ただ声が聞きたかったんです、と僕が言うとシーウェイブスさんが笑う。
「お前さん、彼女みたいだな」
「……迷惑でしたか?」
「いや、そろそろ夕飯食おうかなあってタイミングだったから別に」
「今日の夕飯は何ですか?」
「サクラマスの塩焼き、わかめの酢の物とヒョウの煮た奴、ノビルの味噌汁と白ご飯」
「ヒョウ?」
「スベリヒユって野草を乾かした奴だな、山形の方で食べるらしい」
シーウェイブスさんの作る料理は時々不思議なものがある。
山野草の料理などさっぱり分からないので、いつか食べさせて欲しいと思うばかりだ。
「そっちの夕飯は?」
「いま兄さんがカレー作ってくれてます」
「カレーも良いな。さて、こっちも冷める前に食べたいんだが……」
「あ、電話繋ぎっぱなしでお願いします」
「ならそうさせて貰うかな」
電話越しに頂きますという声とともに、咀嚼音が聞こえてくる。
モノを食う音は生きてる人の音だなあと妙な感傷を抱きながらしばらく黙って聞き入ってしまう。
「レヴズ?」
「あ、すいません。咀嚼音ASMR聞き入ってました」
「なんかあるよなそう言うの。好きなのか?」
シーウェイブスさんは時折咀嚼音をさせながら、ちょこちょこと話を振ってくる。
僕は僕なりに思いつく話をしているとふいに沈黙がよぎる。
電話の向こうで味噌汁をすする音がする。
「……僕、今こう言う関係になれてよかったなって急に思いました」
「うん?」
「震災の前までは全然接点なかったのに、今はこうして急に理由なく電話かけても許されるんだなあって」
「そうだな。あの時に失ったもんは多いが、お前さんとの縁は手に入った訳か」
シーウェイブスさんがかたん、と何かを置いてから口を開く。
「でも、あの時に試合しようって言ってくれて本当に嬉しかったぞ」
僕はしばらくその言葉を噛み締めてから「はい」と答えた。
台所の方から兄さんの足音がする。
「すいません、もうカレー出来たみたいです」
「そうか、長々喋りすぎたな。じゃあ、また」
「またそのうち」
そう言って電話を切ると、兄さんが「ご飯だぞー」とドア越しに僕を呼ぶのだった。
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レヴズとシーウェイブス