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コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

君と話がしたいのだ

いい加減有休を使え、と親に言われたので有休を取ることにした。
そうは言っても日曜日には釜石での試合があったからのんびり休む気にもなれず、金曜日のお昼から一日かけて向かうことにした。
浦安の家から東京に出て、新幹線で仙台へ。
軽自動車を借りて国道4号線沿いにあったあの場所を探しに行くことにした。
「……久しぶりですね」
あの場所を訪ねるのはいつ以来だろうか、もう15年?以上来ていないだろう。
やがて入力した住所の近くにたどり着くとそこはグラウンドからずいぶんと様変わりしていた。
「もう会社のグラウンドじゃないんですね」
かつてそこはNTT東北グラウンドと呼ばれ、在りし日には日本代表もいた場所であった。
当たり前だがグラウンドをグラウンドのまま遊ばせておくには月日が経ちすぎた。
仙台の駅前も4号線沿いの道もずいぶん変わってしまった。
バーンズがーNTT東北ラグビー部がー今の仙台を見たらどう思うだろう?
プロ野球チームが出来、新しい地下鉄ができ、震災やコロナでこの辺りも変わってしまった。
自分や身内もずいぶん変わってしまったし、もしここに彼がいたらどういう目で仙台を見つめ、語るだろう?
けれどこの町にもう彼はいないのだ。

「こういう時にいてくれればおすすめのお店の一つでも聞けたんですけどね」

ぽつりとこぼれたどうしようもない文句は風に流される。
東北の春は東京より少しのんびりしていて、まだ春風と呼ぶには冷たい。
ぐぐうっ、とお腹が鳴って体が空腹を叫びだす。
そういえばまだ宿も取っていなかったし近くのお店に入って昼食にしよう。
夕方には仙台を出て釜石入りするから少し余裕もあるし、ちょっといい牛タンでも食べようか、
「泊めてもらうなら仙台土産も買っておいた方がいいですかね?」
もう君はいないけれどいつか君と再会する日のために、話すことを一つでも増やしておこうじゃないか。



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ディーロックスと仙台ぶらり旅。
いつか言及しておきたかった要素を今日のうちに触れておく。

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鵜住居の散歩道

「ここから海って見えんの?」
シャトルズがつまらなさそうにそう呟いた。
地図で見れば海からほど近いこのスタジアムだが海とは方向が微妙にずれており、川は見えるが海が見えない。
「スタジアムからは見えないな」
「駅前も海全然見えないじゃんね。
せっかくおうじょうこいて海の近くに来たでな、海見たかったじゃんね」
地図で見ると駅の中心部もスタジアムも海が近いので海が見えるイメージがあったのだろう。
シャトルズの住む刈谷は愛知の内陸のほうだったはずだし、気持ちはわかる。
「少し行けば見えるところがあるぞ。行くか?」
「行こまいか」
これは確か『行こうよ』という意味だったな。名古屋の製鉄所さんに教わった記憶がある。

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スタジアムを駅とは反対方向に進んでいくと坂道になる。
坂道のてっぺんにたどり着くと水門があり、上が通れるようになっているのだ。
「海や……」
「今目前にあるのが大槌湾、あれが大槌のひょうたん島だな」
海辺に育った身としては冬の海に余り感動はないが、みんな不思議と海が好きらしい。
もちろん海が嫌いなわけではないしあの日のことには自分なりに折り合いもつけてる。
(ま、喜んでくれるんならええか)
「海もええが、反対側もいいぞ」
晩冬の日をきらめかせた鵜住居川の向こう側に大きく翼を広げたようにスタジアムが立つ。
あれが自分の誇りなのだ。
「……いいスタジアムじゃんね、海も川も山も全部あって駅も近い」
シャトルズからふっとこぼれた言葉と笑みに返すことは一つ。



「そりゃあここは自慢のうちだからな!」

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シーウェイブスとシャトルズ。
はじめてうのスタ行ってきましたがやっぱ空が広くていいですね。

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温泉は負け試合の穴埋めになるのか

「もう一泊予約しとけばよかったかなあ」
試合後の疲れた体でブレイブルーパス先輩がそんなことを言う。
「ならうち泊まります?」
「うちって大分にも家持ってんの?」
「親の別荘ですけどこっちで試合ある時は自由に使っていいって言ってもらってるんで」
合鍵を見せつつそうこう会えると「金持ちじゃん……」と微妙に引かれた。
企業なんだしそれぐらい持っててもおかしくないのでは?という気がする。
「でも飛行機取り直すの面倒だしいいや、帰ったら反省会しないと」
そういって思い切り体を起こす。
よっほど後半怒涛の追い上げをしても勝ちきれなかったのが悔しいのだろう。
(まーうちも監督が鬼のように怒ってるみたいだったしなあ)
たぶん月曜日はめちゃくちゃ怒られるだろうなあ、と遠い目になる。

「次大分でやるときは圧勝してやるから、そん時はイーグルスの別荘の温泉浸かるかな」

そんな風に不敵に笑いながら答えてくる。
「未来で楽しみにしてますね」


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イーグルスとブレイブルーパス。

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チョコレート忘れた

※サンゴリアスとワイルドナイツが付き合ってる世界線

カレンダーを見て「あ」とつぶやいた時にはもう遅かった。
「……バレンタインチョコのこと忘れてた」
毎年付き合いのあるメンツにウィスキーボンボンとかお酒に合うチョコを作って送っていたのに、今年はそれをきれいさっぱり忘れていた。
ブレイブルーパス先輩なんかは気にしないだろうけど、なあ……。
脳内で青いしっぽ毛を垂らした熊谷の男がふてくされてるのを想像して厄介な気分になる。
何より今日は平日で仕事があり、チョコなんて作る余裕もない。
いやまあ根本的にバレンタインのこと忘れててくれるとありがたいのだが、無理だろうなという気もする。
あいつにとってはずっと好きだった奴と過ごす初めてのバレンタインなのだ。
男でもこいつならいいかなあというふんわりした気持ちで付き合うことを承諾した俺とは違うのである。
グダグダ考えながらスーツに着替え、朝ごはんのおにぎりをレンジで解凍していたそのとき。
『きょうの昼あたり日比谷のほう来れたりする?』
ワイルドナイツ本人からのショートメッセージだった。
外回りの予定を確認してから『仕事終わりならいけると思う』と返す。
『わかった、夕飯一緒に食おう』
それまでにチョコ買うしかないかなあ、とぼんやり考えた。

****

午後7時、混雑した電車を降りて待ち合わせの改札を目指す。
何故かこういう日に限って仕事が立て込んでしまうのはなぜだろうと心底思う。チョコどころか昼飯もろくろく食う余裕がなかった。
改札を抜けて目的の人物を目で探そうとすると「おつかれ」と声がかかった。
「ワイルドナイツ」
「東京ってどこの駅も混んでるよね、うちわ祭りの熊谷駅前よりひどい」
「ならなんでお前は一発で俺が分かるんだよ」
「好きだから」
付き合いだしてからワイルドナイツには恥じらいが消えた、素面でこういうこと言えるのはある意味すごいと思う。
「飯屋どこに行くんだ?」
「ドイツ料理、一番上からビールが美味しいって聞いたから」
「お前相変わらずお兄さんたちに辛辣だな」
「バレンタインの特別ディナー予約してあるからサンゴリアスがあんまり遅くならなくてよかった」
表情はいつも通りなのにどこか声が弾んでいて浮かれてるのがもう声色でわかる。
その様子を見てるとバレンタインを忘れてた罪悪感が心の突き刺さってきて、これもう俺がケツ差し出す覚悟したほうがいいかもなあ……などと思ってしまうのだった。


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バレンタインのサンゴリアスとワイルドナイツ。
いつも付き合ってないクソデカ情愛ばっかり書いてるのでたまにはラブ寄りのやつを。
そしてバレンタイン遅れてしまってすいませんでした。

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小さい夢を見る

「24-25年シーズンから新規加入チームの募集かあ」
なんとなく開いたスポーツ新聞の片隅の記事に目が留まって、小さくため息が漏れた。
二人の後輩を立て続けになくしたこの福岡の地にまたもう一人後輩が来るのだろうか?
「……ああ、でもルリーロがおるな」
なくなった二人の後輩の面影を持った瑠璃色の青年を思い出した。
あの子も確かリーグワンを目指すつもりでいたはずだし応募する気はあるだろう、聞いてみたいような悩ましい心地になる。
もしルリーロがリーグワンに来てくれたのなら。
かつてブルースやレッドスパークスにしたように、ご飯を食べながらラグビーの話ができるだろうか。
ナナイロプリズムも招いて三人でテレビを見ながらでも、二人で居酒屋で飲みながらでもいい。
ルリーロの作った果物を食べながらというのもいいかもしれない。
同じリーグで競い合いながら可愛がってきた後輩たちの不在はやっぱりさみしいのだ。
申請の締め切りは6月。
その時までにあの瑠璃色の後輩がここに来る決意を見せてくれたなら、本気であの子を迎え入れよう。



(この小さい夢を現実にしてくれな?)

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キューデンヴォルテクスのひとりごと

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