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コーギーとお昼寝

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日製さんとその妹

Gさんちの日製さんと安来ちゃんの話。




島根県安来市。
古来から製鉄の街として栄え、いまも安来鋼でその名を轟かせるこの地の片隅の小さな神社で妹分は黙々と落ち葉を掃いていた。
「久し振りだな、安来」
ウィンドブレーカーを羽織った妹分―名を日立金属安来工場と言う―にひらひらっと軽く手を振れば、何の用だというように視線を向けてくる。
「ちょっとこっちに来る用事があったからついでにな。」
「……そげなら、拝んでごしない(それなら拝んでいきなさい)」
「神社だしちゃんと拝んどくよ」
製鉄の神様を祭っているというこの小さな神社は関係者からの信仰が深く、この気難しい妹分が自主的に落ち葉掃きに来るぐらいには地元で篤く信仰されていた。
五円玉をお賽銭箱に入れて軽く柏手を打って拝んでから、再び妹分のところに戻る。
綺麗になった参道でこちらを見つけるとすたすたと歩き出す。
それについていくように歩いていくと安来の住む小さな家に着く。
石油ストーブとこたつに火をつけ、やかんをストーブの上に乗せるとから台所に歩き出す。
「茶ぁ出すけんたばこしとき(お茶出すから休憩しな)」
「わかった」
そうして台所でやおら餅を焼き始め、うっすらと甘い小豆の匂いがし始める。
しばらくして出てきたのは焼いた角餅の入ったおしるこだ。
「関東風か。まあいいや、いただきます」
反対側に座った安来を見ながらゆっくりおしるこに箸を伸ばす。
(……ん、美味い)
甘さと温かさで体が温まる。
愛想のない妹分だが根っこはいい奴なので、こうしてお茶とお菓子ぐらいは出してくれる。
湯が沸いたのか小さくやかんが音を立てる。
湯呑に茶こしを乗せてそのまま注ぐと、温かい麦茶が出てくる。
基本的に安来は仕事以外では割と寡黙なので自主的に口を開くことは少ない。
「そういや、日産が三菱のとこの子傘下に入れたのは知ってるよな?」
こくりと頷いてくる。
地元から外にほぼ出ない安来であっても、大騒ぎになっただけあって把握しているようだ。
「年末連れてくるっていうから久しぶりに日立に来いよ、兄貴や電線もお前の顔見たいだろうし」
「……考えとく」
ここまで言わせれば上出来か。
本当に来る気がなかったら馬鹿かこいつって顔されるだけだし。これでも長年面倒見てきた親会社なんだけどな。おかしいな。
「餅もう一個やろう」
「要らん」
久しぶりの妹との戯れを愉悦に思いながら、今年の賑やかな年末を想っていた。

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