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コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

三千世界の果てで

流山おおたかの森駅
野田が差し出したマックスコーヒーを素直に受け取って、のどに流し込んだ。
「・・・・・・TXは、けーせー嫌い?」
「何でそう思うの」
「けーせーの目がね、たまに凍ってるから」
「あの人は」
別の人を自分から見出そうとしている、そう言おうとして筑波が止める。
その寂しい目を見ていたら言い返す気力が無くなった。
「・・・・なに?」
「東武には関係ないよ」
「そう」
「伊勢崎や京成が勝手に人のことを気にするだけだよ」
そう言うと納得したようなしていないような微妙なj表情をした。
「筑波がらみだと思った」
気づかなくてもいいことに気づいていた野田に何もいう気力も無かった。






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何者にだってなりたくなかった

宿命とか運命とか信じているわけでもないけれど、たぶんそういう物はあって好転するも暗転するもすべて最初から決まっているものだ。
たとえるのならば人生は常に夜中のレールの上を走る列車のようなもので、どこで切り替えられているのかも分からない。
(・・・・・・暑い)
押上の本社から望むスカイツリーは太陽に突き刺さりそうなほど高い。
「日光、伊勢崎は少し出かけるって」
「どこに?」
「上野」
まだ俺と兄さんは、抜け出せない場所にいる。

***

上野という場所は兄さんにとって過去の苦い記憶と繋がっている。
かつて愛した女の名前を髣髴とさせるせいだろう。
ああ、俺にはどうしようもないことにいまだに俺は苛立ちを覚える。
いったいいつになればその世界に俺は存在できるのか。








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何にもなれぬまま

僕に名前はなかった。
「・・・・・・僕は何なんだろう」
「さあ」
与えられた個室で僕らはいずれ来るはずの開業の日を待つ運命にあった。
「39号、呼ばれてるよ」
「ああ・・・・33号さん」
「いまは下野電気鉄道だよ」
「そうでしたね」
ああ、いまだに僕らには名前がない。
いつ僕らには名前がつけられるのだろうか。







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なくした物の名前

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宿命と諦めた

*東上+筑波高速度です。


池袋
交通の要衝となりつつあった池袋駅は人で混雑していた。
「・・・・・・筑波?」
「ああ、東上鉄道さん」
「そんな風に呼ばれるのは久しぶりだわ」
東武鉄道東上線になって数年、かつての名前で呼ばれるのはどうもむずがゆい。
「ああ、私の中ではまだ『東上鉄道』のままなんですねぇ。外出なんて久しいですから」
「・・・・・あなたどんな生活してるの?ああ、良ければ近くでお茶飲みませんか?」
「ええ」

***

小さな甘味処は人もあまり多くは無く、まだこの頃は物資も足りていた。
入ってすぐに店員さんが注文を取りに来て抹茶とあんみつとぜんざいを注文する。
するとすぐ2人分の抹茶が届いた。
「京成とはどう?」
「普通ですよ」
私には出来ない優しい笑みからは幸せなのだなあと思う。
自路線を持たぬまま消失する運命にある彼女は、穏やかな表情をしていた。
ある意味で死を覚悟したものの強さ、と呼べばよいのだろうか。
「・・・・・・うちのは、たまに泣いてる」
伊勢崎は人前にはほとんど見せないが、時折一人で思い出し泣きする。
なぜそれを知っているのかと言えばその後は何もおきてないような下手な芝居を打って何か甘いものをくれとこちらに来るからだ。
饅頭をひとつでごまかせるものではないと分かっていても、私は饅頭を与えた。
「なんだか、申し訳ないです」
「伊勢崎はいつものことだから。うちの姉もそういうところあるから」
「・・・・・・武蔵野鉄道さんですか」
「今は西武だけどさ、あれでも昔は貧乏に貧乏重ねてひどかったんだよ。結局離れ離れだけどさ」
「聞いてます」
お互い昔の記憶ははいて捨てるほど残っている。
有り余った過去を吐き出しあいながら、馬鹿みたいに喋った。

―2時間後
「あー・・・・・喉痛い」
「こんなに喋ったの初めてですね」
「そういえばそうだわ」
筑波とは伊勢崎との交渉の関係で少し喋っただけのような気がする。
それ以外に話したことは無い。
「そうだ、」
「はい」
「あたしさ、伊勢崎が泣いてるの筑波絡みでしか見た事が無いんだよね。
日光の開業式典のときでもこらえてんの、それで『馬っ鹿じゃないの』って行ったら『人が死ぬときと自分の結婚式以外は極力泣きたくない』とか言うの」
「・・・・・伊勢崎さんらしいですよ」
「だからね、あたしはあいつを信頼してる。馬鹿なんだもんあいつ。」
それは本当だ。
伊勢崎が泣いた分笑っていな、と言うとええとうなずいた。





いずれ消え行く定めもまた、宿命と諦めた





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