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コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

宴の後に

「やっぱり東北は良いですね」
ぽつりとシャイニングアークスはそんな言葉を呟いた。
試合終わりの夕暮れの仙台、冷たいスポーツドリンクが心地よく喉を通っている。
「……そういや、お前さんにとっちゃ仙台はもうひとつの故郷みたいなもんだったか」
かつての電電東北の記憶と歴史を引き継いだシャイニングアークスは仙台の空を愛おしげに眺めてほほ笑んだ。その脳裏にはきっとそいつの記憶が眠っているのだろう。
「ええ、シーウェイブスさんとの対決楽しかったですよ」
「ぼろ負けだったがな」
「そんな自虐を仰らないでください、シーウェイブスさんは地域に愛されるチームのトップランナーなんですから」
「……そりゃどうも」
元公務員らしい堅苦しい口ぶりではあるがそれは本心からのように思えた。
「あんな風に、強く愛されるのはきっと大変なんでしょうね」
ぽつりと漏れたいたわりめいた言葉に、小さく頷きを返す。
「だからこそ降り注ぐ愛を勝利で返してやりたい、きっとみんなそう思っとるさ」




シーウェイブスとアークス。
仙台のラグビーフェス行きたかったです

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メロン食べつつ無駄話

*会話メインのぐだぐだ小ネタ


神栖「ただいまー……」
鹿島「お帰りー(メロンむしゃむしゃ)」
神栖「なんでいるんですか?!」
鹿島「鉾田からメロン貰ったからお裾分けしに、鍵は神通力で開けた」
神栖「神通力ってそんな大層なもんなんで持ってるんですか」
鹿島「そりゃあ俺は生まれた時から神様に仕えてるもの、多少はね」
神栖「……神通力ってかピッキングでも覚えたんじゃ」
鹿島「まさかあ」
神栖「この間飲酒運転摘発数ワースト1位って報道されてましたね」
鹿島「神栖も四位じゃん……うちは修羅の国じゃないもん……というか茨城県内で修羅の国と言えば神栖じゃない?!」
神栖「これでも神栖警察署で来てからは多少マシになったんですけどね、治安が良くなけりゃ人口強盗なんて出来ませんよ。あとメロンは?」
鹿島「人口強盗とか言っちゃったよこの子……あ、メロンは冷蔵庫冷やしてあるよ」
神栖「……バニラアイスありますけどメロンと一緒に食べます?」
鹿島「食べる!(ガタッ)」
この後めちゃくちゃメロンとアイス食った。

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煙草の煙と消えていく

急に書きたくなって日石×出光習作


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碧き海の旅の終わり

ガシャンと物の落ちる音で仕事中なのにうとうとしていた自分に気付いた。
「……すいません、呉さん」
職員の一人が申し訳なさそうにそう言いながら荷物を拾うので、一緒に拾ってやると携帯には新日鉄住金の社名変更が取りざたされていた。
「少し触っても?」
「あ、はい」
職員の携帯を触ってざっとニュース記事を確認すると、最後の方に『なお日新製鋼の完全子会社化とステンレス鋼板事業の統合も同時に発表された』という記述を見つける。
携帯を返してからふらりと席を立って自販機でアイスコーヒーの缶を一つ買う。
ふいにまだ南陽と呼ばれていた頃の可愛らしい姿の周南が言っていたことを思い出す。
『ステンレスは真っ青なブルーオーシャンなんだよ、とく姉が開拓して僕が突き進む海なんだ』
その碧い海を一緒に渡って行こうと決めていたが、その翼の羽根を他人に譲らざる得なくなってしまったのはほんの少し寂しい思いがした。
ブブブ、と携帯がバイブを鳴らす。相手は周南だった。
「……もしもし」
『あ、もしもしー?僕だよー』
「どうかしました?」
『呉と一緒に居られてよかったと思ってるから、気にしちゃダメだよ』
周南は最初から全部分かってるのだ。
最高のお嫁さんという言葉が頭の中に浮かんでくる。
「こちらこそ、楽しい60年間でしたよ」




呉と周南

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冷酒と涙を流し込む

やってられんから付き合え、と言うその手には紙袋一杯の酒瓶とお惣菜が詰まっていた。
「全部冷やで良いの?」
「きょう蒸し暑いし温めなくていいだろ、雪冷えがいいのなら冷蔵庫入れといてくれていいぞ」
割り箸を片手で割って冷やのワンカップとあじの南蛮漬けを食べ始める。
日が暮れ近くの薄暗くなりだした俺の部屋で早速酒を飲み始めるので持って来たものを確認する。
「日本酒はともかくチューハイとビールは冷たいほうが良いでしょ」
「チューハイ入れたっけ?」
「何本かある、チューハイ類は一応冷やしとくね」
手当たり買って来たのだろうさまざまな種類の酒が一緒くたに詰められており、冷やした方がよさそうなものだけを選んで冷蔵庫に詰める。
「俺もお酒貰うよ」
「仕事終わりで良いのか?」
「まだ少し余裕あるから」
日本酒の四合瓶を開けて漬物に箸を伸ばす。
こんな風になる理由は俺だって分かるし、その気持ちも概ね察せられたから口には出さない。
(……いつかは来る日だもんなあ)
新日鉄との合併のときからいつか社名から住友の字が消える日は来るだろうと薄々思っていたけれど、その日はずいぶんと早くに来てしまって一番悲しいのが此花なのだ。
俺だって住友への慕情は多少なりとも持ってるのだ。
早速ワンカップを飲み干した此花が小さな赤ワインのボトルに手を伸ばし、ローストビーフサラダを手前に寄せてまた飲み始める。
いくら酒に強いとはいえ随分とハイペースで飲んでいるのでこの酒もひょっとしたら全部飲み干してしまうのかもしれないし、最悪俺の買い置きの焼酎も飲んでしまうかもしれない。
「尼崎、」
「うん?」
「お前も私も、和歌山も鹿島も直江津も海南も小倉も、みんな住友の子だ。小倉は厳密には違うけど和歌山を育てたのはあいつだからうちの人間だ」
「うん」
「その誇りだけは、せめて住友金属の名を覚えてる奴がいるうちは、守れると思ってた」
俺は何も言い返さない。
飲んだくれてその悲しさも苦しさもその腹の奥で溶かしてしまうまで、付き合うつもりでいた。
「……ごめんな」
此花は顔を伏せたまま絞り出すようにそう言った。
「謝らなくていいよ」
「いや、謝らせてくれ」
「此花は一つも悪くないんだし、合併時の代表権は和歌山が持ってたじゃない」
「あー……そういやそうか」
「そうすることでしか俺たちが生きていけないのなら、そうやって生きていくよ。住金のみんなでなら地獄の果てに行ってもいい」
アルコールで緩んだ口から随分とクサい台詞が漏れた。でもそれは嘘じゃない。
俺はみんなで生きていけるのならどういう運命でも生きていけた。此花や和歌山がいて、鹿島や小倉や海南がいるのならどんな苛烈さにも耐えられる。
「そうか、」
「そうだよ、今夜はとことん飲もう。この地獄を生き抜くために」
「……だな」
此花の表情が僅かに緩んだ。
これだ、これが俺の一番好きな姉の顔だ。



此花と尼崎のはなし

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