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コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

最後の夏に

休憩中に見ていたテレビでこれが最後の夏なのだと気づいた。
年が明ければ僕らは新日鉄住金傘下へ入り、その数か月後には平成も終わる。
平成最後の夏という言葉はどこか小説めいた響きがあってなるほど話題にする人が多いのもうなづける。
「呉、かき氷食べようよ」
「かき氷?」
「うん、桜島が和三盆くれたんだよ」
「……そうするか」
周南にせがまれるままに古いかき氷機を引っぱり出し、ガラスの器にお店で買った天然水の氷をたっぷりと雪のように乗せる。その削った氷に軽く和三盆を振りかけたシンプルなかき氷だ。
口に含めばすっと氷が余計な熱を奪っていき、和三盆の天然の甘さが口の中に広がってきた。
「周南、」
「うん?」
「この夏どこか行きましょうか」
最後の夏ですからね、と告げると「じゃあ周防大島行きたいな」とかえって来るのだった。



呉と周南。
彼らにとっては二つの意味で最後の夏になるのです。

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髪結い

「西宮、このノートなあに?」
久しぶりに神戸に来た水島が見つけてきたのは古い一冊のノートだった。
記名のないそのノートをぱらりと捲ってみれば万年筆で書かれた硬質な葺合の字で、女性の髪形についてまとめられていた。
「ああ……これ、葺合が私のためにまとめてくれたノートよ」
「西宮って髪の毛ずっと短くしてなかった?」
「そうだけど葺合が『女の短髪は子どもっぽいから好かん』って言って神戸や此花に髪結いの仕方を教えて貰って長かった時期があったのよ、短くしたのはこの20年くらい」
「そうだっけ?」
「水島が覚えてないだけ」
簡単なかんざしを使った結い方やみつあみの仕方をまとめてあり、今ではとんと見なくなったマガレイトやリボンの結び方までまとめられている。
そう言えば水島はずっと短髪で通してきているから一度も髪を結ってあげた覚えがないなと思う。
「ねえ、これ借りて良い?」
「別にいいけどどうして?」
「福山の髪結んであげたいなって」
「そう言えば福山はわりと髪の毛長めよね、どの程度使えるか分からないけど使って」
ノートを受け取ればうれしそうに福山に似合う髪型を探し始めるので、葺合の遺産が受け継がれるささやかな喜びでちいさく微笑みがこぼれ落ちた。



西宮と水島。
葺合はたぶん女の短髪=おかっぱなんだお思います

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ビール、折り詰め寿司、ラグビー中継

「悪いがテレビ見てもいいか?」
「いいですけどどうかしましたか」
久しぶりに釜石が我が家に来た土曜日の夜更け、釜石はリモコンを借りると問答無用でBSをつけてラグビー中継が流れ出す。
「昼間じゃないんですね」
「たまにそういう事もある」
キックオフの笛が鳴れば釜石の視線はラグビーにくぎ付けとなり、もはや他のものは眼中にない。
私はちびちびとビールを飲みながら折り詰めのお寿司を口に運び試合の展開に一喜一憂するばかりのその人を見つめていた。
(……うちの業界ラグビー好き多いですよねえ)
釜石と言い神戸と言いどうもごつい男が好きな奴が多すぎる。
そう言えば呉も昔はかなりラグビーが好きだったが、最近はカープの方に乗り換えたようで一時期ほどは言わなくなったなとぼんやり考える。
「またノックオンか、今日はミスが多いな……」
ぶつぶつと試合を分析しだした釜石に私はもう何も言わないことにした。
ここに神戸がいたらもっとうるさかっただろうが不在なので静かに飲める。
「釜石、」
そう声をかけても釜石の視線はテレビから動かない。
ふとその手にあるビールグラスが空になっていることに気付き、そっと新しいビールを注いでおけば、無言でビールに口をつける。
まだ試合は前半20分ほど、あと1時間はこのままかと思うとなんだかため息が漏れてしまう。
(まあ、しょうがないですかね)
適当に酒でも飲みながら釜石が飽きるのを待つばかりだ。




八幡と釜石とラグビーの夕べ。

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あの子は子どもが好きだから

シャイニングアークスの引っ越し祝いという名目で千葉組でふらりと集まって飲もうという話になった夜の事だった。
「スピアーズってショタコンなの?」
「はぁ?!」
「……グリーンロケッツ、あなた酔ってません?」
「よってないよー」
顔だけは女と見紛うばかりに綺麗な緑ロケの頬は薄く赤に染まり、その手には何杯目とも知れない日本酒のグラスが揺れている。どう見ても酔っ払いである。
「だってさー、スピアーズって子ども好きじゃん」
確かに子どもは好きだ、これから羽ばたこうとする若さとエネルギーに溢れている子供たちの成長ほど見ていて楽しいものはない。
しかしそう思われるのは実に心外で相手が付き合いも長いグリーンロケッツなのでなおさらだ。
「俺は成長する子どもが好きなだけでそう言う下心は無いよ」
「えー」
「犯罪者にでもなって欲しいの?」
「いや、スピアーズって子ども見てるときは本当に楽しそうだからさー、てっきりそう言う下心でもあるのかと」
「そう言うのは微塵も無いよ」
水飲んでもう寝たら?と言い返してやればちえーというように頬を膨らませて水を飲むのだった。



スピアーズとグリーンロケッツのゆるぐだ話。

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あの子は隠れたスイーツ男子

シーウェイブスの冷蔵庫にはよくパステルのプリンが入っている。
「……やっぱクラブチームやとこういうの良く貰うんやなあ、一つ貰ってええ?」
「別に構わんがついでにミルクティーのプリン取ってくれ」
書類から目もそらさずにそんなことを言うので軽い返事を返す。
ついでにコーヒーでも淹れてやろうと電気ケトルお湯を沸かしてホットカフェラテも淹れてやる事にして、「出来たで」と告げれば書類を脇に置いてくる。
「コーヒーまで淹れたのか」
「俺かて仕事頑張ってる奴にコーヒー淹れる程度の優しさは残ってんで」
「それもそうか」
「にしても、お前さんとこはいっつも冷蔵庫に甘いもん入っとんなあ」
「スポンサーだからな」
「でもお前さんのスポンサーやないとこのお菓子もようけ入っとるやないの」
ここに常備されている食べ物の多くはスポンサーやファンからの差し入れが多いようだが、明らかにそれとは関係ないお菓子もいくつか置いてあるのだ。
本来スポーツをやる身にとってお菓子はそう沢山取るものではないのに常備してあるという事は理由は一つしかない。
「やっぱ甘いもん好きなんと違う?」
「……うるさい」
むすっとしつつもミルクティーのプリンをゆっくりともったいつけて食べるので、やっぱこいつ甘いもん好きなんだろうなあと察してしまうのだ。




スティーラーズとシーウェイブス。
シーウェイブスさんはパステルのプリンがお好き。

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