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コーギーとお昼寝

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いるみねいしょんのよるに


イチマルさん(@10_plus10 )ちのお子さんをお借りしてのお話




クリスマスという日を特別神聖視しているつもりはないけれど、冬のお祭りだと思えばそれはそれで心が踊るというのはいささか勝手すぎるだろうか。
「別に気にする事じゃないと思うんだぜ?」
「そうかな」
「外国人だって寿司をアレンジしたり着物を魔改造して着たりするんだしお相子だと思うんだぜ」
こう言うところで大洗くんは現実主義的なきらいがあるなあと思う。
やはり観光地だから他所の人に慣れてるのかしら、などと考えてしまう。
「それより、茨木に渡すプレゼント選ぶために来たんじゃなかったか?」
「う゛っ……そうなんだけど……」
そう、ここは大洗シーサイドステーションの中にあるカフェ。大洗の海沿いに立つ大規模ショッピングモールである。
「大洗くんは高槻さんに何か渡したりとかしないの?」
「特にないな」
ばっさり切り捨てられたので頭が痛い。
何をあげたら喜んでもらえるだろう、という事はもうずっと考えているのに答えは全然出てこない。
「だいいち、プレゼントなんて渡さなくても惚れた相手がこの年末のクソ忙しい時期に時間作って会いに来てくれるだけで十分だと思うんだぜ?」
「そう言うものなのかな」
「まあどうしてもプレゼントがあげたいって言うなら協力はするんだぜ」
「……うん」

いるみねいしょんのよるに

クリスマスの夕方、待ち合わせは午後6時のJR茨木市駅前。
少し早めに行くのは彼を仕事場まで迎えに行こうという私なりの思い付きだった。
お付き合いするようになってから何度も来ているけれどまだ慣れない大阪の街。
でも新大阪駅と大阪駅が意外に離れてるとか梅田駅がいくつもあることもようやく覚えた(東京は同じ駅が複数あるなんてあまりないから)し、前は分かるようになったと思う。
さんざん悩んだあげくに用意したクリスマスプレゼントの紙袋を失くさないように気を付けながら、東海道新幹線を降りるとホームにあの人がいた。
「……しーさん?!」
クリーム色のロングコートに手を突っ込んでベンチに座っていた彼と、ホームに降りたばかりの私の視線がかち合った。
「お久しぶりです、まちさん」
「わざわざホームまで?」
「仕事が思いのほか早く片付いて暇やったもんで」
驚きすぎてうまく声が出ない。
呆然とする私に「まちさん、ここ寒いしカフェでも行きましょ」と手を差し出してくる。
手を伸ばすとその白い指先は少しひんやりとしていた。
「……ですね」
改札を抜けて新大阪駅のカフェへ、やっぱりずっとホームにいたから寒かったのだろう。
二人分のコーヒーを手に二人席に腰を下ろす。
「まちさん、この後どうします?」
「どうしましょうかね」
本当は迎えに行った後に料理を振る舞ってからプレゼントを渡そうと思っていたけれど、予定がだいぶ大きく変わってしまった。
まだ時刻は5時前、こちらは少し日没が早いのでもう外はだいぶ暗くなっている。
「……じゃあ梅田スカイビルのクリスマスマーケット行きませんか?」
ふとした思いつきが口をついた。
「梅田スカイビル」
「新幹線の中で聞いたんですけど、イルミネーションがすごく綺麗らしいんです。それに私クリスマスマーケットって行った事なくて。東京だとよくやってるとは聞くんですけど機会が無くて」
「まちさんがそこが良いなら、そうしましょうか」

***

クリスマス当日のマーケットは恋人や家族連れ、そしてそれを包むイルミネーションの優しい光に包まれていた。
「……すごいですねえ」
「ほんとに結構な人出ですね」
迷子にならないようにと繋がれた掌の熱を感じながら、あてもなくふらふらと歩いている。
冬の冷たい風の中でも誰もがこの宴を楽しんでいるように思えた。
そして、私自身も繋がった指先から温かな気持ちが体中にいきわたる感じがした。
「しーさんといるだけでこんな風に幸せでいられるってすごいなあ」
小さな声でそんな感慨を漏らす。
「……その言葉、まるっとまちさんにお返しします」
その答えに、思わず私の顔が緩む。
なんだ、『会いに来てくれるだけで十分』という大洗くんの言葉は正解だったみたいだ。

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