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コーギーとお昼寝

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世界の日差しが落ちる頃5

2003年9月13日の晴天を、今でもよく思い出す。
雲一つない晴天、国立の青い芝生の匂い、期待に沸き上がる観客席。
観客席の片隅には翌日試合の癖に見に来た後輩や仲間達の姿が遠目に見えた。
「いい晴天ですねえ」
「ホントやなあ、」
サントリーサンゴリアスという名を新たに掲げた後輩は晴れ渡る空を見て穏やかに笑った。
震災からの立ち直りや鉄鋼業界再編に伴う多忙に追われている間に世界はずいぶんと変わってしまった。
世界のラグビーはプロ化へと舵を切り、日本もその波に乗り遅れるなと言わんばかりに新たな枠組みを作ることになる。
トップリーグと名付けられた新たなプロリーグの始まりの笛を任されたのは俺とサンゴリアスであった。
まだ20年ちょっとの若いチームの瞳はどこまでも青臭い希望に満ちていた。
「太田の野武士とやりたかったんと違うか?」
「新リーグの開幕戦を任されただけで十分名誉な事でしょう?」
「まあな」

そして、国立の芝生に開幕のホイッスルが響いた。

****

「是政のサンゴリアスに押され過ぎです」
試合終わりの心地よい疲労感を引きずりながら帰り道を賑やかに歩く中で『お祝いだからみんなで飲みましょうよ』と言うサンゴリアスの提案に全員が同意し、飲み会に盛り上がる他の奴らよりも一歩後ろを行く俺に対して言う台詞としては辛らつだ。
「後半然全然とれんかったしなあ」
「年寄りだからってボケるにはまだ早いですよ」
「まだボケとらんわ」
「……あれがつぁーらんとは思わんちゃらんね」
ぽつりと後ろからことばがこぼされる。
そこにはファインティングブルとあまり変わらないぐらいの体格の青年がいた。
「つぁーらん、って言うのは?」
「悪い試合ではなかったっち事です、少なくともおいはだいぶん勉強になったとですよ」
「そらおおきにな。で、どちらさんやったっけ」
「福岡サニックスボムズっち言います」
「あーそういやなんか香椎(九州電力)からよろしく言われたわ、九州は一人しかおらんから面倒見てくれって」
ポケットから携帯を引っぱり出して証拠のメールを見せてやれば「香椎さん何しとっと……」と呆れ気味に溜息を吐いた。
いつの時代も先輩は後輩が可愛いもので、まして九州の長兄たる香椎ならばなおさらだ。
九州連中では最年少だとも言っていたから余計に気にかかるのだろう。
「おう、やっぱ後輩が可愛いんやろうな。この中の連中やとラガッツとファインティングブルが年代的に近いんとちゃうか?」
「ボムズさんって創部いつですか?」
「今年で9年になります」
「まだ創部から10年も経ってないんか?!そら九州連中がゴリゴリに可愛がるわ!」
「僕より年下とかそれほんまですのん?!」
「こげなことで嘘こいてもしょうもないとですよ」
「……ファインティングブル、お前面倒見てやったれや。年近いやろ」
「10つは離れとるわ!」

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