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コーギーとお昼寝

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北風小僧と冬至鍋

「寒っ……」
玄関を開けると凍えるような冷たい北風と小雨が頬を切りつける。
泊りがけのセットを詰め込んだ鞄を肩にかけ安物のビニール傘を差して歩いていくと、急いで帰り路に着く工場の職員たちとすれ違った。
(日曜の夜だもんなあ、普通はこの時間出かけないよな)
そんな当たり前のことに想いを馳せながら借りた車の鍵を開ける。
目的地は府中のビール工場……もとい、後輩・サンゴリアスの家だ。

****

「いらっしゃい」
大きな体を黄色い半纏に詰め込むように着て、俺を手招きするといつもは洋風の部屋の真ん中に畳とこたつが準備されている。
「準備良いなあ」
「でしょー?ワイルドナイツからこたつ買ったんだよ」
半纏貸してあげると言って渡された紺色の半纏は俺にちょうどいいサイズだ。
こたつの上には火のついた土鍋、冷酒やウォッカなどの酒類と炭酸水ど割り材が並ぶ。
少しぬるめの温度に調整されたこたつで足先と指先を温めていると、サンゴリアスはちゃかちゃかと酒を準備し始める。
麦焼酎のお湯割りだが、小瓶から輪切りになった柚子と何かがタラリと垂らされた。
「なにこれ?」
「柚子のはちみつ漬け入りの麦焼酎お湯割り、冬至っぽいじゃん」
「あー……そっか、今日冬至かあ」
麦焼酎のお湯割りは程よい温度で柚子の匂いとはちみつの甘みがまだ何も入れてない身体にはちょうどいい。
「麦焼酎っていいよねえ、何と合わせても合わせてくれる感じ」
「あー、わかる。日本代表で言うなら中村?」
「わかる、んで芋は松島とか?……ちょっと個性が立ってる感じ」
「じゃあー、リーチは何だろ……ビックマン?」
「それはCMに出てるだけじゃん」
酒の種類を日本代表に喩えるという誰に分かって貰えるの怪しい話で盛り上がってると鍋が良い具合に煮えてきた。
野菜の甘い匂いがほんのり香って来て「そろそろいいかな」とサンゴリアスが鍋の蓋を開くとかぼちゃと太い麺が見えた。
「冬至だからかぼちゃのほうとう~」
かぼちゃのみならずたっぷりの根菜や豆腐、お肉もたっぷりで具沢山だ。
「いいじゃん、美味しそう」
「でしょ。これ取り皿ね」
取り皿と箸を受け取って早速ほうとうに箸を伸ばす。
まずは何もかけずにそのまま食べろ!というサンゴリアスの言い分に従って(本人曰く最初から薬味つけると作り手の意図が読めない、らしい)何もつけずに麺をすすると、麺がもっちりしていておいしい。
「美味いじゃん」
「うん、結構うまく行ったわ」
「お前失敗作食わせる気だったの?」
「いやほうとうってあんまり作ったことなかったし」
ああだこうだとつまらない話を言いあいながら、この穏やかな年末も終わりが近いと気づく。
年が明けて半月もしたら俺たちは運命のシーズンが始まる。
新しいファンを定着させ、新リーグへの助走をつけ、オリンピックが駆け足でやって来て、日本代表が世界一へ行くための。あまりにも大切な一年だ。


「……まだ北風小僧もかぼちゃ食ってるかね」

冬よ、まだまだ終わらずここにいて。


ブレイブルーパスとサンゴリアス。今年は試合のないのんびりした年末です。

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