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コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

ふたりでひとつ

千葉で事故が起きたという話を聞き、情報の確認のため急いで様子を見にいくことにした。
事務所で事故のことを把握して電話でうちの事務所側へ連絡すると千葉くんがいないことに気づく。
『千葉くんはどこですか?』
「実は事故の時に倒れてしまわれて、今は医務室の方にいらっしゃいます」
そう聞くとありがとうと軽く頭を下げると急いで医務室へと駆け込んだ。
消毒液の匂いに満ちた医務室の扉を開けるとベッドに横たわる千葉くんの目がこちらに向いた。 「京浜さん……?」
『倒れたって聞いたけど大丈夫?』
走り書きでそう聞くと「実は事故現場が高炉だったせいで軽い心筋梗塞みたいになっちゃって」と言いながらへらりと笑う。
事故現場は銑鉄をトーピードカーに乗せる場所だったと聞いている、場所が高炉に近いので心臓に異変が出たようだった。
『しばらく無理しないでいいからね』
「京浜さんが気にすることでもないでしょ、まあしばらくあの高炉使えないだろうけど他は生きてるし……」
『設備は修理すればすぐ動くけど肉体は案外脆弱だから無理すると他にクるわよ』
この辺の経験は渡田を見て知っている。
私たちの肉体は人間の肉体とそう変わりがないから、心臓をやられたとなると肉体にかかるダメージの大きさは計り知れないのだ。

『私たちはふたりで東日本製鉄所だもの、千葉くんが出来ない時は私がやる。それが分業だと思わない?』

千葉くんがその言葉に目を見開いた。
私たちの付き合いはまだ20年ちょっとに過ぎないけれど、今見せたへらりとした笑顔が私を心配させないために無理にした笑顔だということくらいその20年の付き合いでわかる。
『だから、しばらく無理せずしっかり身体を休めて』 「京浜さん……」
私は大丈夫だからと軽く撫でると「身体治ったら頑張りますね」と答えながら心からの笑みがこぼれ落ちていた。


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京浜と千葉。千葉の事故を聞いて。

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大きなナナちゃんの下で

久しぶりに名古屋の街中まで出たら、名古屋駅前のナナちゃん人形が作業着になっていた。
「でっか……」
見覚えのある感じの作業着ナナちゃんに思わず足が止まった。
でも、なんでナナちゃんがJFEの作業着なんだろう?
知多さんに聞くのが一番いいかな?と思ったが思い出す。
(そう言えば僕、知多さんの個人的な連絡先知らないや)
仕事上の連絡先はわかるからそっちで聞けばいいんだろうけど、微妙に仕事ではない事聞いていいのかな?と悩んでしまう。
そもそも同業種同県内の事業所ではあるけど知多さんと特別仲が良いわけでも無い。
(メールならいい、かな?)
そう思って通行の妨げにならない場所でメールしてみよう、と思って道の端に向かう。
すると『知多製造所の80周年』という文字が目に飛び込んできた。
「それでかあ」
思わず納得の声を上げると、メールの内容を変えようと決めた。
季節の挨拶はそこそこに本題はシンプルに。

『ナナちゃん人形見ました、80周年おめでとうございます』

これを機に少しは仲良くなれるかな。そんな気持ちでメールを送信した。

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名古屋と知多。ナナちゃん人形を見に行きたかった(願望)

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ただの夏の日

会社のイベントでお祭りに参加することになった。
特段こういうイベントが好きな方ではないので面倒に思うこともあるが、皆が楽しそうにしている空気をぶち壊す事をするほど幼稚ではなかった。
それにこれは四年ぶりの祭りだ。 多くの人がこの夏祭りを望み、この夜を楽しんでいる。
ぼんやりと屋台のご飯を食べながら祭りの景色を眺めて過ごしているとふいにこえがする。
「もうすぐ花火の時間ですよ」
そのとき、パンと破裂音がして光の筋が夜空へ昇っていく。
まっすぐに伸びる光の筋が一輪の光の花へ咲いていく。

(……ああ、いい花火だ)
繰り返し花火が開いては消えていくのをぼんやり眺めて、その夜をただ見つめて過ごしていた。

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直江津の話。製鉄所さんは時々地域のお祭りにもいます。

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ラグビーのある夏

「まだこの時間は暑いな」
サンゴリアスが日傘を片手にそう呟く。 試合開始を2時間前に控えた地下鉄外苑駅前はユニフォームを着た人でごった返している。
日本代表国内最終戦は秩父宮来れるメンツ全員で試合を見よう、という話になりいまここで待ち合わせている。
「夏だとまだこの時間は明るいしね」
「この時期は日が沈んでからでないとマジで命に差し障るよなあ」
代表戦が遅めの時間で良かったとつぶやくので、本当にそうだと頷いた。
「おつかれさまです」
「イーグルスか、午前中用事でもあったのか?」
「午前中ちょっと打ち合わせありまして。一度家で着替えてから来たんです」
「そりゃお疲れさんだな」
「サンゴリアスいた!」
そう声をかけてきたのはブレイブルーパスだ。
サンゴリアスを見つけると「お前面倒を俺に押し付けるのやめろよなー」と叱りつけてくる。
「いくらこの約束があるからってイベント後に挨拶行くくらいの時間的余裕あったろ?こういうの出来ないと苦労するのはお前なんだからな」
「先輩いるからいいかなーって」
「自分のことは自分でやれ!」
そうお叱りを受けるサンゴリアスは大きな身体をしゅんとさせ、それが愛らしくてふっと頬が緩んだ。
「こんばんわ」 「久しぶりだな」
同時に現れたのはダイナボアーズとブラックラムズだ。
なんで同時に?と思ったら渋谷駅で迷子になって間違えて東急線の方まで来てしまっていたのを、ブラックラムズが拾って連れてきたらしい。
ダイナボアーズ曰く、相模原の自宅じゃなくてみなとみらいの仕事場から来たから迷子になったとかなんとか。 まあ渋谷新宿は迷うよね……。
「おつかれさまでーす!」
最後に来たのはブルーシャークスだ。 こうしてちゃんと話すのは初めてだが日本代表ユニ着てるのに、何故か腕には自分ちのマスコットのぬいぐるみを抱えてる。
「清水建設江東ブルーシャークスです!到着は俺が最後ですかね?」
「そうだね、レッドドルフィンズは到着がギリギリになりそうって話だし」
今回参加を表明したメンバーはこれで全員になる。
ここまで大人数で見に行くのは初めてだがどんな風になるだろう。
「じゃあ秩父宮入ろうか」
ワールドカップ直前の代表国内最終戦という宴は始まったばかりだ。


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現時点実装済みの関東メンツわちゃわちゃ

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偶像(アイドル)の妄執

俺が子どもだった頃の一番古い記憶は、色んな人が俺のところを去っていく姿だった。
砂丘と海と神社しかない退屈な街を去っていく人の多さが確かに俺の記憶にこびりついている。
此花は『お前のせいじゃないさ』と慰めてくれ、和歌山も去ろうとする仲間を引き留めようと苦心してくれた。
でもこれは俺の問題であるのだから自分でどうにかしないといけないと言う気持ちが俺の中には確かにあったのだ。
そんな時、ふと目についたのが当時隆盛を極めていたアイドルを追っかけてあらゆるところに現れる人々だった。
美しい歌声や相貌に魅了された人々は、テレビ局の前から自宅(当時は結構そう言う情報が出てたから)まで追いかけ回してその人の全てを知ろうとしていた。
「ねえ、俺もジュリーみたいになればみんな好きになってくれるかな?」
「お前はもう既にジュリー顔負けの美少年だと思うけどねえ」
此花は呆れながらそう答える。
「違うよ、ジュリーみたいに俺がみんなを魅了する存在になればここに残ってくれるかなって」
此花は驚いたように俺の顔を見てから、少し宙を見て考えた。
そうして考えてから「そうか」とつぶやく。
「和歌山もお前のところの職員がすぐいなくなる問題については悩んでるし、うちからも今度部活をそっちに移そうか考えてるが、お前自身が努力しなくていい訳じゃないよな」
俺がこくこくと頷く。
最高に愛される俺にさえなれば、みんなここにいてくれる。
今となっては妄執のようなその思いは今も俺の中にハッキリと残っているんだ。


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鹿島の昔話。偶像と書いてアイドルと読んでください。

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