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コーギーとお昼寝

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世界の日差しが落ちる頃7

2007年1月13日。
前日から晴れ渡った神戸の空の下で、彼はぽつんとその芝の上に立ち尽くしていた。
この敗北で決定した未来に魂が抜けたような顔で立ち尽くす神戸の後輩にかけるべき言葉が見つからなかった。
「……彼、あなたのところの後輩でしょう?」
ジュビロが俺にそう声をかけてくるが、俺にはいかんともしがたい。
「俺が何言うたかて今は聞こえんやろ……せめて俺はあいつの前でカッコよく勝ってやることしか出来んわ」
降格の決まった後輩に、励ましのトライを見せてやることだけが今の俺の脳裏にあるたった一つのことだった。

****

それからしばらくして、3月も終わりの頃にふらりとファインティングブルが訪ねてきた。
片手には桜餅とお茶を携えていた。
「花見行きませんか」
「どこまで?」
「別にどこでも、月ヶ瀬まで行っても良いですけど」
「……わざわざ奈良まで行くのもアレやし夙川の河川敷でええか」
「構いませんよ」
その流れのまま阪神電車で夙川の河川敷へ向かうことにした。
あの川の辺りは桜の綺麗なところで、うちの姐さんと親交のある女友達らと何度か遊びに行っていたことを思い出す。
川沿いの桜の道の途中に腰を下ろせば小春日和の川風と太陽が静かに降り注いでいた。
「煙草ええか?」
「どうぞ」
煙草に火を灯し、ほんのりと苦い煙を飲み干した。
「で、桜の木の下まで呼び出してのご用件は?」
「特に大したことやないですよ。ただ、桜を見とぉなっただけです」
「そうかい」
さすがにあの最終戦から二か月半も過ぎたおかげか少しは冷静になったらしい。
この後輩のことだ、再来年の今頃にはライナーズと三人で祝い酒でも飲むことになるに違いない。
「……来年は桜の下で祝い酒飲みましょう」
「そん時はお前が酒用意せえよ」
冗談交じりにそんな約束を交わしたのだけれど、その約束はふいに吹いた桜吹雪に流されていった。

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