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コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

オオサカスターマイン

ようやく片付いた書類仕事の山に思わずふうとため息を吐いた。
「偉いため込みようやったなあ」
若い職員の一人に皮肉めいた言葉と目線を送ると、申し訳なさそうにしゅんとして「すいません」と本日何度目かの謝罪が漏れた。
仕事は好きだけれどこうもずっと夜更けまで仕事ばかりしていると飽きてしまう。
「はよ帰ってゆっくり寝とき」
「ホント俺の仕事に巻き込んでもうてすいません」
「別にええよ、俺らはこの製鉄所のためにおるんやから仕事が生きてる理由やもん」
パソコンの電源を落として荷物を纏めていると、遠くからパアン!と音がした。
設備に何かあったのかと反射的にその手を止めて身体の調子を確認(設備に何かあればそのまま体に出るからだ)すると、横にいた職員が「花火ですよ」と返してくる。
「花火?」
「ほら、大浜公園で毎年イベントやっとるでしょう?その最後に打ち上げる花火ですよ」
パアン!という音とともに赤や黄色の光が建物の中に差し込んでくる。
窓の外、上空に目を凝らせば花火が大きく打ちあがっている事に気付き少なくとも設備の異常ではないことに安堵する。
そうして一度安心してみれば、花火というものはこんなに綺麗なのかと素直に思えた。
「君にとっては夜遅くまで残業したご褒美やな」
「いえ、むしろ堺さんへのご褒美でしょう」
「そんなもん俺に要るんかなあ」
「要りますよって、俺らよりも長く生きるんですから生きることを楽しんだって下さいよ」



堺と夏の夜のお話

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浴衣を着る

「神戸、お前さん背縮んだな」
此花がぽつりとそんなことを言うので「確かにそうかも知れないわね」とだけ返す。
「以前はおはしょりそんなに大きくなかったですもんね」
高炉を止めると背が縮むとは言われているがこうして見ると確かに以前より背が縮んだことを実感する。
おはしょりで調節はしたけれど来年の夏はもっと着丈の小さいものを用意したほうが良いかしらなどと考えつつ伊達締めに手を伸ばした。
「西宮、お前さん着付け大丈夫か?」
「大丈夫よ、この浴衣だって此花が仕立てに出したものだし」
「そう言えば葺合に頼まれて私と此花で西宮の着物選んだりしたものね」
「懐かしいなあ」
葺合は西宮が女の子の姿で現れた時、色々と戸惑って私や神戸に電話をいつも寄越してきたものだった。
成長してからは良妻という言葉の似合う気立てのいい子になったが私も此花もまだどこかでその頃の記憶が残っているのかもしれなかった。
「むしろ加古川の方が一人で浴衣着られないのよね」
「さっきも神戸が着せてたものなあ」
先ほどお手洗いに行った可愛い妹分は戦後生まれだからなのか着付けが苦手でいつも私が着付けてあげていた。
「そう言えば尼崎が場所取りに行ってるのよね?」
「うん、たぶん今頃は和歌山と海南に交代して食いもんでも買いに行ってるんじゃない?」
「弟使いが荒いわね」
「姉と弟なんてそんなもんだよ、神戸が出来たら行こうか」
文庫結びにくくられた帯を後ろに回すと加古川もお手洗いから戻ってくる。
「お待たせしました」
「いいのよ、まだ花火が上がるまでは余裕があるもの」
「じゃ、行こうか」



関西女子組、花火を見にいく

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祭り騒ぎのその後で 

どぼんと腰を落ち着けた水風呂の心地よさに「ふう」と息が漏れた。
炎天下で開かれたラグビーフェスタは好評で幕を閉じ、後始末の場を抜け出して水風呂で体を冷ましていた。
「よー、元気そうやないの」
「ライナーズなーに人の風呂のぞいとんねん」
「だってお前に会いに行こかと思ったら風呂場に居るよってお前の姐さんが」
「ああ……お前さんも水風呂浸かるか?」
「もっと広い風呂やったらお邪魔するけどな」
遠回しに人んちの風呂の狭さをディスられたので顔に思い切り水をかけてやると、「ガキか」と言いつつ人んちのタオルで顔を拭った。
「狭くても冷たい水風呂はええやろ?」
「まあな」
「というか何の用やったん?」
「本物のダン・カーター見に来た、レッドハリケーンズも居ったけどあいつ用事あるとかで先帰ってもうたわ。ついでにイニエスタ見ようかなて」
「ああ……というかお前サッカーなんて興味あったんか」
「いや世間を賑わす有名人の顔拝んどこかなって。というかイニエスタとトーレスに話題持ってかれてダン・カーター全然話題にならへんよな、シー・カーターとか意味不明な滑りやったりしとったけど」
「それうちの選手への悪口か?」
「いや、ああいう関西のノリに果敢に挑む子は俺好きよ?」
ニヤついたその顔を氷水に突っ込んでやろうかと思ったが怒られそうなのでやめておいた。これもまた俺の優しさである。
水風呂もぬるくなってきたのでのっそりと浴槽から上がれば、乾いたタオルを差し出してくる。
「ほな俺も行こかな、話題のイニエスタの顔も見たいし」
「おー」




スティーラーズとライナーズのぐだぐだ。ただシー・カーターのくだりがやりたかっただけ。

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おいでよセブンス

レッドハリケーンズ「今日からラグビーワールドカップ・セブンズ2018!」
ワイルドナイツ「男子は24ヵ国、女子は16ヵ国のトーナメント制で争う大会です」
サンゴリアス「あべまTVでライブ中継もあるし30日はBSでハイライト番組も放送予定!」
ブルーズ―マーズ「うちの選手も!出ます!!!!!!!!」
イーグルス「是非見てくださいね!!!!!!!」





レッドスパークス「……これどういうネタなんですカ」
ブレイブルーパス「知名度低すぎるから宣伝だよ」
シャトルズ(蒸し暑い……)
ヴェルブリッツ「シャト、麦茶飲むか?」
シャトルズ「ん」


そんな訳でみんな是非見てくれよな!

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君よ光であるために

*2011年ごろのお話です

「どうしてここまで貴方は献身的でいられるんですか?」
かずさマジックがそう問いかけてきたとき、彼はずっとこの問いがしたかったのだろうと思った。
新日鉄の合併話が浮上してきたのはもう半年前になるだろうか?
この数か月はずっと復興支援と釜石さんの看護に追われて半分忘れかけていたが、合併話の進捗情報はこの耳にも届いていた。
「不安か?」
「私めは貴方と同じようにクラブチームですが比較対象が近くにいますからね」
「比較対象?」
「住金鹿島の野球部ですよ、実績はあちらの方が数段上ですからね」
「そうなのか?最近の社会人野球には疎くてな」
兄がいた頃は多少の知識はあったが今の社会人野球となるとあまりよく分からないというのが素直なところなのだが、本人がそう言うのならばそうなのだろう。
「そうでしたか」
「でも自分自身で言うのならそうなんだろう」
「お恥ずかしながらそうなりますね、でも選手たちはみな素晴らしいんですよ?」
炎天下で復興作業に勤しむ選手たちを慈しむような眼で見つめる姿には確かに愛情があった。
「そうだろうな」
「……で、質問の答えは?」
再びモノクル越しに問いかけのまなざしが飛んできて、ああと少し考える。
(献身的でいられる理由、かあ)
自分ではあまり意識していなかった問いの答えをしばらく考える。
そうして数分にわたる熟考の末、出てきた答えはシンプルだった。

「この街とラグビーが好きだからだな」

愛する釜石の街があって、愛するラグビーが出来て、そんな自分たちを愛してくれる人がいる。
献身的であり続ける理由なんてきっとそれだけで十分だ。

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