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コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

山頂の孤独

「そういやなんでお前代表権の譲渡まだしてないの?」
レールにまつわる打ち合わせを終えて帰りの新幹線まで暇つぶしにと称して立ち寄った開店直後の角打ちで、ふいに此花がそんなことを聞いてきた。
「何でって……だいたい新日鉄という会社の顔を誰に譲るんですか」
「君津か戸畑あたりにもう譲って隠居してもいい頃合いだろ」
「隠居って、あなた未だ仕事してるでしょう」
「ものの例えだよ」
「そうですか」
「で、なんで譲らないんだよ」
此花はよほどこの話に興味があるらしく、にやりと笑いながらハイボールを飲んでいる。
もうここまでくると答えるのも面倒だ。帰りたい。
「……特に理由はありませんよ」
それは率直な言葉だった。
言われてみれば確かに今の八幡製鉄所八幡地区は製鉄所としての機能のほとんどを戸畑に集約したため製鉄所としての機能は薄れており、私もまた近年は上や国の使い走りの方が仕事として多かった。
ならば君津や戸畑あたりに顔役を譲ってもいいのだがそれを考えたことは一度もない。
「ないのかよ」
「しいて言うなら、私以外に新日鉄の顔役が出来ると思えないって思ってるからですかね」
「まあ、確かに官営様の跡継ぎの名前は一人で背負うにゃ重すぎるけどなあ」
「重すぎるって?」
「素直な感想」
いつか、私がその存在を保てずに消えた時誰がその名前を背負って舞台に立つのだろう。
「……私と釜石が消えた時、会社も消えるんですかね」
「まさか」



八幡と此花

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二階堂さんからのいただきもの

Twitterでいつもよくして頂いている二階堂さん(@Kazuha_Nikaido)から頂きました。


最高にかっこいい神戸ネキを見てくれ……。
今回は私のイメージを細かく反映して頂いたのであかべこさんの脳内の神戸ネキはこんな感じなんだなーと思ってみてください。君の脳内の神戸ネキも見せてくれ。
上の画像を元にキャラクターシートメーカーで作ったキャラシがこちらです



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極楽鳥花を抱きしめる

「水戸くん、このお花なあに?」
茨城町がふいに仕事場の窓辺に飾られた花に眼を止めた。
太い緑の茎に黄色の花のようなものが咲いたトロピカルな花はまだ冬の名残厳しい3月の窓辺に鮮やかに生えている。
「極楽鳥花っていう南の方の花、毎年この時期になると八丈島からこれを送って来てくれる人がいるから一本貰って来た」
ホントは全部市民に配布されるんだけどねと苦笑いを漏らすと「でも綺麗だね」と呟く。
「うん、」
最初にこの花を貰ったのは、震災の翌年だったか。いや直後だった気もする。
早くもぼんやりしてきた記憶に自分でも呆れてしまう。
「……極楽鳥花の花言葉は『輝かしい未来』」
「そうなの?」
「輝かしい未来を、生きないとなあ」




水戸と茨城町。公式ついったを見て思いついたネタ。

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ガラスペンに愛を

青いガラスペンを頂いた。
透き通った空を固めたようなガラスペンを熊本さんがプレゼントしてくれたのだ。
「で俺を巻き込むんです?」
「お礼状どうしようか決まらなくて……鯖江はどう思う?」
「好きなの贈ればいいじゃないですか、熊本さんもそれが一番お望みだと思いますけど」
「それでもせっかくなら素敵なのが良いでしょう?」
「まあそうですけどね」
ああだこうだと言いあいながら結局買ったのは絵葉書を一枚こっきり。
冬の名残りの残る街から、春の足音が響きだす街へどんな思いを込めて贈ろうか?





フォロワさんへのお祝いに書いた熊本福井のはずがただの鯖江+福井になった。

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何でもない日のティーパーティ

「またええケーキ買うてきましたね、記念日でもないのに」
小皿に乗せられたのは艶やかな春苺の乗った苺のモンブラン。
ケーキに刺さった小さなカードには北野にある人気のケーキ屋の名前が記されており、いつもよりいいものを買って来たのだという事はすぐに察せられた。
「あら、記念日じゃないと高価なケーキを買っちゃいけないとでも言うの?」
「別にそういう訳やないですけど、こういう高いもんは加古川さんやいつもの女友達らと食うたほうがええと思いますけどね」
「加古川の分は残してあるわ、それに今日は『何でもない日おめでとう』って気分だったのよ」
「……ほんならいいですけど」
マグカップになみなみと注がれた温かな紅茶は、いつもよりも心なしかいい香りがする。
(いつもよりええ茶葉開けたのか、ちゃんと水買うて淹れたのか……まあええか)
一口飲み込んだブラックティーのほのかな苦みと香りでケーキの甘さを静かに味わっていると、ふいに口を開いた。
「つくづく思うけど、生きてるからこそこういうお茶も飲めるのよね」
「そうですねえ」
「排球団や野球部が生まれた日もめでたかったけれど、生まれて苦しみながらも生き延びて迎えた今日もきっと同じぐらいめでたいと思うの」
ふいに姐さんの口から零れた兄弟たちの名前に、一瞬手が止まる。
生きられなかった兄弟たちのことをその口から聞くのは久しぶりのことだった。
「……もし、私のためにあなたを死なせることがあったら私を恨んでね」
「たぶん恨めないと思いますけどね」
亡き後輩のことを思い出しながら、そんな台詞を漏らした。



「それでも、今日まで生き延びたことを祝った方がええんとちゃいます?」


神戸ネキとスティーラーズさん。

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