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コーギーとお昼寝

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彼と彼女の話

「そういえば、旧住金の最年長って此花の製鋼所ですよね?」
八幡の唐突な質問に「そうですね」と答える。
新日鉄と住金の併合後、何かと交流を持つようになったけれどこの100歳オーバーの製鉄所の扱いは難しい。
「まとめ役の話なら八幡が旧新日鉄のまとめ役やってるのと同じですよ、旧住金の主力は俺と鹿島ですから」
「そうでしょうけど、此花の製鋼所もそうですけど尼崎や小倉もいたじゃないですか」
「尼崎は製鋼所が言うならって感じで、それに小倉は浅野系列系の出だから住金内部の事にあんまり関心ないきらいがありますから」
今のとなっては遠い昔の話だ。

1942年(昭和17年)
「起きたかい、ちびすけ」
こげ茶の髪に桜色の瞳が目に飛び込んできた。
周囲を見渡せば飛び込むのは煙草臭いオフィスの景色だ。
「自分が何者か、わかるかい?」
その問いかけを頭の中で噛み砕き、ゆっくりと息を吐き出すように名前を口にする。
「……す、すみともきんぞくこうぎょう、わかやませいてつしょ……」
「良く言えたな。ようこそ、あたしたちの新しい弟。」
さらりとその掌が髪を撫でた。
その瞬間に、確かのこの人たちは自分と同じものなのだと理解したのだ。

「八幡さんは、自分が意識を得た瞬間に見たものって覚えてます?」
「私が最初に見たのは釜石の顔と、屋根の天井でしたかね。釜石に抱きかかえられていましたから」
なるほどと軽く笑みが零れる。
きっと誰もが遠い記憶を胸の奥に抱えながら、今日を生きている。




和歌山の幼少期のお話。
ちなみに和歌山が生まれた頃にはまだ小倉は浅野系列の独立企業でした。

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7月5日のケーキ

沸騰に沸く八幡の街を歩きながら自宅へと戻っていく。
「ああ、いたいた」
「……和歌山?」
和歌山製鉄所、住金の主要製鉄所であり彼らの中でも年長になる和歌山の姿に思わず驚いたような顔をする。
「世界遺産登録記念にケーキ買って来たんです」
「わざわざですか」
「ええ、せめてものお祝いです」
和歌山からそのケーキを受け取る。
箱に記載された住所は和歌山市内になっており、わざわざ持ってきたのだと察する。
「あ、一応日持ちする奴選んだんで悪くなっては無いと思いますよ」
「その言葉を信じましょう、これから帰るんですか?」
「明日の朝一番で帰るつもりです」
「……うちに泊まって行きなさい、せっかくですから祝杯に付き合って貰いたいんです」
その言葉に驚きつつも、「はい」と彼が微笑んだ。



(ケーキに合う酒はあっただろうか?)

そんな事を思いながら。

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