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コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

こんなにも震える喉で

ニューデイズに貼られた「さよならカシオペア」の文字にふいに足が止まる。
「北斗星さん?」
「ああ、ごめんね」
可愛らしい後輩の心配げな声に申し訳ない気分になる。
ふいにカシオペアの視線が先ほど見ていたポスターに向けられる。
「これ見てたんですか」
「うん、」
自らが廃止された時にも同じように張られたポスターだ。
この会社のために生み出された存在である自らの最後の会社への貢献が、この廃止記念のグッツなのだ。分かっていてはいても、墓標のようだと思う。




「……きみが、いきのびてくれればよかったのに」
あり得ない願いを口走る一言がまるで呪いのようだと思った。


久しぶりにカシオペアさんと北斗星さんの話。
カシオペア廃止記念グッズのポスターを眺めつつ。せめて北海道新幹線にカシオペアか北斗星が愛称として残ればなあ……

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盛岡支社歓談

*ぷらいべった再録

「相変わらずこっちは賑やかだな」
ぽつりと大船渡線が独り言を漏らした。
いつもの田舎のヤンキー然とした服装から明らかに着慣れないJRの制服に着替えたおかげでビビる人は少ない。
「当たり前でしょ、県庁所在地なんだから」
「まあな、兄弟は嫌じゃないのか?」
「仙台に比べたら盛岡はそこまでじゃないよ、まあそんなこと言ったら怒られるだろうけどさ」
エリート然とした顔立ちを崩して苦笑いをこぼした気仙沼線の足取りの速さに、大船渡線は何故そんな早歩きなのだろうと考える。
「随分と早歩きだが会いたい奴でもいるのか?」
「あ、歩くの速かった?」
「兄弟の足取りが随分と軽い気がしてな」
大船渡線の言葉に対して正直なことを言うのはやめておいた。
着慣れない制服を着た大船渡線にドキドキしてるなどと誰が言えようか?

****

「「いつになったらやまだはおよめにくるの?」」
双子の言葉に山田線はグッと言葉が詰まる。
西洋人形のような整った顔立ちの双子の少年は本来の自分のエリアである三陸沿岸から盛岡くんだりまで来ていたのは、恐らくそれを上司に聞くためなのだろう。
「やまだはやくおよめにきてよー」
「そうだよ、ねえ?」
「うん!ぼくたちやまだのことたいせつにするよ?」
「ちょくつううんてんだってするよ?」
双子の子犬のような目に思わずのけぞる。
飴でも渡して切り抜けるか?と思ったが飴はない。どうする、俺。どうするよ。
「はいはいそこまでー」
割り込んできたのは見慣れたJRではなく東日本交通の制服を着た男の姿。
来客者の名札を首から下げているのがその証拠だ。
「岩泉線!」
後ろから山田線を抱きかかえるように腕を絡めれば「わしの唯一の友人とらないでくれんか?」と笑う。
「「えー」」
「いわいずみせんはたぎょーしゅでしょー?」
「ぼくと南リアスはせいしきによばれたのになんでいるのー?」
「特別参加!というか勝手に来た!」
「それいいの?」
「いいの!元JRだからいいの!」
中々しょうもない口喧嘩に挟まれながら、心の底から思う。


(誰か助けて!)

****

「ぶえっくし!」
「釜石線、汚いぞ」
「あー悪い悪い」
不機嫌そうに会議室の机を磨く田沢湖線と違い、ひたすらお茶を準備する釜石線は何故か妙に楽しげだ。
「しっかし、田沢湖線も背ぇ伸びたよなー。すごい腰きつそう」
「きつそうだと思うならお前がやれ!なんで天下の秋田新幹線が会議の準備を……」
ぶつくさ言いつつもまじめに仕事をこなす田沢湖線はいいやつであることを釜石線はよく知っている。
「お茶全部淹れおわったし、俺山田線呼んでくるから待ってて」
「おう」
早速椅子に押しかけて自分の席のお茶を取る。
「……あ、茶柱」



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メロン・キス

幽霊にも外出の自由がある、という事を知ったのはつい最近のことだ。
そして仕事の無くなった身を思い切り俺は謳歌していた。
「北斗星さん、見てください!」
そうして差し出したのは寝台特急ヘッドマークを模した缶だ。
ヘッドマークは目の前で微妙な顔をしている北斗星さんのヘッドマークだ。
「……自分(カシオペア)のヘッドマークじゃないんですね」
「俺のゴールデンフィンガーが10種類の中から一発で引き当てたんですよ?!凄くないですか!?」
「いやまあ確かにすごいですけど、自分の奴引き当てましょうよ」
「そもそもこれブルートレインしか入ってませんからねー」
本当はトワイライトエキスプレスも入ってるけどそこは黙っておこう、それに10種類のうち1つはシークレットだから俺っていう可能性も無きにしも非ずなのだ。
「せめて自分のヘッドマーク引き当てて喜ぶべきでしょう」
「そんな事しませんってあ、あとこの飴メロン味なんですよ。夕張メロンの色でした」
ほら、と缶を開けて見せてみる。
鮮やかなオレンジ色の小さな粒が缶にぎっしりと詰められているのを北斗星さんがのぞき込む。
「一つ、食べます」
「いいんですか?」
「もちろん」
すっとその顔を引き寄せて、唇を合わせる。
そして相手の口を舌で割ると飴玉を相手の口に転がした。
「どうですか?」
驚きと羞恥に満ちたその顔はもうどんなものよりも可愛くて、触れ合せた唇は最高に甘いメロン味だった。





寝台特急ヘッドマークキャンディ、買いました。
一発で北斗星引き当てたのでこれはもうカシオペアからのご加護だな!と思って書いた。

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もう夏なんか愛さない

*ぷらいべった再録

*カシオペア→北斗星なお話



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最近のねくすこさん

Q.ここはどこですか?
A.羽生パーキングエリア
数度繰り返した問答を終わりにして、信じられないほどの混雑に東北道は深い深い深いため息を吐く。
「……ここが自分の一部だとは思えないね」
「成功の証拠だからいいんです」
東日本の目は燦々と輝いていた。
江戸時代をモチーフにした鬼平江戸処オープン初日はマスコミも殺到して大賑わいだ。
「関越の次は僕かと思ったけど、まあ人が多いこと自体は悪い事ではないしね」
「新幹線みたいに設備投資するにもインターやパーキングぐらいしか投資のしようがありませんからね」

高速道路の売りものは道だ。
道を走るのは個人の所有する車だから新幹線のように速度を上げることはできないので、せいぜい道の補修で走りやすくするぐらいだ。
ならばどこに投資するか、休憩するパーキングやサービスエリアである。
パーキングにお金を落として貰う事で会社を潤わせる。
株式会社になってからそう言う事も考えざる得ないというのが現状である。

「鉄道や航空とも勝たなくちゃいけないんだから大変な時代だよねえ」
「民営化が無ければ、とこういう時思いますよ」
静かに二人はお茶を啜っていた。


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