忍者ブログ

コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

幕が閉じる

ふとした空腹感で目が覚めた午前5時、のっそりとした足取りで台所に降りてパンと牛乳で小腹を満たす。
壁掛けの時計の日付はもう変わっている。
寝落ちして充電が切れたスマホにコードを差し込んでグループLINEを見れば、一晩中決勝戦の話をしていたのを思い出した。
サンゴリアスさんとブレイブルーパス先輩のワールドカップ報告会の実況。
南アフリカとイングランドの、まさにしのぎを削る名勝負への興奮冷めやらぬ叫びやつぶやき。
閉幕式を見守る寂しさと次の大会への希望に満ちた言葉たち。
それらも4時過ぎには皆途切れていて寝落ちしたのだと分かる。

ああ、ラグビーワールドカップというラグビーの祝祭はもう終わったのだ。

パンの食べかすを払って窓の外を見る。
薄ら明るくなり始めた空は明日の日本ラグビーの希望を照らし出すものになるのだろうか。
(まあ、そうするもせえへんも俺らの在り方次第やろか?)
ワールドカップの幕が閉じてもトップリーグの幕が上がる。
その舞台を賑やかにしていけばいくほど、ラグビーはきっと明るく熱く燃える舞台になれるのだ。



レッドハリケーンズの独白

拍手

PR

ビクトリーロードを歌えなかった夜に

スタジアムに響くのは勝利ではなく、努力をたたえる歌が響く。
明るくもないが寂しくはないほろ苦い響くが味の素スタジアムを包み込んだ。
「……正直、イケるかなって思ったんですよね」
カメラを片手にしたイーグルスが隣で呟いた。
今日はサンゴリアス・ブレイブルーパス・イーグルスと自分の四人で観戦に来ていたが、イーグルスはずっとカメラを手に選手たちをカメラで追いかけ続けていた。
「しかし、これが今大会最後の日本代表戦じゃないかとも思ってた。そうだろう?」
「はい。でもまあ現実はそう思うほどうまく行かなくて寂しいもんですよね」
スポーツチームであると同時に日本代表戦を切り抜くカメラマンでもあったイーグルスがそう寂しく笑う気持ちは分かる。
しかし、寂しく笑わずとも自分たちも同じ想いなのだ。

「帰ろう、外にサンゴリアスとブレイブルーパスが待ってる」

ビクトリーロードではない歌が響くスタジアムに長居するのはつらい。
同じ酔いならば敗北の悲しみよりも勝利の喜びの方がいい。
「……そうですね」
イーグルスはカメラを仕舞うとゆっくり帰り路を歩きだした。



ブラックラムズとイーグルス。ベスト4入りの壁は厚かったね……。

拍手

毛布の中に逃げ込んで

君津さんがもう何日も部屋から出てこないんです、と連絡を受けて大きなカバンにありったけの食糧やらあいつの好きそうな本やら詰め込んで車を飛ばして着いたときにはもう夜だった。
「きみつー」
鍵がかかって開かない部屋にやれやれとため息を吐く。
君津の部屋の合鍵は自立した時に返してしまったし、鹿島や千葉が持っていると聞いた覚えはない。まさかあの二人のうちのどっちかが持ってたらさすがに妹分としては泣く。
君津の性格なら玄関の近くのどこかに合鍵を隠しててもいいはずだ。じゃあ、隠すなら?王道の場所だと鹿島や千葉に悪用されるから避けるだろう、しかし忘れにくくていざという時取り出しやすい場所でないといざという時困るはずだ。……電気メーター?
メーターを開けてみると何も入っていない。
じゃあ水道だろうか、と水道メーターのふたを開けると内側の穴に部屋の合鍵が針金で括ってあった。ご丁寧に君津の部屋の部屋番号が手書きされたキーホルダーもついてる。
合鍵で部屋の鍵を開けると真っ暗で「入るぞ」と声をかける。
いつも小奇麗にしてる君津にしては埃とゴミのたまった部屋の隅で君津がすやすや眠っていた。
眼の下にはクマと泣いて腫れた目、市販の痛み止めと睡眠薬を酒で流し込んだ(※良い子はマネしてはいけません)形跡もある。
「君津、生き……いや、死なないか」
私達は工場とともに生まれ、工場と共に死ぬ。君津製鉄所がこの地上から消え去る日まで、私達は死ぬことが許されない。自ら死ぬことを許されずに生きることは、実は恐ろしいほど消耗することを私は知っている。
「お前、相当疲れてるだろ?」
今年は自然災害が多く、特に千葉は被害が大きかった。
その癖それを口に出さず甘えもせずに黙々と仕事をした反動がこれなのだ。
この部屋でいちばん肌触りのいい毛布を選んで君津の身体をくるんでやり、頭の下にもビーズクッションを置いてやる。
今だけは毛布に逃げたっていいさ。誰になにを言われようと私が守ってやるから、今はゆっくり寝ればいい。
(……今度鹿島から手の抜き方ってもんを教えてもらうべきだよな)
やれやれと呟いてから職員に無事を確認したことと数日休ませてやって欲しい事をメールすると、即座に所長に伝える旨が帰ってきた。


「おやすみ、君津」

お前を傷つけるもののない眠りの世界で、今だけは全てを忘れておくれ。


東京ちゃんと君津。千葉方面は災難続きですね……

拍手

勝利の道の果てを

ビクトリーロードをほろ酔い気分で歌い始めたサンゴリアスに思わずため息が漏れる。
前半を見終えた時点で自前で持って来たビールを切らしたからとウィスキーを飲み始めたのにもう二つ目の瓶を空にしようとしている。
「ロシア戦といい今回といいがぶ飲みしすぎ」
ハイネケンのカップでタワーを積んだロシア戦の時もひどかったが、今回もよくまあ飲むものだ。
「松島が4トライ目ねじ取った日ぐらい心地よく呑ませてくださいよ」
「お前その勢いでうちの買い置きを空にする気だからだめ」
テレビを4K対応に変えたからうちでゆっくり見ないかと誘ったのは俺だけど、だからと言って人んちの買い置きの酒を空にしていいとは言ってない。
「まだウィスキー残ってるじゃないですか」
「それ高い奴だから駄目、焼酎ね」
「うちの会社は焼酎出してないんですけどー?」
「いいでしょ。焼酎のペプシ割で我慢してよ」
そう言って残っていた安い焼酎をペプシで適当に割って薄切りのレモンをひと切れ突っ込んで出してやれば、納得いかなさそうに唇をとんがらせてきた。
「それに、このサモア戦勝ったからって予選プール脱出成功したわけじゃないんだから」
「まだスコットランドが残ってますもんね」
「そうだよ……そうだ、スコットランド戦でお前自慢の松島が4トライもぎ取ったら焼肉食いに行こう、食い放題」
「乗った!横浜だし見に行にいけるじゃん!今ならまだチケット行けるかもしんないしもぎ取ったら二人で試合見に行って、松島4トライもぎ取ったら焼肉ね!」
サンゴリアスが嬉々としてチケットを探し始めるのを見守りながら酒辛いペプシを飲み込む。
勝利の道を走り続けてきた日本代表はその果てを見にいけるだろうか。俺が愛し、見送った仲間たちが見せてくれた勝利の果てを見に行きたいと願う。
このビクトリーロードの果てで、笑うのは俺たちだ。




ブレイブルーパスとサンゴリアス。
勝利の道を往けば笑える日が来るんですよ、そう思いながら声援を送るばかりです。

拍手

歓喜に震える指先を

エコパスタジアムに鳴り響く歓喜の声がいまも脳裏を離れない。
帰り着いたジュビロの家でスポーツニュースを見れば確かに日本が勝ったのだと再認識する。
すると指先が震えていることに気付いた。怯えではない。恐怖でもない。これは喜びの震えだ。

「ほんとに勝ったんですよね、あのアイルランドに」

ジュビロが感嘆の声を漏らしながらスポーツニュースを見返す。ああ、本当に日本はあのアイルランドに勝ったのだ。あの接戦を制したのは他の誰でもない、日本代表なのだ。
愛すべき桜のジャージが静岡で起こした番狂わせはジュビロやシャトルズの心を震わせていた。
「……再放送、明日あるもんで見て行ってから帰ろまいか?」
シャトルズがジュビロにそう聞けば「いいですよ」と答える。
祝杯をあげるためのつまみを並べたテーブルには未開封のアイリッシュウィスキー。
「それは?」
「サンゴリアスくんから先週届いたんです、『次のアイルランド戦で日本が勝ったらこれで祝杯あげよう』って」
蓋を開けてウィスキーグラスに氷も入れずに注げば琥珀の宝石のような輝きが飛び込んでくる。
「あ、水割りにするの忘れた」
「これでやろまい。ストレートでも一口ぐらいならいいじゃんね」
「そうだな」
そう告げればジュビロは水割り用のボトルと氷を机の上に置き、やおらウィスキーを注いだグラスを取る。
アイルランドに勝ち切った日本代表にちなんで、いっそこれを一口で飲み干してやろうか。そして次の勝利の願掛けとしよう。


「次の日本代表の勝利を祈って「「乾杯!」」」

今も歓喜に震える指先でぐっとグラスを握り締めてグラスを叩けば、涼しげな勝利の音が聞こえた。


ヴェルブリッツとジュビロとシャトルズ。
アイルランド戦、最高だったね……

拍手

バーコード

カウンター

忍者アナライズ