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コーギーとお昼寝

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ホワイトバレンタインは始まったばかり

ぴくぶらの「ピクブラバレンタイン2018」投稿作品
ほぼほぼBL


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記憶と現在

「シーウェイブス、ちょっといいか?」
ふらりと釜石さんがやってきて渡してきたのが一枚のメモだった。
「もしかしたらもう話を聞いたかもしれないが、新日鉄住金の全社大会に来てくれないかって」
「ああ……組み合わせ決まったんですか?」
「おう。鞘ヶ谷との交流試合だ」
「え」
思わず上ずったような声が漏れる。
鞘ヶ谷―新日鉄住金八幡ラグビー部―は、かつて自分が追いかけて来た背中そのものである。
今でこそ主戦場が異なるがやはりその名前は少しだけ特別な音として響いた。
「今年で鞘ヶ谷が90になるからそのお祝いも兼ねてのことらしい、お前さん昔あいつに憧れてたろう?」
「……60年代ラグビーを見てた側からすれば憧れない方が無理でしょう」
「まあお前さんの言い分は分からんでもないな、神戸も似たようなこと言ってたしな」
年季の入ったラグビーマニアの同業他社の名前を挙げてそう答える。
「楽しみか?」
自分の追い掛けた背中をついに追い越したときの感慨はよく覚えている。
生まれたてのまだ人の身も与えられていなかった自分にとってあの背中は特別だった。何よりも超えたい存在だった。
「初恋の人と会う心地がする」
「……さすがに初恋の人は言い過ぎじゃないか?」
「いえ、これ以外にいい言葉が出てこないんです」
九州の空はどんな色だろう。
数年ぶりに出会う彼らはどんな風になっただろう。
鞘ヶ谷、あなたはこの交流試合を楽しんでくれるだろうか?
かつて追い掛けていた人は今どんな風にこの世界を走るのだろう?
過去のあなたしか知らないと俺と、過去の俺しか知らないだろうあなたは今の俺とどういう風に戦ってくれるのか、こんなにもわくわくすることはない!






シーウェイブスと釜石。
全社大会交流戦、某サイトでネット中継されねえかな……

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秩父宮にも雪は降るので

ある意味絶景だが、ある意味では微妙な心地だ。
雪に埋もれる秩父宮のグラウンドに思わずため息が漏れる。
ポケットに突っ込んであった携帯をとれば『サンゴリアスさん?』と声がかかる。
「サンウルフズ?」
『そうですよ、そちらの雪はどうですか』
別府で合宿中の狼の耳を持つ少年の姿を思い出す。
やはり彼もこの秩父宮の様子が心配だったのだろう、まあ彼もこの秩父宮をホームとするのだから当然と言えば当然か。
「壮観なまでの雪」
『でしょうね、この調子であと何度降るのか……』
「スーパーラグビーの開幕戦前にまたもう一度降るんじゃないか?」
『開幕戦当日に降られたら最悪ですけどね』
「フランビーズなら喜びそうな気もするけどなあ」
『芝の状態がこれ以上悪化されたら困るって意味ですけど』
「ああ……それとそちらの様子は?」
『つつがなく進んでますけど?』
「そりゃあ良かった」
それじゃあ失礼しますと言って切られた電話に溜息を吐く。
当初こそ扱いかねていたあの子供も今ではずいぶん馴染んだものだと思う。
トップリーグが終わって梅の香りが漂えばスーパーラグビーの季節、そして夏が来れば再び俺たちの季節だ。
(スーパーラグビー開幕戦もどうなるかね?)
雪解け水と混ざった雪を踏みしめながらそっとその場を立ち去る。
もう少しすれば、春が来る。





サンゴリアスとサンウルフズ。

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滝凍る朝のこと

冬は寒ければ寒いほどいい。
ロングコートにぐるぐる巻きのマフラーと耳あてのついた帽子をかぶって、カメラを片手に真っ暗いトンネルを抜ける。
ぱあっと抜ける朝のひかりと共にささやかな水音が響いてくると、ちょっと残念だ。
人のいない観爆台。目の前には時を止めたかのように白く凍る袋田の滝が広がっている。
「……きょうは8割強って感じかなあ」
まだ完全凍結には物足りないけれど、天気ばかりはしょうがない。
カメラを置いて氷の凍結度と共に観光協会のひとにメールすれば、あと2~3時間後には更新されるはずだ。
まだ誰もいない早朝の滝のキンと冷たい空気と微かな水音は好きだ。
椅子に腰かけて、鞄に入れておいた奥久慈茶とおにぎりを取り出す。
湯気の立った熱いお茶は凍える身体をじんわり温めてくれる。
「きょうもよろしくね、滝さん」
僕そのものであるこの街の象徴である滝は、おうと答えるようにその言葉を吸い込んだ。







大子町と袋田の滝の話。

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雪の夜を歩く

「……随分降りましたねえ」
昼寝から目覚めると時計は夜の7時過ぎを指していた。
窓の外には白い綿のような雪が積もり、雪の止む気配は感じられない。
ぐうっとお腹の虫が鳴くので台所に降りて冷蔵庫を開くと、何もない。
作り置きの副菜が二つ三つ。ご飯やみそ汁の類もない。
「しょうがないですかね」
ぽつりとつぶやいて上着とマフラーをつけて雪の街へ買い物に出ることにした。

***

雪解け水と混ざり合って解けた雪を踏みしめながら、ふうっとこぼしたため息が白くなって夜風に溶ける。
こうも寒いと鍋が食べたくなる。鍋を食べるならば私の愛する隣人もいて欲しい。
(……まあ来ないでしょうけどね)
無理やり押しかけてしまおうかとも思ったが足が無いからやめておこう。同居人である水戸線も今日は不在だ。
下館や古河もこの雪では外に出てこないだろう。古河辺りはかつての城主さながらに雪の結晶の観測でもしていそうだ。
ああ、こう寒い日に一人というのは心がざわめく。





結城さん雪の日の話。

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