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コーギーとお昼寝

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バレンタインは残酷きわまりない

「ほい」
自宅に戻ってきた第一声はこのチョコの箱だった。
大きめの紙袋に3つ、ぎっしりと詰められたそれに思わず投げやりな目を向ける。
「なにこれ」
「預かり物のバレンタインチョコ」
「なんで牛久が預かってんの」
「今年のバレンタインは竜ケ崎がこっちに居ないから預かっててほしいって」
県のアンテナショップの仕事を水戸に割り振られて東京に行っていたのは事実だ。
しかしそれを牛久に渡すとは随分な根性である。
(投げ捨ててぇな……)
こんな山盛りのチョコよりも牛久がワインの一本でもくれるならそっちの方が遥かにいい。
何時の頃からか屈折し始めた隣人への恋慕はこの世にあるすべての物に殺意すら抱かせるほどの極端さに進行している。
「牛久はくれないの」
「バレンタインは女の子からチョコもらう日だろ?」
驚くほどの純真さでそう答える牛久に何も言わないでおく。
そうだ、こいつはこういう奴なのだ。
「手作りは捨てて高そうな奴だけ残しといて」
「は?!もったいないだろそれ」
「手作りなんて何が混入してるか分かったもんじゃないし、前に見ただろ?」
「ああ……あの血まみれチョコレート?」
テレビでもやたらとカラフルなチョコが紹介されるようになったころ、やけに赤黒いチョコを貰って怪しいから食べないでおいたらつくばが面白半分に材料を調べて赤い色が血液によるものだと判明した事が有る。
「あれ以来他人の手作りとか怖くて無理」
「……まあ、気持ちは分からないでもないな」
「牛久だって他人の血液入りチョコとか怖くて無理でしょ?」
「……責任もって捨てておきます」
牛久がそう言って黙々とチョコを仕分けていく。
高級チョコをひとつ抜き取って、指のささくれを毟って少量の血液を出す。
「牛久」
「うん?」
牛久の口に指ごとチョコを放り込む。
少量でいい、血を飲ませてやろうと思った。
それで自分の方を向くというならいくらでもそうしてやろうと思った。
口から指を抜いた後、何やかんやでチョコを飲むこむ。
「……なんでこうなった?」
「こうしたかったから」
ティッシュで指先を拭く。
牛久の唾液なら舐めとってもいいかなと思ったけど止めておいた。
「チョコ食べ切れないし消費手伝って」
「明日チョコにあう酒持ってくる」






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