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コーギーとお昼寝

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世界の日差しが落ちる頃9

雨に濡れたファインティングブルをうちに連れて帰り、風呂に突っ込んでから温かな紅茶を淹れた。
紅茶はいつも姐さんに淹れさせられているからもう慣れている。
「砂糖要るか?」
「子供じゃあるまいし、平気です」
「そか」
無糖のセイロンティーをマグカップになみなみと出してやればそれに口をつけていく。
ついでにお茶菓子も出してやってファインティングブルが口を開くのを待った。
そのセイロンティーが空になった頃、ゆっくりと口を開いた。
「親を、殺したいと思った事はありますか」
しんと静まり返った目がこちらに刺さってくる。
きっと今はどんな綺麗事も聞きたくない事は考えなくても分かった。
俺がそうであったように、今ここに綺麗ごとは要らない。
「……無いというたら嘘になるやろうな」
親の都合で生まれて親の都合で死ぬ。
その宿命から逃れることはずっと無理なのだろう。
企業にとってスポーツ事業は金食い虫で、独立したってそこにあるのは貧乏だけだ。
神戸を離れて九州で生きる彼女や、育ての親によって生まれた時からの色を奪われた彼や、三陸で貧乏暮らししながらもラグビーを続けるあいつのように。
「俺は、愛されてなかったんですか」
「わからん」
それは分からなかった。
姐さんが兄弟を愛していなかったのか、その答えは今も俺は分からない。
「でも、少なくとも俺はお前を愛しとるよ」

親愛なる神戸ダービー。俺の可愛い後輩。
いったい俺がお前を愛さない理由なんてどこにあるというのだろう。

「愛してるならどうしてこんな残酷なことが出来るんですか」
それはこっちが聞きたい。

****

しばらくファインティングブルはうちに滞在し、ボールを磨いたり走り込みをしながら過ごしていた。
それから数日して、福岡から客人がひとり来た。
「おう、久しぶりやなあ」
「……ご無沙汰しとっとです」
福岡サニックスブルースと名を変えた福岡からの客人は名物の辛子明太子片手にうちへ来た。
「話ばさせてくれんとですか」
「おう、ええで」
リビングで顔を合わせた二人は穏やかに笑いあい、和やかに過ごしていた。
それを遠くから見守りながら、俺はただこの世の残酷さを、呪った。


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