夕暮れの宇都宮市街にはチームのポスターやファンがちらほらと見受けられ、この街に多少名前が知られるようになったことへの喜びが湧き上がる。
オリオン通りをのんびり歩きながらその様子を眺めていると、見覚えのある青年が俺のポスターを覗いているのに気づいた。
(うちのファン……ではないな?誰だっけ、あの人)
赤と黒という色味は似通っているがカバンにぶら下がるグッズは明らかにうちのものでは無い。
数秒の逡巡のあと、ふと視線がかち合う。
「ホンダヒート、さん?」
あ、そうだ思い出した。この人、マツダさんのとこのチームだ。名前は、そう、確か。
「スカイアクティブズ広島」
「そうです、俺なんかのこと覚えてくれてて有り難いです」
すぐには思い出せなかったことを誤魔化したくて作り笑いで応じるが、スカイアクティブズさん本人はにこやかに応じてくれる。
「宇都宮の街じゅうにポスター貼ってあってすごいですね」
「来季からは宇都宮の子になるからね、最近頑張ってアピールさせてもらってるんですよ」
「でも良いじゃないですか、大事にされてて」
「まあね。ところでなんで宇都宮に?」
「明日レビンズさんとうちの試合がありまして、前日入りしたんですよ」
スマホで試合日程を見せてくれると、なるほど明日は宇都宮での試合となっている。会場も今日俺の試合を行ったグリスタだ。
「なるほどね」
「時間に余裕があれば見に行ったんですけど、到着時刻的に無理でして」
「広島から宇都宮って遠いもんなあ」
「そうだ、餃子食べに行こうかと思ってたんですけど、餃子通りってこのまま真っ直ぐで合ってます?」
「餃子通りってみんみんの本店あるとこでしょ?たぶん方向逆だね」
「ええ……」
「ま、これもなんかの縁だし、一緒に飲み行く?Dロックスいるけど」
Dロックスはどうしても行ってみたいバーがあるとかで、そこで待ち合わせの予定だったのだが1人くらい増えても問題無かろう。
「流石にそれは遠慮させてつかあさい」
「そっか、宇都宮楽しんでってね」
ラグビーに引き寄せられて来た縁のない街でのすれ違い、こういうのもまた面白い経験なのだろう。
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ヒートとスカイアクティブズ。
今日と明日はグリスタがラグビーデイなんだなあと気づいたので。