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コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

イルミネーションと白ワイン

試合後の打ち上げも兼ねた観光として足を延ばした足利のフラワーパークは園内じゅうが光の海と化してる。
行きがけに購入した地元産のワインを紙コップに注ぎ、地元の肉や揚げ物を肴に今日の試合について好き勝手言い合うのを横で黙って聞いていた。
「シーウェイブスさん、お酒進んどらんのう」
「……気分じゃなくてな」
ブルーズ―マーズが案じるようにこちらを見たが、今日の負け方が負け方だけに腑に落ちないというのが素直なところだった。
キューデンヴォルテクスの方は生来酒を好む方であるらしくぐいぐい飲んでいるし、レッドレグリオンズの方も今日は気分良く呑んでいるから自分が全然飲んでいないのが目立ってしまう。
「まあ、そがぁな日もあるじゃろうなあ」
「少し散歩してきてええか、せっかくなら園内見て回らんと面白くなかろう?」
「ほんなら三人でここで飲んでますけぇ」
ワインを手にふらりと立ち上がると光の海に包まれた園内を歩き回って見つけた居心地の良さそうなベンチに腰を下ろした。
ポケットから携帯を引っぱり出すとトップリーグの方の結果速報が出てきて、そこにはスティーラーズの名前も浮かんでいてその顔を思い出していると電話が鳴った。
『元気か?』
その電話の主はスティーラーズその人で、やれやれと笑ってしまう。
「お前さんタイミングが良すぎるぞ」
『偶然やな、そっちはまだ足利か?』
「おう、打ち上げがてらイルミネーション見とる」
『男四人でイルミネーションかい』
「この先足利なんぞ来る機会無さそうだからな、こっちの名物らしいし見に行くかってキューデンヴォルクス……いや、お前さんには香椎と呼んだ方が分かりいいか」
『へー、あいついま調子アカンみたいやのに元気やねえ』
「そうしないとやってられんこともあるさ」
ちびりとワインを口に運ぶ。
目の前には藤の花を模したイルミネーションがきらきらと瞬いており、それを肴に甘めのワインで体を温めていた。
『お前さんもか?』
「さあ、どうだかな」
『俺相手に嘘ついてどないするん?』
その言葉に虚を突かれたような心地になってしまい、一瞬紡ぐべき言葉が出て来なくなった。
『俺の前でくらい、素直になってもええんやぞ?せっかく敵として優勝競い合わんでいい立場なんやから』
「……お前今日の試合結果把握したうえで連絡してきたな?」
『一点差で逆転負けしてセカンドステージ2連敗、やろ』
「性格悪いな」
『お前かて俺が今どうなってるか把握してるやろ?」
「順位決定戦で四強入りして15年ぶりの優勝狙える状態になったことなら把握してる」
『ならお互いさんやないか』
電話越しにくつくつと笑うのを「意地が悪い」と呟くと、悪うございましたねーなどと言い返してくる。
本当に妙な仲になってしまったものだと思う。お互い接触は多くなかったのに意識してしまう、そんな存在がいる事は幸福なのか否かはよく分からない。
しかしほんの少し、気が楽になって気がする。
「なあ、」
『うん?』
「優勝しろよ」
『そっちは間違って降格せぇへんようにな』



シーウェイブスとブルーズ―マーズとスティーラーズ。
足利行って来ました記念に。

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いーあるてぃーたいむ

「君津あての荷物届いてたぞ」
「東京……」
仕事を終えて自宅に帰ると無断でやって来ていた姉妹分が我が物顔でソファーに寝転がっていた。
机の上に置かれた小包のあて先は中国・上海となっており、可愛がっている弟子が寄越してきたのだとすぐに分かった。
「荷物受け取ってくれたのは嬉しいけど無断で人んち侵入するなよ……」
「合鍵の隠し場所分かりやすいからしょうがないな」
「しょうがなくねえわ」
カッターで小包の封を開けると白い封筒が出てくる。
同封された手紙は可愛らしいパンダの便箋で、あのきれいな顔をした中山服の弟子がこれをわざわざ買って来たのだと思うとなんだかおかしくて笑ってしまう。
親愛なる君津老師へという書き出しの中国語の手紙に目を滑らせると、どうやら仕事先でわざわざ俺のために購入してくれた中国茶とお菓子だという事を知った。
「なあ、お茶飲むか?」
「お茶ぁ?」
「宝山がかなり良いお茶贈ってくれたから」
「へえ、じゃあちょっとだけ飲むわ」
やかんでお湯を沸かし、昔買いそろえた中国茶の道具を引っぱり出し、宝山が一緒に贈ってきた麻花(マーファ、中国のかりんとうのようなお菓子)を皿に乗せた。
君山銀針なんてよくもまあ寄越してきたものだ、これ結構高い奴じゃなかったか?
茶葉の種類に合わせた温度のお湯で淹れるやり方は宝山の面倒を見ていた頃に覚えたもので、今でも時々鹿島や千葉にねだられて中国茶を入れることがあるからそれなりに慣れている。
小さめの湯飲みに茶を注げば湯気と共にお茶の香りが部屋中に広がってきた。
「美味しそうじゃん」
「いい茶葉だからな」
「いただきます」
そういって小さくお茶に口をつけると、東京は気に入ったというように微笑んだ。
俺の方もひとくち口に含むと上手く淹れられたことが分かって嬉しくなる。
「美味いな」
「茶葉が良いんだよ、俺もあとで紅茶と緑茶送ってやらないとな」
「宝山ってお茶好きなの?」
「嫌いではないと思う、向こうにいた頃俺が本場の点心にハマってちょくちょくお茶淹れるとき練習台にしてたけど嫌がってる感じ無かったし」
「へえ」
麻花をガリガリかじりながら中国茶を飲んでいると、仕事の疲れが少しだけ緩んできた。
おやつ終えたらこの中国茶の残る部屋で昼寝してもいいかもしれないなとぼんやり考えていた。




君津と東京とチャイナなおやつどき。

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きょうもノーサイド

久しぶりの小ネタ集です



・でもそれって僕の愛なの♡
レッドドルフィンズ「聞いてください!日テレさんの取材で山崎紘奈ちゃんが来たんですよ!」
ヴェルブリッツ「山崎紘奈ってトップリーグアンバサダーの?」
レッドドルフィンズ「ええ、うちの練習に必死で食らいつく紘奈ちゃん最高に可愛かったですよ!」
ヴェルブリッツ「……彼女、モデルとは言え普通の子だよな?そんな子をプロの練習に混ぜたのか?」
レッドドルフィンズ「そりゃそうですよ、その必死に食らいつく姿がいじらしくて可愛くて……」
ヴェルブリッツ「鬼かお前は」
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愛ならばしょうがないね~

・サンウルフズ新シーズンも来るよ
サンウルフズ「新ユニフォームが出来ましたよ!テーマはWWW.です!」
イーグルス「なんで草生やしてるんですか」
サンウルフズ「WorldWideWeb!」
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これは草

・サンウルフズ新シーズンも来るよ2
サンゴリアス「そう言えば新シーズンの日程見てて思うんだけどさ、」
サンウルフズ「なんです?」
サンゴリアス「日本のチームなのにホーム開幕戦がシンガポールなの、おかしくない?」
サンウルフズ「シンガポールと香港もホームですから!」
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サンウルフズのホームは広い

・今日の熊谷コンビ
ワイルドナイツ「今度ドバイ遠征行くんでしょ?」
アルカス「そうだけど」
ワイルドナイツ「頭に巻く布あげるから、お土産よろしくね」
アルカス「砂漠の砂でいい?」
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こんなんですが仲良しです

・カップ戦も順調です
スピアーズ「みんな!カップ戦4位以上確定したお祝いに米食べよう!」
グリーンロケッツ「そういや親会社がいま米食おうぜキャンペーンみたいのしてるもんね」
スピアーズ「正直主力いない試合でここまでいってる俺すごいしね!」
シャイニングアークス「とりあえずコシヒカリでも買ってきます?」
スピアーズ「千葉のふさこがね炊いてあるよ!」
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この後めちゃくちゃ米食った

・↑の裏で
キューデンヴォルクス「……なあ、どうしたらいいと思う?」
ブルース「先輩が勝てばよかっちだけです」
レッドスパークス「ワタシも勝つだけですヨ!」
キューデンヴォルクス「いやまあそうなんやけどな?!まさか昇格したばかりのウォーターガッシュに負けるとは思わんやん?!んでファーストステージ8位て!最下位て!」
レッドスパークス「センパイの博多弁久しぶりデスネー」
ブルース「降格したくないなら勝つしかなかですよ」
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個人的には大波乱過ぎた

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一人鍋の夜更けに

仕事を終えて家に辿り着くとはあと小さくため息を吐いた。
夜勤明けの身体に優しく染み込むものが食べたいと気持ちで冷蔵庫から作り置きのだし汁の入った麦茶瓶を取り出す。
これは以前東京さんに教わった水出しの方法だが、これがあると普通のカップ麺もだしの効いた味わいになるのでこのところずっと常備している。
土鍋にそのままだし汁を入れて貰い物の白菜をざく切りにして鍋に入れ、冷蔵庫にあったもやしや使いかけの大根や人参などありたけの野菜を入れて火をつける。
八幡さんに押し付けられたみかん風味の缶チューハイをちびちびと飲む夜更けの自室の静寂は、今や怯えるものではなく私にとっては優しい孤独であった。
八幡さんや小倉さんが嫌いな訳じゃない、ただずっと人と一緒にいることに疲れてしまう。
これがきっと都市生活者の慣れ親しんだ孤独なのだろうと妙なことを考えてしまうのは空きっ腹に流し込んだ酒のせいだと一人で言い訳をしてみるが、聞く者のいない言い訳には何の意味もない。
しゃがみ込んで火の様子を調節しているとうっすらと濡れた前髪が目前に垂れてきた。
真っ白に色を抜いた髪も昔は病気かとひどく心配されたものだが今では皆慣れてしまい、今では幼少期のような黒髪に戻りたいという気はもうなくこの白い髪も愛すべき私の一部だと思える。
(私は、あの人じゃない)
ガスコンロの揺らめく火にぽつりとそう囁いてみる。
八幡さんの一部になるために生まれてきたようなものではあるけれど、あの人は私の白馬の王子様でも神様でもない。ちょっとはた迷惑だが優秀な上司だ。
あの人は私に仕事以上のものを求めない。だから私はそれをこなす。それ以外の部分は私の所有物であり、孤独に包まれているときの私はきっと誰も知るよしの無い私だ。
一つ目の缶が空になったので二つ目の缶チューハイの栓を開ける。


この鍋が煮えた頃にはきっとこのセンチメンタルも煮溶けているに違いない。


戸畑ちゃんと夜更けのうだうだ。

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玄界灘ヨリ荒波来ル

*一部政治的なネタを含みます

「釜石さん、戸畑さんから電話が来たんですけど」
工場での作業中、事務職員から耳打ちされて「今行く」と告げる。
「いえ、ただ『玄界灘ヨリ荒波来ル、注意セヨ』と伝えてくれと」
「軍部からの伝令文みたいじゃな」
しかし文章の意味はどういう事だろう、と考えながら工場を出ることにする。
玄海灘と言えば福岡だ、福岡というと自分が育てた愛弟子の顔が一番に思い浮かぶ。
そして荒波という事は……素直に読み解くなら荒れているという意味だろう。
「そういう事か」
「どういうことですか?」
「これから仕事で荒み切ったやは「釜石!」
まるで獲物を狙う大型犬のように飛び掛かってきた男をキャッチすれば、案の定それは八幡であった。
「お久しぶりですねえ釜石顔合わせは出雲でのこと以来ですから半月ぶりですか?お元気そうで何よりですよ私はそれにしてもこっちはホントに寒いですよねえいや北九州も寒いんですよ?でもこっちよりはまだ南ですからね南と言えばそれにしても韓国ですよ!あそこもほんと何考えてるんですかね!あの判決のせいでこっちは家で息つく暇もなく東京に出ずっぱりなんですよ!角打ちで酒の一杯も飲めやしない!餃子を肴にビールの一杯でもっ「落ち着け」
マシンガントークを無理やりふさいでやればこれは相当鬱憤が溜まっていると見え、職員に「わしの仕事は全部明日以降にまわすからそう伝えておいてくれ」と告げると驚きつつ「わかりました」と答えた。
「八幡、うちで飲むか」
手を外してやれば「当然ですよ」と答える。
「そのためにわざわざ東京駅で色々仕入れて来たんですから」

***

こたつに火を入れるとその上には東京駅で仕入れて来たという酒やつまみが並び、そのつまみが明らかに普段食べる機会のない地域の食であるのを見てこれは絶対計画的な脱走だと密かに確信した。
八幡はワンカップを一気に半分も飲み干すと酒臭いため息を吐いた。
「ほんっっっっっともう嫌んなりますよ」
「例の韓国での判決か」
半月ほど前に海を挟んで隣の国で出された判決は会社上層部どころか政府を巻き込んでの大騒ぎとなっており、一応この会社の代表格となっている八幡はそちらの方に追い立てられていたようで、今回の原因はそこにあるらしかった。
(こいつはこの20年くらい韓国嫌いが加速しとるしなあ)
育てた弟子からの技術盗用以降すっかりかの国が嫌いになってしまい、それが鬱憤をより深めているのだろうと感じている。
「釜石、」
「うん?」
「私は頑張ってるでしょう?」
「そうだな」
ここで否定してやると間違いなくゴネるので適宜肯定してやれば8割ほどは満足したようだった。
「なのにあの弟子はホントに恩知らずですよね」
「空きっ腹で飲むと酔いが回るぞ、ますのすし食え」
口元にますのすしを押し当てるとそのままもぐもぐと食べ始める。
(……いや、このまま適当に相槌打って酔い潰して寝させた方が良かったか?)
しかしもうますのすしは八幡の胃のなかである。
ああだこうだ言ってもしょうがないので、空きっ腹に日本酒をガバガバ流し込みながら猛烈な勢いで愚痴をこぼしたりやたらと触って来たりする八幡を撫でまわしつつ適当なものをつまみながら適当な相槌を返してやる。
「かまいし、」
早くも酔いが回ってきたのか少しばかり舌足らずな口ぶりで、こちらを抱きかかえるとそのままぎゅうと抱きしめられる。
「わたしのいちばんはかまいしですけど、かまいしのいちばんはわたしですよね?」
その問いかけにかつて好いた少女の名前が浮かんだが、八幡はあの娘が嫌いだったことを思い出す。
しかし八幡とあの娘を比べてどっちが上か、と問われてもどっちが上と答えられる気はしなかった。
「人の好き嫌いに1番も2番も無いさ」
その答えに僅かな不機嫌を滲ませながら「そうですか」と呟く。
「でもお前はわしの一番弟子、これは永遠に変わらんさ」
「そうですけどね」
「まったく、お前さんはいつまでたってもわしの前じゃ子どもだなあ」
「とうぜんですよ」
人前ではきっちりと振舞う癖に釜石!と呼ぶ声は母を求める子供の声だ。
それが何よりもめんどくさくて、一番愛おしい。





八幡と釜石と最近の事

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