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コーギーとお昼寝

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冬の花火

遠くから冬の花火の音がする。
今日が最後の日となるスペースワールドの方角からだ、と気づいたとき私は呑んでいた日本酒のグラスを机において上着を羽織って外に出た。
大晦日の夜空に鮮やかな花が色鮮やかに咲き乱れ、最後の夜を彩っている。
「……さん、八幡さん」
ふとどこからか耳慣れない声がした。
顔は良く見えないが、声とぼんやり見える輪郭から幼い少年であることは分かった。
私と同じ英国風のスリーピーススーツの胸元には宇宙を模したピンバッジ。
「スペースワールド、」
彼と会うのは閉園が決まった時以来だろうか。
文字通り私の一部から生まれた少年の声には暗さが無く、フラットなように思えた。
「……この1年、ご無沙汰を致しましてすいません」
「あなたは仕事をしていたのですから気にする事ではありません」
「僕は今日でこの身体を喪いますが、どうか、僕のことがあなたと僕に関わって全てのひとの記憶の片隅に永遠に残りますように」
その言葉は数年前にもかけられた記憶のある言葉だった。
『俺を忘れんでください』
何かを失う事は仕方のない事で、それに抗う力はない。
しかし忘れないようにいることだけは出来る。
「……ええ」
失われるということには抗えないけれど、忘れずにいるぐらいならいくらでもできる。
花火の光の下から417光年という遠き旅に出る子どもを私は静かに見送った。





八幡とスぺワの話。

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