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コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

夏の終わり、花火を光らせ

このところの驚異的な暑さは西日本を襲った台風とともに過ぎ去り、夏の湿度だけが残った。
仕事終わりに立ち寄ったコンビニの店頭で、和歌山が花火のセットに目を向けていたのに気づいて「買うのか?」と俺が聞けば和歌山はううんと小さく唸った。
「どうしようか」
「欲しいなら買えばいいだろ、港まつり行けなかったしな」
「じゃあ買おうかな。ライターも買わなきゃ」
そう言って100円ライターと一緒に花火セットを俺の持っていた籠に一緒に放り込んだ。

***

社員寮の狭い庭に水を張った洗面器(花火セットを買ってからバケツを持ってないことに気付いたので)と花火セットを広げると、花火セットについていた小さなろうそくに火をともす。
「ん」
「ありがと」
花火に火を灯せば白い煙と共にフシュ―と鮮やかな火花が夏の夜に飛び散る。
その手持ち花火をぼんやりと二人で眺めながら、夏の湿っぽい夜風が花火の煙を乗せて去っていくのが見えた。
「ねえ、海南」
「なんだよ」
「何で俺と一緒になってくれたの?」
「……なんでだったかな」
ハイボールを飲んでいた手を下ろして和歌山を見た。
勢い良く噴き出す花火を見つめる和歌山の顔つきはどこか不安で、その炎に燃え焦がされて死にたいと思っているように思えた。
見た目は良いとは思う。住友家の血なのか、和歌山は昔から女には困らない方だったのに俺のことをいたく気に入っているようで、それは今も変わらなかった。
「ね、なんで?」
今日の和歌山はちょっと憂鬱と不安に襲われているように見えた。
それが素直に表情に出ている。
「嘘つけないから、だな」
「まあ確かに俺もそう思うよ」
和歌山はいつだってのびのびとしていた。
南国の太陽の下、住友本家の庇護のもとに素直に育ったその眼差しはある種の育ちの良さがあった。
たぶん、その育ちの良さが俺は好きな気がする。
「だいいち、好きだとか嫌いだとかそう言うのに理由いらないだろ」
「そうだけどさ」
火の燃え尽きた花火を洗面器に漬けて、次の花火に火をつけた。

「お前の判断を俺は否定しないよ」

それはたぶん和歌山が今一番欲している言葉だった。
「うん」
「だからいちいち悲しむなよ、俺がいるだろ」
「……まあね」
和歌山がほんの少し笑う。
めんどくさい男と一緒になってしまったな、と思うけれどたぶん俺はこいつとずっしょ一緒にいる運命なのだ。
そのめんどくささも含めて愛せないほど俺は小さい男じゃないので、和歌山が納得するのならこれぐらいの事いくらだって言ってやれるのだ。





海南と和歌山。
たぶん海南がえふいー世界で一番いい男だと思う

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北の大地の空と風

「はー……なんかえらい疲れてもうたわぁ」
ラグビークリニックが終わり、木陰にライナーズさんがバタンと横たわる。
「合同のラグビークリニックなんてそう滅多にあるものじゃないですしね」
「ほんまそれなぁ」
「せやかて若い子らは勉強になったんやないですか?」
「……レッドハリケーンズは若いからええけど俺みたいなおいちゃんには厳しいわぁ」
北国での合宿中に地元の子供たち向けのラグビークリニックをやろう、と言い出したのは誰だったか忘れたがこうして大人数で集まって行う事はそう多くない。
まして同じ大阪住みのレッドハリケーンズとライナーズさんが一緒になる事はあっても、神奈川に住む自分がそこに同席するなんて普通はあり得ないことだ。
「飲み物頂いてきましたよ」
ジュビロさんがドリンクの入った容器を人数分持ってきてくれて「ありがとうございます」と受け取った。
「あ、おおきにー!」
「いえ」
「こういう時は最年少が積極的に動きなはれって言われんかったん?」
「動ける人が動いたらいいんですー」
大阪コンビがわいわいと言いあうのを止めるべきか放置すべきか分からないジュビロさんを尻目に、自分は冷えたドリンクに口をつけてほうっと小さく一息ついた。
何度来ても北海道は良い。風は心地よく、食事も美味しい。
「……そう言えば、」
「ダイナボアーズなんかあったん?」
「いえ、もし良ければこの後懇親会をしようとスタッフが話していたのを思い出して。スピアーズさんには先にお話ししたんですが」
懇親会というよりもチームの枠を超えた飲み会のようなものをやりたいと漏らしていたことを思い出し、たぶんこのメンバーなら数人は来てくれそうな気がした。
「懇親会?!肉と酒はあるん?!」
「もちろん」
「ほな行くわ!おいちゃんも行くやろ?」
「おう、なんか野菜でも持ってこかな」
「僕も参加させてください」
「わかりました」
ドリンクはいったん蓋を閉めてすっくと立ちあがる。
こうしてみんなでワイワイと食事をするのは昔から好きなほうであったし、善は急げと昔から言う。準備は早くからしておくに越したことはないだろう。
「準備できたらご連絡しますので」
軽い会釈と共にそわそわした気分で足を走らせる。
ラグビーも、それに合わせる食も良いものだ。ましてこの心地いい北海道の風の下なら、なおさらに。




ダイナボアーズとライナーズとレッドハリケーンズとジュビロ。
なんか北見で一緒にラグビークリニックしてたというのが面白かったので。

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やり切った後は祝杯を

「……なんかもうやり切った感すごすぎて動きたくない」
花園の芝生の上に寝転がり、暗い夏の夜空を眺める。
遠くには優勝したスティーラーズさん達のファンによる祝福の声。
「おう、お疲れさん」
「疲れさせたのそっちじゃないですかぁ、俺完敗だし」
俺がそう言うとせやなあとゆるく笑って俺に手を伸ばす。
「でもいい勉強にはなったやろ?主力抜きでも強いチームが一番強い、ってな」
「ほんとですよねえ」
その手を掴んで立ち上がるとまだスタジアムは勝利の余韻が淡く香っている。
負けた俺としてはチャレンジして潔く負けた妙な清々しさのみがあり、健闘を称えたい気持ちでいられる。
そこが同じ船橋の友人から闘争心が薄いと評されるゆえんなのかもしれないけれど、最後の最後まで得点させてもらえないと謎の達成感しかないのだ。
「明日帰るんやろ?」
「あ、はい」
「ならアフターマッチファンクションのあと、俺のおすすめの串カツ屋あんねん。奢ったるからそこ行こ」
「じゃー……ゴチになります」
俺がニッと笑えばスティーラーズさんもにっと笑う。
何時だってそうだ、全力の試合の後に飲む酒が、一番うまい。


スピアーズとスティーラーズ。
スティーラーズカップ戦優勝おめでとう!

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星を捨つる

注意書き

このお話は軽い暴行と出血があるのでお気を付けください


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東京ドームで乾杯を

室蘭との待ち合わせ場所は東京の入り口で、ストロング缶のビールを飲みながらふうっと小さくため息を吐いた。
こっちはただでさえいい気分とは言い難いのに室蘭が遅れてくるのは余計気分が悪い。
バックレてしまおうかとすら思いながら空になったアルミ缶を足で潰そうと地面に置くと「広畑じゃん!」と声を上げた。
「水島」
「いやーごめんねー?5年ぶりの出場でうちがボコボコにしちゃってー」
ほろ酔い気味の水島の言葉が妙に癪に障るのでうちわでぺしぺしと頭を叩く。
「……まったく謝罪の色が見えないんだけど、あと5年ぶりじゃなくて8年ぶり。福山は?」
「選手たちの方に行っちゃった」
「ふうん」
柱に寄り掛かる水島が私もお酒ちょうだいというので渋々一本ビールを分けてやると「ありがと」と返してくる。
「200円ね」
「有料なの?」
「それぐらいはとる」
「じゃあ返す」
ビニール袋に押し込むようにビールを返すかわりに、無断でコーラを引っぱり出してそのまま栓を開ける。
コラという暇もなくぐびぐびと一気飲みして「はー!」と気持ちよさそうな声を上げた。
「コーラ代は?」
「んー……じゃあうちのブースで配ってたタオルあげる」
袋に入ったままの新品のタオルにはでかでかとJFEの文字があり、他社のタオルを受け取るのもどうかと思ったがあって困るものでもないし自宅用に使えばいいかと諦めて受け取った。
応援グッツの詰まったカバンに適当に押し込むと遠くから「おーい」と声がした。
室蘭は大きめのリュックを背負いながらバタバタと駆け込んできた。
「ごめんドームシティで迷子になってた!」
「あ、室蘭だ!相変わらずいい美少年ショタコンホイホイで……」
「水島も元気そうだね~野球部の調子いいの?」
「うん、野球部が調子よすぎて福山ちゃんが野球の事しか話さないんだよね~」
「まあそういう事もあるよ」
はははっと笑ってごまかすと「俺も飲み物欲しい」というのでビニール袋を渡すと、レモンチューハイの缶を選んで取り出した。
「お酒いいの?」
「バレなきゃいいの~」
室蘭は見た目こそ子供だが実年齢はとうの昔に100歳を超えていることを水島は忘れてるのだろうか。
「水島!お待たせ!」
遠くから福山が駆け寄ってくる。
ぺたんこの靴に野球のユニフォームと応援グッツの入ったカバン福山は本気の応援モードという風体で、ユニフォームのところどころにはサインが入っているのも見える。
「福山お帰りー!」
「待たせてごめんねーみんなと話すと楽しすぎて遅れちゃって~……あ、広畑さんと室蘭さんもお疲れ様です!」
完全についでではあったが福山に軽く頭を下げられると、ひさしぶりと俺と室蘭も鷹揚に返した。
「室蘭さんこれから試合ですか?」
「うん、福山と水島も楽しんだでしょう?」
「はい!今日はすごくいい試合で!一回には先制出来まし「福山ビール飲む?」
試合のことを口走らせないためにビールを押し付けると福山はハッとした顔をして「……いただきます」と受け取った。
「せっかくだし乾杯してから別れる?」
「乾杯?」
「どこにですか?

「この素晴らしき社会人野球の季節に!」

室蘭が持っていたお酒を掲げると、俺たちは小さく缶を当てた。
「じゃあ、次は仕事でかな」
「そうですね」
それじゃあと水島と福山が腕を組んで帰っていくと「さーて、俺たちも行こっか」と室蘭が呟いた。




広畑と水島福山と室蘭。
今日の社会人野球がちょうどこの4人の集まる日程だったので。

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