『14日にクルージング行かない?』
サンゴリアスから来た不思議な誘いに乗っかって、勢いで木更津まで来てしまった。
鞄に防寒具と共に少し高価なチョコを忍ばせて待ち合わせの港に着くとサンゴリアスが手を振っていた。
「急に誘ってごめんな」
「いや、別にいいんだけど……なんでクルージング?」
「今度サンゴリアス仕様のクルージング船が出るから船の試乗会、俺だけ木更津午後到着になっちゃったんだけど1人でクルージングってのも寂しいじゃん?」
サンゴリアスの歩みの先には黄色い塗装にサンゴリアスロゴの小型船が鎮座しており、へえと思わず感心してしまう。
「こういうコラボは初めて見たけど、船はどっちかと言うとレヴズの領域じゃない?」
「確かに。でもまあ先にコラボしたのは俺だしね」
安全のためライフジャケットを着用後、船はゆっくりを走り出す。
普段内陸住まいの俺にとってこういう海の景色は本当に新鮮な気持ちで眺められる。
「クルージングって初めて?」
「そうだね」
「ならよかった」
やがて大きな赤い橋を超えるとそこは東京湾、遠く向こう岸に見えるのは神奈川県になる。
この辺りは工場地帯なので工場見学クルージングのルートであるがサンゴリアスと一緒ならば十二分に楽しい。
しかし楽しい時間はあっという間であり、あっという間に東京湾に日が沈み始めている。
「サンゴリアス、クルージング誘ってくれてありがとうね」
鞄から持ってきていたチョコを取り出して手渡すとサンゴリアスの目が輝いた。
ちょっと小洒落た紙袋を受け取ると中身を確認してその中身に再度喜びの声を上げた。
「え、メゾンカカオのクッキーじゃん?!」
「……友チョコでメゾンカカオはお高いと思うけどね」
諸々込みで三千円は個人的にはちょっとお高めだと思うのだが、サンゴリアスは意に介さない。
「え、じゃあ強敵と書いてともと読む方の強敵チョコ?」
「友チョコから離れなよ」
「だってクッキーって友達に渡すものじゃん。本命ならチョコ・飴・マカロンあたりだし、カップケーキは親とか伴侶に送るイメージだしなあ」
日持ちを考えて選んだのだがそう言う受け取り方もあるのか、と思ってしまう。
まあこれはそういう事なのだろう。
(今はまだ友達のままでいておけって思し召し、という事にしておこうか)
「今度から気を付けるよ」
次に渡すときはサンゴリアスに飛び切りの本命チョコを用意してやろう、そう心に誓った。
it‘s Valentine‘s Day!
(だって今日はバレンタインデー!)
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ワイルドナイツとサンゴリアス。
サンゴリちゃんのお船から思いついたネタがこれでした。