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コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

偶像(アイドル)の妄執

俺が子どもだった頃の一番古い記憶は、色んな人が俺のところを去っていく姿だった。
砂丘と海と神社しかない退屈な街を去っていく人の多さが確かに俺の記憶にこびりついている。
此花は『お前のせいじゃないさ』と慰めてくれ、和歌山も去ろうとする仲間を引き留めようと苦心してくれた。
でもこれは俺の問題であるのだから自分でどうにかしないといけないと言う気持ちが俺の中には確かにあったのだ。
そんな時、ふと目についたのが当時隆盛を極めていたアイドルを追っかけてあらゆるところに現れる人々だった。
美しい歌声や相貌に魅了された人々は、テレビ局の前から自宅(当時は結構そう言う情報が出てたから)まで追いかけ回してその人の全てを知ろうとしていた。
「ねえ、俺もジュリーみたいになればみんな好きになってくれるかな?」
「お前はもう既にジュリー顔負けの美少年だと思うけどねえ」
此花は呆れながらそう答える。
「違うよ、ジュリーみたいに俺がみんなを魅了する存在になればここに残ってくれるかなって」
此花は驚いたように俺の顔を見てから、少し宙を見て考えた。
そうして考えてから「そうか」とつぶやく。
「和歌山もお前のところの職員がすぐいなくなる問題については悩んでるし、うちからも今度部活をそっちに移そうか考えてるが、お前自身が努力しなくていい訳じゃないよな」
俺がこくこくと頷く。
最高に愛される俺にさえなれば、みんなここにいてくれる。
今となっては妄執のようなその思いは今も俺の中にハッキリと残っているんだ。


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鹿島の昔話。偶像と書いてアイドルと読んでください。

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きょうは夏祭り

もう日も暮れたというのに熊谷のまちはまだ暑い。
せっかくだからと浴衣を着てきたアルカスに対し、半分仕事で来た俺はチームポロシャツである。
「夏祭り感ゼロじゃん」
「何割か仕事出来てるからしょうがないんだよ」
そう言いながらアルカスが代わりに買って来てくれた屋台めしに口をつける。
何とも言えないチープなソース焼きそばの塩気が身体によくしみ込んでく美味しい。
「仕事って昼の巡行に出てたってだけでしょ」
「そのあと行政さんとか関係者のあいさつ回りしてて、戻る暇もなかったんだよ」
「はー、大変だねえ」
「アルカスも大学でお世話になるのやめてフリーターになればわかるよ」
オフシーズン中は自分と関わり深い立正大さんに養われつつ学生をやってるアルカスとは違うのだ。
と言うかあの人もよくまあずっとアルカスの面倒見れるよな……。
面倒になったので焼きそばを食べつつビールを飲んでいると、アルカスが「あ、」とつぶやく。
遠くからお囃子と光を纏った山車が四方から近づいてくる。
「叩き合いが来るよ」
四つの山車が向かい合い、自らの威勢を見せつけるようにお囃子をかき鳴らしキラキラと山車が輝いた。
この街に移ってから初めて見るうちわ祭りの叩き合いは例年より煌びやかだ。
何より観客もこの煌びやかな空間に目を奪われている。
「ワイルドナイツってうちわ祭りはじめてだっけ?」
「太田にいた時見に来たことはあるけど夜の巡行祭は初めて」
「じゃあ明日夜のひっかわせも見に行こう」
アルカスがにやりと笑う。
生まれながらの熊谷人であるアルカスが「本物のうちわ祭りを見せたげるよ」と言うので「じゃあ、お願いしようかな」と口にした。


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ワイルドナイツとアルカス
夏祭りといえば夜のイメージです。

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君とならやけ酒も楽しい

「ん゛あ゛ー゛!゛せっかく仕事休んで東京まで来たのにうちも君津のとこのかずさくんも負けるとか!」
鹿島が荒れ気味にそう叫ぶ。
気持ちは分かるがジョッキで机をドンドンするのはやめて欲しい。
「しょうがないだろ、勝負事は時の運だしな」
「なんかヤマハに負けたのもちょっと悔しいんだよねえ、サッカーならうちが勝てるのに!」
「別競技の話すんなよ……あとつまみ次何がいい?」
「軟骨食べたい」
「はいはい」
タブレットで手早く注文を出し、ついでに俺もレモンサワーを追加する。
かずさマジックの敗戦はやはり悔しい、悔しいのだが。
「こうやって試合の話しながら酒飲むって事自体が十分楽しいんだよな」
「それはそうだけどねえ……来年は日程ズレても俺かずさくんの応援行こうかなあ?」
「来るんなら歓迎するぞ」
今年は応援に来たメンツも多くて会って話をする楽しみを思い出せた。
「鹿島、」
「うん?」
「俺も来年はお前んとこの野球部応援いくわ」


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君津と鹿島と都市対抗

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野球の季節とラガーマン

ラガーマンにとって夏はオフシーズンなので日本代表戦を見る以外はただただ仕事をこなす季節である、いや合宿とかもあるけど。
まあ比較的余裕のある季節なので全く関係ないイベントに呼ばれる事もままある。
「……東京ドームって何回来ても迷うなあ」
都市対抗野球の応援の手伝いとして呼ばれた僕はトランペットを抱えながら、応援席を探して歩き回っていた。
「レヴズ?」
「シーウェイブスさんなんでいるんですか?!」
「旅行で東京に来てたら応援に駆り出されてな」
「応援って、相手鹿島ですよ?」
「血縁じゃあないが鹿島もいちおう日鉄だからな」
そう言われればそうだった、どうもうちの親と接点の薄い業種だと覚えられないよなあ……。
シーウェイブスさんは応援グッズにビールと牛串やモツ煮などのセット、僕の方も身内の応援グッズで揃えてるからお互い見慣れぬ服装である。
「でもこんなとこで会えて嬉しいです」
「そうだな。ああ、あとお前さんのお兄さん来てるならうちの応援団とタイミング合わんようにした方がいいぞ」
「なんかありました?」
「鹿島さんとアントラーズが来てるんだが、ジュビロの身内になんか負けないぞー!って妙な気合い入れててなあ……鹿島さんはともかくアントラーズはすぐ帰るから帰り駅で鉢合わせたら面倒そうで」
「うちの兄さんとアントラーズさんってライバルでしたしねえ、Nボックスとかやってた時期なんでだいぶ昔ですけど」
「N-BOXはホンダの車だろ?」
「あー……まあいいや。とりあえず鉢あわないようにしときます」
「じゃ、応援頑張れよ」
そう告げると反対側へと抜けていき、それを見送りながら今日は純粋に観戦を楽しんでもいいかなあと思うのだった。


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レヴズとシーウェイブスと社会人野球の話。

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旅行に行く話

「熊本行きませんか」
イーグルスが突然そう切り出したのは6月上旬の事だった。
「突然如何した?」
「秩父宮でのオールブラックス戦のチケット取れなかったんで、熊本のほうのチケット見てたんですけど思ったより席に余裕あるから先輩と一緒に見に行ったら楽しいかなあって」
「あれはな……」
大人の事情故に新国立ではなく秩父宮開催となったオールブラックス戦は激しいチケット争奪戦となり、自分たちの中にも取れなくて泣き言を零した者は多かった。
関東勢全員でチケット争奪戦に挑んだが、無事にチケットを取れたのはダイナボアーズ・サンゴリアス・Dロックスの3人だけであった。
如何でも良いがサンゴリアスは運に恵まれているところが有るよな。
「にしても熊本か、旅行も兼ねてと云う事になりそうだな」
「もちろんそのつもりですよ。前日に温泉で一泊してから試合なんてどうです?」
「試合は土曜日だから前日休みか……1日位なら有休を使っても良いかも知れないな」
「じゃあ決定で、チケット類全部僕のほうで取っていいですか?」
「ああ、自分の分ぐらいは出すから金額が分かったら教えてくれ」
そんな訳で決まった温泉旅行。
試合観戦のついでに温泉や美味しいものを楽しむのは初めての経験である。

(これが所謂スポーツツーリズムと言うやつなのだろうな)

自分の身を以てスポーツツーリズムを味わってみるのも悪くない。


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ブラックラムズとイーグルス。
熊本での試合、行きたかったねえ

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