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コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

あやめは今年もきれいに咲いた

「鹿島線」
「潮来さん、お久しぶりです」
「今年もきれいに咲いたでしょう」
潮来が持ってきた一輪のあやめは一輪挿しに活けられ、休憩室の壁に飾られる。
ここ数日は毎年ながら東京からの特急列車の応対が忙しくて、ろくに花を見ていない。
「はい」
「千葉支社の方にお体を労わるようにと言って置いてください、あなたも」
いつも潮来さんは優しい。
優しい空気を放ちながらぼくらにも気を配る。
行政そのものである潮来さん自身の空気が町の空気にも影響し、結果としてこの季節に一時的に出される特急あやめ号は大盛況なわけだ。
「ああ、・・・・・・北鹿島に伝言をお願いしてもらえませんか」
「はい?」
「ぼくのことは心配しなくていいから、と。」
濃い千葉支社の面子に囲まれるぼくを気遣う兄への伝言を託す。
まあ兄には血の繋がらない兄が―鹿島臨海さんが―いるからいいのだろうけど。
「相変わらずお兄さんがお好きですねぇ」
「そりゃあ、ぼくと血を分けた兄ですから」
軽い一礼をしてぼくは部屋を出た。
後5分、もうすぐ来る総武さんの乗ったあやめ号へと向かった。









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ようこそ、300万人に逢える空へ

5月22日、とうきょうスカイツリー駅。
「うー・・・・・・眠い」
「スカイツリー、ソラマチのオープンは何時からだ」
「10時、展望台開けるのは12時から・・・・・・・・・もう寝る」
ぐったりと潰れたように眠るこの猫をたたき起こすのは少々酷だと兄さんが目で告げた。
精根尽き果てたがごとく突っ伏したスカイツリーは兄さんの机の上を占領する。
ぺちぺち、と後ろから軽くはたいてきたのはスカイツリーの公式キャラだった。
「・・・・・何」
『スカイツリーは?起きてる?』
スケッチブックに書かれた文字を読みながら、スカイツリーを無言で指差す。
『にっこうさん、きょうからよろしくおねがいしますね』
「ああ」
スカイツリーを連れ去っていく奴を見ながら開業初日を迎える。






300万人が逢える空のふもとで、お待ちしています





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スカイツリー開業まであと3日です。

押上駅
「京成本線、」
「あら、東武のにゃんこさん」
ご立派な体格のココア色のネコがこちらに話しかける。
東武スカイツリーと名づけられたスカイツリーの管理会社でもあるにゃんこさんは、どっしりと机に鎮座した。
「うちのはまだ土浦から帰ってきてないのか」
「そうみたいだねー」
「・・・・・・・ったく、この後宇都宮との打ち合わせだから迎えに来るって言ったのにな」
「東武のにゃんこさんもカリカリしないの」
「なら撫でろ」
そのにゃんこさんを撫でながらカレンダーを見やる。
開業まであともう少し、うちの沿線から何人この町を訪れる人が来るだろう。
町と東武の願いや世界一への野望などのさまざまな期待を背負って開業準備へと奔走する。






おわり




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どうしようもない

*東武さんのわちゃわちゃ話です。

*ちょっとびーえるくさいので折りたたみます。








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あなたは背負い込みすぎていたから

押上駅
「本線、いる?」
「・・・・・・・お前生きてたんだ」
「当たり前でしょ、相変わらずの汚い群馬訛りね」
「余計なお世話だ元本線めが」

***

今から70年近く前のこと。
京成の終点は押上駅で東武の終点は業平橋(現とうきょうスカイツリー)だった。
浅草・上野方面への延伸申請を何度も続けながら、紛れもなく焦っていた。
それは傍目からでも分かるほどの苛立ちと焦りだった。
『煮詰まりすぎだろお前は、ちっとは休んどけ』
『延伸できたあんたには関係ない、これであんたは弟ちゃんと養えるってとこなんでしょ』
『はあ?何言ってんのお前、おれそんなこと一言も言ってねぇぞ、日光は関係ねぇし』
『うるさい』
完全に八つ当たりだった。
もともとそんなに仲が悪いわけでもなかったが(行き先が違うし競合もしてないし)この辺の時からすでに関係悪化の燐片を見せていた。
初めて会った時からすぐに煮詰まるタイプだとは思っていたが、ここまではっきりとどやされると腹が立つ。
『・・・・・・・絶対に浅草に行ってやる』
執念のような京成の一言をわざと聞こえない振りをした。
その少し後のことだ。
当時電化が進んでいた総武線に負けぬように、東武に先を越されぬようにと焦った京成の贈賄が発覚する。
のちに京成電車疑獄事件と呼ばれたこの事件はそれ相応の反響があった。
『京成、贈賄なんかしてたのか』
『上がしてたんだよ、あたしは無関係。』
『そうか』
『・・・・・・・あたしも耄碌したね、上の動きひとつ確認できちゃいないんだ。腹立たしいぐらいだよ』
その翌年、旧本線は姿を消した。
新しい京成本線と金町線が押上駅で『旧本線が消えた』と、そういったのだ。
『路線は消滅してないのにか』
『失踪みたいなものじゃないかと』
『あくまでも個人意見だけどね☆』
『お前が新しい本線とゆう点に同業者としてある意味不安感すら感じるんだけんど』
『にゃははー、ねーちゃんは気にしてなかったのになー』
『でも東武さん、ずっとこの子の存在は謎だったんですよ』
『なにが』
『この子達は二人で一本の京成本線だったんです、どちらかがいずれ本社と本線の役割となってどちらかが消えるのだと。二人の境目が分かっていなかったんですよ。
だけれどこれでようやくはっきりしたような気がしているんです。』
『・・・・・そうかね』
その後浅草延伸許可を貰うものの地域からの反対によって挫折、京成電車が浅草へ車ではそれから30年後のことだ。

***

「死んでたとお思いで?」
「そういうもんだと思ってた」
「あほ、今でもあたしは京成押上線だよ」
指3本の強烈なでこピンを食らわされる。
ああくそ腹立つ上から目線だ。
「ここのこと全部押し付けてるのにか」
「あの子が本線だからね、いまのあたしは引退したご隠居だよ。」
「仕事押し付けすぎだろ」
「問題ないよ」
相変わらず腹立つ上から目線ではあるが、昔とどこか違う気がしてぼんやりと考えてみる。
「お前、昔より思いつめたところがなくなったな」
「背負い込みすぎてたからねぇ」
あっけらかんと笑い飛ばすと、こいつの本性はこうだったのかと気づいていつの間か二人で笑っていた。






おわり

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