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コーギーとお昼寝

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贈り物には思いを込めて

『ご依頼のものが完成いたしました』
そんな簡素なメールが届いたのはちょうど昼休みの頃だった。
送り主は顔見知りの肥後象がんの職人で、夏に頼んでいたものがちょうど出来上がったのだろう。
昼食を取りに行くついでに彼の家に行くにはちょうどいい時刻だ。
少し出かけてきます、とくまモンの付箋に書きつけて席を立つ。
(あの人が喜ぶような仕上がりになっているだろう)
遠い雪国に住まう彼女のことを想いながら一歩足を踏み出した。

贈り物には思いを込めて

「ご依頼の品です」
差し出された10センチくらいの小さな桐箱には職人の名が刻まれている。
小さな箱を開くとそこには黒と金の楕円形の帯留めが鎮座している。
熊本の伝統工芸・肥後象がんで作られた帯留めの中には夜の闇のなかで降る雪にじっと耐えながら咲く肥後椿があしらわれている。
「よか仕上がりになっとらす」
「ありがとうございます」
職人は軽く頭を下げて「こいもあたさまの好い人にお渡しするもんですけん」と穏やかに笑う。
それがあまりにも事実なので思わず視線を逸らすと「もちろん誰(だい)にも言わんですよ」と付け足される。
「……助かります」
後日口座に代金を振り込む旨を伝ええて職人の家を出る。
その足で向かったのは中心部にある大きな文具店だ。
手紙のコーナーを見渡すと、冬らしい雪華模様のあしらわれた封筒を見つける。
かの地は雪の多い土地柄だから雪よりも違う柄の方が良いだろうか?と考えていると、くまモンのレターセットが目についた。
(これが良か)
そうしてレターセットを片手に会計場所へと向かった。

*****

数日後。
雪国のあの人から荷物が届いた。
小さな箱には四季折々の柄が施された和ろうそくのセットとともに、純白の和紙に端正な筆致で自分の名が刻まれた封書が載せられていた。




拝啓、熊本市さま
北陸は雪雷の季節を迎え、初物の出回りだした越前ガニを頂いては食べる季節を迎えましたが熊本さまはお変わりありませんでしょうか。
さて、先日届きましたお歳暮の肥後象がんの帯留めですがありがたく着けさせていただいております。
同封頂いた肥後象がんについてのパンフレット通りに日々手入れをしておりますが手入れをすればするほど深みが出るような気がしてとても味わい深く感じます。
つきましては私からもお歳暮として福井の和ろうそくをお送りいたします。
越前の職人が丁寧に絵付けを施した逸品で、熊本さまのお気に召しませば幸いに存じます。
また会う日を楽しみにしております。

福井市


熊本さんと福井さんの話。
フォロワさんと話しててまだ一度も熊本さんを動かしていなかったので書いてみたもの。
方言はミサさん(@piromisaki )が監修してくれました。

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