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コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

愛はそこにある

釜石は泊まりに来た客人に服を貸すとき、だいたいシーウェイブスのユニを貸してくる。
隙間なくびっちりと広告で埋められたそれは釜石にとって特別な意味を持つものでもあった。
「……過去のユニフォームよくこれだけ残してますよね」
「捨てられる訳が無かろう?」
最愛のシーウェイブス、彼の夢であり誇りである青年の足跡を釜石は一つとして手放そうとしない。それが釜石の愛情であるからだ。

「もう一度あいつを応援しに日本選手権を見にいくのが夢だからな」

釜石の愛情は、愚直でどこまでも真っすぐだ。


八幡から見た釜石おじじの愛情の話

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ぼくらは地獄を裸足で行く

『此花には怒られるんだろうなあ』
あの日、和歌山がそんなことを言っていたのを思い出す。
新日鉄との合併話が初めて世間に取り沙汰された日のことだ。
『怒るだろうなあ』
ぽつりと俺が返すと『だよねえ』と困ったような寂しいような苦笑いをこぼしてきた。
そんな事をなぜ今思い出したのだろうと重い身体を起こしながら考える。
「あ、おはよう海南」
「……ん」
壁時計を見るともう午後だ。昼飯どきは過ぎたがおやつ時には少し早い午後2時過ぎ。
しかしお腹は空っぽで何か食べたいような気はしていた。
「とりあえず焼きそば作ったけど食べる?」
「食べる」
のろのろと食卓に腰を下ろすと麦茶と焼きそばが目の前に置かれた。
「ああ、そう言えば今日久しぶりに此花に会ったよ」
その言葉で今日は和歌山が大阪へ行く日だったことを思い出した。
半月ほど前に新日鉄住金の社名変更が世間に知らされてから和歌山と此花が顔を合わせるのは今日が初めてだった。
「そうか、」
「……なにも無かったけど、発表直後だったら俺ぶん殴られてたかもね」
「ぶん殴られたらちゃんと傷冷やしといてやるから安心しろよ」
「うん、」
「此花の事をかわりにどやしてやってもいい」
腐っても和歌山は俺の大事な男なのだ、それを傷つけられて大人しくいられるほど俺は丸い性格はしていない。
「俺は一緒にいてやるから」
もしもこの身に死後があるのなら、地獄でデートしてやろう。



和歌山と海南が男夫婦してる話。

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サレンダーなんて出来やしない

*2005年ごろのいつかのお話

「シームレスパイプに特化する?」
「ええ、」
ブラックコーヒーに砂糖を溶かしながら和歌山がそう告げる。
「随分と賭けに出ましたねえ」
シームレスパイプ(継ぎ目なし鋼管)は主要用途である油田開発の停滞から売り上げが伸び悩んでいると聞いていたが、そのシームレスパイプの方にシフトするのは大きな賭けのように思た。
「中東も少しは落ち着きましたし、またそのうち油田開発も再開するでしょうから」
「……で、私を呼んだ理由は?」
「シームレスパイプへの特化で鋼板ラインを止めることになったんです……新日鉄は今鉄源が足りてないんですよね?」
顔は笑っていたがその目は妙に冷たく冴えたものだった。
瞳孔の淡い茶色はじっと私を見定めているように思え、腐っても此花の血筋だと思い知らされる。
「半製品の購入って訳ですか」
「そういう事です」
あなたなら買ってくれるはずだというその眼差しが嫌になる。
「……そこまでしてシームレスへの賭けが失敗したら死にますよ、あなたたち」
「その時はその時です、最悪鹿島や直江津を連れて新日鉄傘下に入るのも止む無しでしょうね」
自虐めいた口ぶりで和歌山がそんな言葉を漏らす。
コーヒーを勢いよく飲み干すと叩きつけるようにコップを机に置いた。

「僕は住友金属の代表権を持つ身ですから、これ以上赤字を垂れ流す役立たずと呼ばれる訳にはいかないんですよ」

その言葉には曇りのない本気故の強さが滲んでいた。
小さくため息が漏れたのはきっとその本気の風圧に負けたのだ。
「……話は通しておきますよ」
彼はもう賭けのテーブルについている。
損をしてでも止めるなんて、出来るわけがないのだ。

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【パラレル】今まで通りでいられない

小倉と和歌山が師弟の一線を超えそうで超えない感じのお話。
いちおうパラレルです。


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とり天、ハイボール、6月の昼下がり

その日、後輩は朝から台所に立っていた。
「人んちの台所朝から占領して何人分作る気だよ……」
「だって関東勢全員呼ぶって言ったのそっちでしょ」
サンゴリアスは鶏肉を一口サイズにカットしながらそんな事を言う。
いつもの4人と千葉から三人、群馬から一人、神奈川からも一人、総勢9人でしかも全員アホほど食うともなればそりゃあこんな大量にもなるかと納得してしまう。
言い出しっぺとはいえ少し呼び過ぎたかと思ったが、そもそもサンゴリアスが酒の肴も作るなんて言い出したのも大きい。
「あ、鶏もも切ってくださいよ」
包丁と鶏ももを押し付けられて仕方なくぶつ切りにしながら、思わず浮かび上がった疑問を口にする。
「……いいけどこれ何にすんの?」
「とり天とチキン南蛮ですねー」
「ああ、今日の試合会場大分だからか」
そう、今日みんなで集まるのはテレビ中継される試合を見るためだ。
日本対イタリア戦を見ながらああだこうだ話すだけの飲み会というよりもくだらない集まりに近い。
「鶏肉の残り全部同じくらいの大きさに切っといてくださいねー、ゆで卵ももういいかな」
「人使いの荒い後輩だな……」
お湯からゆで卵をざるで救い上げて冷ましたりどこかから出してきた粉を混ぜたりとまあバタバタ動くのに思わず呆れる。
「サンゴリアス、忙しそうだね」
「……なんだ野武士かぁ」
こそっと現れたのはワイルドナイツだった。どうやら一番乗りらしい。
「さすが『腹空かせて来い』っていうだけあるよね」
「ほんとにね」
「あ、鶏肉終ったんならゆで卵剥いて冷蔵庫にあるピクルス玉ねぎと一緒に大きめに刻んで玉ねぎだけ塩もみしといてください」
ざるに大盛りのゆで卵をポンと押し付けられて思わずため息が漏れる。
「手伝うよね?」
「……それ拒否権あ「無いよ」
やれやれというようにワイルドナイツがため息を吐くと、二人並んで茹で卵の殻を黙って剥くことにした。
「「「こんにちわー」」」
揃って現れたのはグリーンロケッツ、スピアーズ、シャイニングアークスの千葉トリオだ。
シャイニングアークスの手にはどこからか手に入れてきたらしい酒瓶ががらからと揺れている。
「スピアーズは手伝って、アークスはその手持ちの酒冷蔵庫に入れて部屋片づけ、グリロケは何もするなよ……」
「はいはい」
「待っていちおうこのミラクルセブンも電気屋の子よ?!信頼されてなくない?!」
「グリーンロケッツ……」
キッと睨みつけると諦めたように手伝いだしたスピアーズ、反射的にツッコミを入れ始めるグリーンロケッツとそれを憐れむように見てくるアークスという三者三様の状況が出てくるがそう言う奴だから仕方ない。
とりあえず酒だけ冷蔵庫に入れてもらい、アークスとグリーンロケッツがぶうぶう言いながら部屋を片付け始める。
「お邪魔します」
少しどすの効いた能様な低い声と共にやってきたのは馴染み深い相模原からの客人だ。
「お、ダイナボアーズ!久しぶり!」
「……なんで茹で卵剥いてるんですか」
「サンゴリアスに手伝わされてる、悪いけどアークスと一緒に片づけといて」
「手土産あるんで冷蔵庫借りますね」
「了解」
早速手土産を冷蔵庫に突っ込むと早速部屋を片付け始める。
ふいにピクルスをザクザクと刻んでいたワイルドナイツが俺の方を見て「ダイナボアーズと仲良かったんですか?」と聞いてくる。
「あいつとは三菱三井交流戦で面識あるんだよ、お硬いけどいい奴だよ」
なるほどと呟くと刻んだピクルスとゆで卵ををボウルに突っ込んで、玉ねぎも刻み始める。
「……汝ら早すぎるな」
「もっと早めに来ても良かったですかね?」
最後に到着したのはプロジェクターとそれ用の幕を持ったブラックラムズとイーグルスだ。
みんなで大画面で見るために自社製の最新プロジェクターを持ってきた二人に恨みはないが「映写機ダービーめ」と思わず漏れるのは仕方ない。
「あ、料理手伝いましょうか?」
「大丈夫だからブラックラムズ手伝いな」
「我は一人でよいぞ、映写機の事はアークスとグリーンロケッツに手伝わせる」
横からからりと揚がった揚げ物のいい匂いがしてきた。
どうやらとり天とチキン南蛮が上がり始めて来たらしい。
「ワイルドナイツ、全部刻み終わったんならマヨネーズと混ぜといて」
「はいはい」
そうして刻んだ野菜と一緒に大きなスプーンでザクザクと混ぜると美味しそうなタルタルソースが仕上がってきた。
そうして揚げたてのチキン南蛮の上にさっとお酢とみりんを混ぜたものがかけられる。
ついでにとり天も仕上がってきた。
「美味しそうなチキン南蛮ですねえ」
「イーグルス運んどいて」
「はい、」
「……タルタルソースはかけなくていいの?」
言われてみればせっかくタルタルソース作ったのにかけてないがいいのだろうか。
スピアーズの疑問に答えたのはイーグルスだった。
「宮崎だとタルタルなしのチキン南蛮もあるんですよ、だから別盛りにしたら好きにかけられるし別で良いんじゃないですか?うちの会社初代が大分の人なんでタルタルなしの奴を親に食べさせてもらったりしましたよ」
「へー」
「あと冷蔵庫にあるメイソンジャーサラダとぬかづけとりゅうきゅうも出しといて」
「サンゴリアスくんも料理人みたいですねえ」
「料理は気が抜けないからな」
イーグルスと一緒に配膳を手伝ってやれば、食卓が随分と華やかに彩られていく。
男だけの飲み会にしてはインスタ映えとでもいうのだろうか?絵面があまりに華やか過ぎるぐらいで笑ってしまう。
(うちの妹分が喜びそうだなあ)
大盛りのチキン南蛮ととり天、魚の醤油漬けのようなもの(大分のりゅうきゅうという料理らしい)、ガラス瓶に詰まったサラダが二つ、箸休めの漬物も随分カラフルな野菜が使われている。
「あとこの保冷瓶にはガスパチョ入れてあるそうです」
「……凝り性だね」
そして遠くからピーと複数の音が鳴り響いた。
これは自社製品の炊飯器の音だと気づくと、サンゴリアスが大きめの炊飯身を丸ごと二つ抱えて持ってきた。
「米炊いてあるんですけど要りますよね?」



「「「「「もちろん!!!!!!!!」」」」」」

きょうもがっつり食ってがっつり飲んで、大好きな仲間と大好きなラグビーの話をしよう。


日本対イタリア戦を見る関東組の話。

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