「分かりました、お気をつけて帰ってきてくださいね」
そう言って電話を切ると、後ろに立っていたのは小倉さんだった。
「八幡か?」
「ええ、台風で飛行機飛べなくなったんで夜行バスで帰ってくるみたいですよ」
「東京から小倉だろ?ってことははかた号か……着いた頃にはケツが4つに割れてんな」
「そうなんですか?」
私がそう答えると小倉さんは私の顔を見て「なんか嬉しそうだな」と呟く。
「……しばらく顔見てませんからね」
USスチールとの合併の話が持ち上がってから、八幡さんは随分と多忙な日々を送っていた。
北九州に帰ってきても仕事せずに休養に勤めていたから尚更顔を合わせる機会が少なく、久しぶりに帰ってくるのをどこか心待ちにしていた気は確かにしている。
「……あんなののどこがいいんだか」
小倉さんの言い分は分からないでもない。
あの人は根っこのところではこの会社と釜石さんしか見てないから、たぶん私個人のことはそこまで気にしてないのだろうと思うことは何度かあった。
「それでも、あの人は私の王子様のままなんですよ」
どうしようもない人だけど、その輝きがまだ脳裏に残されてたままでいる。
「戸畑、お前はあんなのにゃもったいないくらい良い女だ」
「ありがとうございます」
「だから、いざとなったら俺という個人はお前の味方になってやる」
それは小倉さんから私は向けられた純粋な行為であり、その言葉の熱はこんな肌寒い日は心地よく響いてきた。
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戸畑ちゃんと小倉さん