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コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

海辺の季節

昼下がりのマンションの一室にぴんぽん、とチャイムが鳴る。
「おう、ひたちなか。どうしたんだぜ?」
「そちらの町役場に少し用事があったんで、そのついでに顔見ようと思ったら今日は休みだと」
「ああ……」
まあ入ってくれとひたちなかを部屋に入れる。
クーラーの効いた部屋に、窓の向こう側には大洗の海。
「いつも思うんですけど、イメージと違いますよね」
「よく言われるからもう慣れたぜ?」
ガラスポットの麦茶とグラスを渡すと、さっそく麦茶を飲み始める。
ついでに自分の分も飲み始める。
「もう7月かあ」
「1年って早いですよねえ」
「艦艇見学会にひぬまマラソン、八朔祭りに花火にって追われてるうちに夏なんてすぐに終わっちまうんだぜ……」
思わずこの先の予定にため息が漏れる。
夏の大洗は1年で一番の稼ぎ時だからあまり遊ぶ余裕もない。嬉しい悲鳴という奴だ。
「寂しいとでも?」
「いや、稼ぎ時ってのは大変だなってだけなんだぜ」
「……那珂湊も、そうでしたか」
「実の親に他人行儀な呼び方だぜ」
「顔も知りませんからね」
「伝統とはいえ淋しいもんだぜ」
「で、質問の答えは?」
「そっちか。那珂湊の夏も忙しかったと思うんだぜ。東京から俺や那珂湊行きの特急も昔はあったからこの辺りに不慣れな客の対応があったりしてな」
遠くに去った記憶は不思議と色あせることなく鮮やかに残っているもので、思い出話がつらつらと口をついた。
ひたちなかは麦茶を片手にその思い出話を黙って聞いていた。








ひたちなかと大洗。

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花の季節は

国営ひたち海浜公園は一年中何かの花が見ごろになっている。
この公園を象徴するネモフィラはもう終わりかけだが、ちょうど今は見ごろを迎えたカリフォルニアポピーが海からの風に心地よさそうに揺られている。
ひたちなかはこの季節が一等好きだった。
夏や梅雨ほど暑苦しくなく春ほど忙しくない、ちょうどこの初夏の季節が。
一年中何かと気ぜわしいひたちなかにとってはゴールデンウィーク終わりから梅雨入りまでのこの短い季節はふらふらとこの公園の敷地を散歩して過ごしていた。
賑やかな隣人たちやたくさんの仕事から一歩距離を置いて、初夏の風を浴びながらふらふらと気ままにこの広い公園の敷地を巡る。
そのささやかな楽しみは、誰にも打ち崩されることのない休日だ。
ローズガーデンにはまだつぼみを開いたばかりの真紅の薔薇。
その傍らにはハマナスが背伸びをするように勢いよく濃桜色の花を咲かせている。




この花たちが散る頃には、ひたちなかは一年で一番忙しい季節を迎える。

微かな息抜きを彩るように花たちは咲いていた。


ひたちなかの休日。

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ある朝のこと

朝、市街地は小雨模様であった。
しかし常磐神社へ向かう水戸の足取りは軽かった。
「やっぱこの時間は人が少ないね」
小雨模様と朝早いせいで人が誰もいない境内を通り抜け、その鳥居の前に軽く一礼をする。
明治に創建され、今も水戸市民から熱烈に愛されるこの神社に来るのは正月以来だった。
「義公さま、烈公さま、おはようございます」
お供え物のお饅頭(来る途中にコンビニで買った)を二つ並べてから言葉をつづけ直す。
「今度、義公さまのドラマの新シリーズが出来るそうですよ。是非無事に放送されるようにお見守りくださいね」
そうして軽く2柱の神となったかつての領主を拝み、ふいに後ろの方を向くと見慣れた幼馴染の姿。
「水戸くん、役場の人が探してたよ。わざわざ近隣にまで連絡きたんだから」
「ああ、ごめんごめん。でもよく分かったね?」
「日立くんが光圀さまゆかりの場所にいるんじゃないかって」
「……読まれ過ぎだなあ」
呆れつつも傘を開いて再び小雨の道を歩く。
遠くから梅の淡い匂いがした。


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繰り返す春

人よりも長く生きるこの身体が、この美しい季節を迎えるのは何度目だろう。
献血ルームで貰ったチョコレートバーを齧りながらバス停のベンチに座り込んでぼんやりと街並みを眺めてみる。
繰り返していく春の風は変わらないけれど人も町も流れ流れて変わっていく。
食べ終わったごみをポケットに押し込んで、見慣れた茨城交通のバスに乗り込んだ。
(ああそうだ、花を買わなくちゃ)
いま財布と携帯と家の鍵ぐらいしか持ってきていないことを思い出して、でも途中で降りるのも面倒だからと日立にメールをした。
『花を人数分用意しといてくれる?』
返事はすぐに来た。
『何本?』
『10本ぐらいあれば十分かな』
『了解』
日立からの簡潔な返事を確認してから、ちょっとニュースの確認をして携帯をしまう。
バスは町の中心部を抜けて、すっくりと伸びる木のような県庁の前に辿り着く。
見慣れた職員たちに目礼をしてエレベーターで9階へ。
9階の講堂入り口に掲げられた文字に、7度目の春を思った。





東日本大震災から7度目の春です。

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水戸さんちのカルデア


このお話はソシャゲネタ(主にFGOととうらぶ)を多く含みます。
書いている人はゲームをほとんどやらないため攻略wikiの情報ベースで書いております、ご注意ください


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