「あー……」
体温計を仕舞った深い深いため息を吐く。
のろのろと起き上り、救急箱から取り出したのは葛根湯。
(まさか私のほうが風邪をひくとは)
薬を水で流し込み、再びのろのろとベットへ戻って行った。
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「……おかしい」
僕は頭を抱えていた。
いつもならしつこくうちにやってくる結城さんがうちへ来ないという異常事態。
この日が近づくと体調が悪くなるのに異常が全くないというおまけつきだ。
「そんなに心配なら行けばいいのに」
「いや、これはなんかの策略のような気も……」
「小山は結城に恨みでもあるの?」
「恨みと言うかトラウマと言うか重すぎる愛情と言うか……」
結城と面識のない宇都宮線にはいまいちよく分からないが本人が言うのならそうなのだろう。
これが古河ならまた少しは違っていたのだろうが。
「なら水戸線に聞けばいいんじゃない」
「 そ の 手 が あ っ た か 」
そんな訳で水戸線に電話を繋ぐと、意外な事実が判明した。
『結城さんいま風邪なんですよ、ちょっと手伝ってください』
「……ふぁっ?」
つづく