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コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

特に大したことのない休日の話

よく晴れた金曜日だった。
金曜日が休みなら映画でも見に行きませんか、という誘いを貰ってのこのことハーベストウォークにきた僕と結城さんは何故かアイスを食べていた。
シングルコーンのアイスが二個、彼の手元に並んでいる。
「とりあえずバニラと季節限定のさくらにしたんですけどどっちにします?」
「じゃあ、さくらで」
淡いピンク色のアイスは確かにこの季節らしい色をしていて、惹かれる気持ちはなんとなく分かる。
「それ、少し味見させてもらっても?」
「どうぞ」
刺さっていた匙でアイスをひと掬いして差し出すと、それを受け取らずにそのままぺろりと口に放り込んでいく。
「……なんか、塩っけありますねこれ」
ぱくりと食べてみると確かに塩っ気がある。
しかし桜の風味がしっかり香り、祝い事の席に出されるさくら茶を彷彿とさせた。
「どうぞ、」
「どうも」
バニラアイスがひとさじ差し出されると、口直しにひとくち貰った。
……うん、普通のバニラだ。
「下手にチャレンジするもんじゃないですね」
「嫌なら私食べますけど」
「結構です」
さくらアイスをもくもくと飲みこみながら、なんだか今日は妙に平穏な気がした。




特に何てことない結城小山。
某ピンク色のアイス屋のさくらアイスはマジでさくら茶の味がしました(食べた感想)

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お月見白玉

料理を作ることに理由なんて要らない。ただ食べたくなったのだ。
「どうぞ、白玉のおしるこです」
結城さんが持って来たお椀には卵大の淡い黄色の白玉が一つ。
おしるこの夜空に黄色い白玉が浮かぶお月見白玉(この可愛らしい名前は筑西くんがつけたそうだ)は十五夜らしい、結城さんのオリジナルのおやつだ。
「急にうちに来て『この間作ってくれた白玉のおしるこが食べたい』なんてびっくりしましたけどね」
「気分です」
「そうですか、まあ私は小山さんが自主的に来てくれただけで十分ですけどね」
この人は喜びのレベルが低い。
基本的に俺がいてくれればハッピーで、それ以上の幸せはないって顔をする。
それくらい好かれていることは決して不幸なことじゃないけれど、この人はこれでいいのかなんて思ったりもするのだ。
数百年来の隣人という関係を崩したくないのは、たぶん俺の方だ。
「どうです?」
「美味しいですよ?」
「それは良かった」
満月から弓張り月に変わった黄色い白玉がぼんやりとお椀の上に浮いていた。




久しぶり(と言うか七夕以来)に結城小山。隣人以上恋人未満な話。

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笹の葉さらさら

いつもなら響くはずのない足音で目が覚めた。
見慣れたマンションの一室はクーラーを効かせて少し寒いくらいだ。
「おや、ようやく起きましたか」
「……結城?」
「昨日から連絡が取れないので勝手に鍵開けて入りましたよ」
ほら麦茶飲んで、と差し出された麦茶を受け取ってとりあえず水分をとる。
昨日はずっと家の掃除やなんだを済ませていたのは覚えているが昨日の夜以降の記憶があいまいで、たぶん家の中で倒れてしまったのだろうと見当をつける。
「鍵渡しましたっけ?」
「合鍵の場所は把握してますから」
「……人には教えてないはずのに?」
「そこは、まあ、気にしたら負けですよ」
今度から合鍵の場所変えよう、と決心しつつも正直助かった。
たぶん結城が来てくれなかったら本当に危なかったかも知れない。
「ああ、上司にも連絡しておきました。家の中で熱中症起こして倒れてたと言ったら病欠扱いにしてくれるそうですよ」
「そうなんだ、ありがとう」
しかしつくづく思うけど、こうして七夕になるたびに世話を焼かれ続けているのもどうなんだろう。
ずっと向けられている過剰な好意を右から左へ受け流しているけど、これでいいんだろうか。


(……これで数百年やってきた訳だし、いいのかな)

冷たい麦茶がひんやりと染み渡る、七夕の日。


という訳で結城小山の七夕ネタ。今年も小山さんは七夕に体調を崩す。

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今はまだ遠い

落ち葉の山にアルミホイルでくるんだ芋を入れてマッチで火を灯す。
燃えていく落ち葉を眺めながら深く息を吐き出すと遠くから声がする。
「日立なにしてんの?」
珍しく誰も伴わずにやってきた水戸は随分と着込んでる。
「……落ち葉焚き」
「へえ、美味しそうじゃん。焼けたらたべていい?」
こくりと頷くとにひっと楽しげに笑う。
了承の意味も込めて頷くと「そっか、楽しみだなー」とつぶやく。
「ほかの奴も焼く?」
「おっ、なんかある?」
「ひたちなかに分けてもらったマシュマロが、台所に一袋ある」
「焼きマシュマロかあ、持ってきて」
「火傷、気を付けて」
そう言って台所に戻り、アメリカンサイズの袋に入ったマシュマロを一つ取り出す。
ついでに芋と蜜柑をいくつか取り出してアルミホイルで包む。
どうせ水戸に大半食べられてしまうだろうが気にすることじゃない。親愛なる県庁所在地様が飢えるのなんて誰も望んじゃいないのだ。
台所から焚き火の前に戻れば「遅いよ」とつぶやく。
「追加の芋持ってきた、あと焼き蜜柑用の蜜柑」
「おおっ、焼き蜜柑!」
だいぶ大きくなった焚き火に芋と蜜柑を投げ込んで、マシュマロと長い串を渡すと迷いなくマシュマロを串に刺して火に突っ込んでいく。
「水戸、」
「うん?」
「……県庁所在地就任日、おめでとう」
ぽつりとそう告げる。
茨城県成立の日である今日を祝うささやかな言葉だ。
「ありがと、まあでもそれ本当は明日なんだけどね」
「県民の日だし」
「まあね?」






県民の日おめでとう。
茨城県の成立した日ってことは水戸が県庁所在地になった日でもあるんだよなあと思いながら書いてました。

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鰻とコロッケ

梅雨明けと同時に襲い掛かって来た酷暑はじりじりと体力を削っていく。
夏バテ気味の身体を日影に横たえ、日暮れを待っていた。
「龍ヶ崎いるかー」
(牛久だ)
チャイムと同時にかけられた声に重い体を引きずりながら玄関を開ける。
「よっ」
にっと笑って見せてきたのは小さな袋。
袋の中から聞こえるばちゃばちゃという魚の飛び跳ねる音が涼しげだ。
「それ、鰻?」
「利根川までサイクリングして釣ってきたから、一緒に食おう」
「今日金曜日じゃ」
「休みとった、こー言うのはお前と食う方が楽しいしさ」
昔から牛久は天真爛漫に笑う牛久は、綺麗だ。
それが何でこうも歪んでしまったものかと思わないでもないが、それでもいいさと思ってもいるのも事実だ。
「ここで捌く訳?」
「そうだけど」
「なら、どうぞ」
牛久を自宅に招き入れる。
街の中心部から一本路地に入った古い一戸建ては、イメージと違うなどと評されることも多いがまだ住めるのに金を使って新しい家を建てるのももったいない気がしてそのままだ。
台所に立った牛久は早速まな板を引っ張り出して鰻を捌き始める。
「龍ヶ崎って意外と物持ち良いよな」
「一度愛着が湧くと捨てられない性質なんだよ」
「確かに、お前は意外に情が深いよな」
それはお前に対してだけだけどな、というツッコミは止めておいた。
手早く鰻を捌くと、魚焼きグリルに入れて焼いていく。
その間に米を炊いたり持ってきた鰻のたれを温め直したりと慣れた手つきでうな丼を準備していく。
何かあると牛久がうな丼を準備するのは県南組の間では見慣れた光景となっているが、何度見ても不思議と見飽きる事が無かった。
「鰻と米の準備整うまで少し時間あるけど、どうする?」
「……冷蔵庫ん中に冷凍のコロッケあるけど」
「ああ、最近お前のところでお勧めしてる奴な。じゃあコロッケつまみにビールでも行くか」
そうして喜々として準備を始める牛久にを見つつどれぐらい食べられるだろうかと少しだけ心配した。

****

机の上には肝吸いに白焼きとうざくとうな丼に鰻茶漬け、日本酒とビール、そしてコロッケ。
牛久が大量に用意したウナギ料理と酒はいかにもがっつりとして胃に来そうだ。
「「いただきます」」
どれから行こうかと考えていると、鰻茶漬けとうざくが目の前に出される。
「こっちの方が夏バテ気味でも食べやすいと思うぞ」
「……気付いてたのか」
「まあな」
鰻茶漬けを一口食べると、少しだけ元気が湧く。
さっぱりしたお茶漬けはするすると胃に収まっていく。
(早く夏バテを治しておかないと)



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