるしてる人がいるのははじめて聞いた。
「んでさぁ、その子がめちゃくちゃかわいーの。んで最近なんかいい雰囲気だしこのままお付き合いとかしたいなーって思うんだけどどう思う?」
「……人間相手はお勧めしないぞ」
空の缶をゴミ箱に投げ込むとスコンとゴミ箱に入って行った。よし、まだ酔ってないな。
「人は私らよりも早く老いてくし、簡単に死ぬぞ」
「簡単に死ぬのは俺らも同じでしょ」
尼崎が不満げにそんなことを言う。
財閥解体で兄弟たちが去って行った時も、葺合がいなくなった時も、こいつは知ってるからそう思うんだろう。
だけど人間の命の儚さはそれとは違う部類のモノじゃないだろうか。
私達の儚さが人間に捨てられた犬の儚さであるならば、彼らの儚さは季節が終われば死んでいく虫たちの儚さだ。
「それともあの押し入れの本箱に仕舞ってある写真の人との関係に基づく実体験?」
思わず身体の動きが止まる。
「おま、開けたのか、あれ」
「だって此花って本全部押し入れに仕舞ってるから本借りようと思うと押し入れ漁るしかないじゃん。んで一つっきりの本箱、そりゃ開けるでしょ」
開けるでしょ、じゃねえぞ。
阪神淡路の後本棚は倒れるからと思って押し入れ改造して本収納してたのが仇になりやがった。クソ。
「で、あのお兄さんとの悲恋体験で俺のこと止めるの?」
「止める理由はノーコメント。でもほんと人間と付き合うのはやめとけよ。どうせ老いてかれるのはこっちなんだからな」
「んー、考えとく。でもたぶん会ったら全部吹きとんじゃうかも♡」
尼崎が何も考えてない顔でケロリと言い放つので、思い切り頭をチョップした。




此花と尼崎。
二人の恋愛についてはそのうち書きます(設定はあるんだ設定は)

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豆と厄払い

「豆まきしましょう」
会議の終わり、八幡が突然買い物袋から節分の豆と鬼の面を取り出してそう言った。
「……急すぎじゃない?」
「無事故ゼロ災の願掛けみたいなものですよ、去年は災害も多く今年は日新製鋼の合併と再編も控えてますからね。全員帰りの飛行機や新幹線夜に取ってるでから時間もあるじゃないですか」
「その時間に取らせたの八幡じゃん!」
「豆まきの時間確保するために夜帰りにさせたな?!」
鹿島や此花からの盛大なブーイングを横目に、八幡は無反応だ。たぶん最初からやる気だったんだろう。
それを察した釜石や戸畑は苦笑いだし小倉はアホかコイツという冷めた目で八幡を見てる。
スライドに大きなあみだくじを映すと「鬼役を決めるあみだくじプログラム用意したので好きな番号選んでください」と言い出す。
上は右から順番に数字を割り振り、下には鬼役の文字が二つ。
「とりあえず私は10番取ってあるので各々それ以外で好きな数字選んでくださいね」
「じゃあ僕6番で、室蘭の六ね」
僕があきらめ気味に数字を挙げるとこの謎の茶番に乗っかる事にした面々がぽつぽつと数字を挙げてくる。
ぶうぶう言ってた此花や鹿島も結局乗っかる事にしたらしく、あみだくじの数字はどんどん埋まる。
「なんか人数足りなくないですか?」
「たぶん直江津だと思います、あいつよほど強く言わないとすぐに現場仕事しに帰るんで……」
「どういう了見なんですかね」
「直江津はそう言う奴ですから」
和歌山に宥められつつもさっくりプログラムを修正して、あみだくじを始めると鬼役はすぐに決まった。
「鬼役は君津と大分ですね」
二人の表情が途端に曇るが八幡から鬼のお面を受け取ると、やれやれと言う風にそれを受け取るのだった。

***

「「「「「「鬼はーそと!!!!!!!」」」」」」」

会議室に大音量の掛け声と豆を投げる音が響く。
逃げまどう君津と大分を尻目に、若干やけくそ気味な此花が「くたばれ天災!」と叫びつつ豆をぶつけてくる。しかも結構本気だ。
というかついでに八幡に豆ぶつけてる鹿島と小倉は何なんだろう。ストレスかな。

「「「「「福はーうち!!!!!!!」」」」」」

まあでも、楽しいからいっか。


日鉄組と楽しい(?)豆まき。

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ストロベリー&チョコレート

「知ってる?いちご大福って倉敷発祥なんだよ」
私がそんなことを言いながらおやつのいちご大福を差し出すと「そうなの?」と聞いてくる。
「うん、児島の方に発祥のお店があるって聞いたからここ来る前に寄り道して買って来たんだよ」
金曜日の昼下がり。
まだまだ終わらない仕事の山からの短い現実逃避にと買って来たおやつとコーヒーに福山は目を輝かせた。
現場仕事のために着ていた作業着を脱ぐと汗ばんだ皮膚にシャツが張り付いておっぱいの大きさがハッキリわかるような状態になってしまい、周りの若い男の子たちがソワッとするのが分かる。
男だらけの職場で福山がモテるのはわかるけど、私のお嫁さんなのであげませんよーだ!と思い切りあっかんべしてやるとすいませんと言うように彼らは視線をそらした。ふむ、あっさり引いた子たちは許そう。
福山が力仕事で汚れた手指をしっかりウエットティッシュで拭うと箱から丁寧にいちご大福を取り出す。
「美味しそう……」
「でしょ?」
福山がそんな風に笑う顔が、私は一番好きだ。私の大好きな愛しのひと。そして生まれた時からずっと近くにいた一番近しい人。
べつに葺合や西宮のことが嫌いな訳じゃないけど、私にとってずっと近くにいてくれたのは同業他社でも隣町にいた福山だったのだ。
「先食べていーよ」
「……何か企んでない?」
「企んでないよ」
粉を落とさないように気をつけながら福山が大きな口を開けて大福を齧ると、びっくりしたように目を開いた。
メガネの向こう側の眼差しはこの小さなサプライズの成功を意味してる。

「チョコクリームのいちご大福だ……」

福山のつぶやきに「そういうこと♡」と答えると、福山はカレンダーを見て「今日だったわね、バレンタイン」と呟いた。
製鉄所そのものである私たちにまともな休みなんてありゃしない。だけど恋人同士としてバレンタインにいちゃつく権利ぐらいはあるはずだ、と言うかそうじゃないと誰とは言わないけどバレンタインに合わせて北九州から釜石に飛ぶどっかの誰かさんの事を踏まえたら不公平だと思う。
「チョコ、また用意し損ねちゃった」
「いいよ別に、これからもずーっと私が責任もって福山のためにチョコ用意するんだから。ね?」
いちごとチョコレートのように最高の組み合わせの私達はこれからもずっと横に居続けるのだ。


水島と福山。
ピクグラバレンタイン参加作品でした。

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あの日の壁を乗り越えて

夜明け前の街の寒さに震えながら、私は竹灯籠に灯りをともす。
「姉さん、」
「加古川も来てたのね」
「何のために昨日からいたと思ってるんですか」
「それもそうね」
「コーヒー淹れて来てあるんで飲みませんか」
加古川がカバンから出してきた小さな魔法瓶を受け取ると、ブラックコーヒーの苦みと熱さが冷えと眠気に襲われた身体を覚ましてくれる。
加古川も竹灯籠に火を灯し、静かに手を合わせる。
夜更け前の東遊園地は人が多いにもかかわらずどこまでも静寂が広がり、誰もが竹灯籠に祈りを捧げているのが薄暗がりの中にも見ることが出来る。
「ねえ、25年って長いと思う?短いと思う?」
「……わたしは、人間の人生のスパンで考えたらすごく長いと思います」
「そうね」
もう一度ブラックコーヒーを飲み込む。
その強烈な苦みと熱さが私に生きている、という感覚を伝えてきた。

「加古川、これからもどうか往きましょう。この神戸の街に」

何度傷ついても死んでなんてやるものか。
私の生きざまを加古川にすべて与え切るまでは、どんな地獄の果てであっても駆け抜けよう。
神戸製鋼と言う名をこの街の空に掲げて。
「はい」
黙とうを告げる声が響くと、私と加古川は手を繋いで目を閉じた。




神戸ネキと加古川ちゃん

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僕らいつまでも

「あーあーあー!やってらんない!」
ふてくされ気味のサンゴリアスが三本目の焼酎に手を出そうとするので、せめてお湯で割らせようと大きな湯飲みに湯冷ましを入れて差し出した。
「明日仕事でしょ」
「成人の日だから休みですぅー」
湯冷ましに麦焼酎をダバッと入れて飲み始めると、今日のことめちゃくちゃ気にしてるな……と苦笑いになる。
開幕戦での府中ダービー、しかもNHKの中継付きと言う滅多にない好待遇の試合で負けたのがよほど気にくわないのだろう。
「でも松島のまた抜きパスなんて芸術的で面白かったじゃん」
「そうだけどさー、せっかくなら勝ちたかったじゃん」
「……まあその気持ちは分からないでもないかな」
チューリップから揚げをサンゴリアスの口に放り込んでやれば美味いと小さく呟いて咀嚼した。
勝った側の俺が何言っても聞いてくれないだろうなあ、と思いながら俺の方も明日に残らない程度にのんびり酒を飲む。
「でも今日は満員御礼でいい試合だったじゃん」
「そっちはリーチコールすごかったもんね」
サンゴリアスは皮肉めかしてそう言うが俺としては「しょうがないよ、リーチだし」としか言いようがない。


「いつまでもいつまでも、あの満員のスタジアムで試合ができるよう努力しないとね」

そう思うでしょ?と問えば、サンゴリアスも静かに頷くのだった。


ブレイブルーパスとサンゴリアス。

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