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コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

君とならやけ酒も楽しい

「ん゛あ゛ー゛!゛せっかく仕事休んで東京まで来たのにうちも君津のとこのかずさくんも負けるとか!」
鹿島が荒れ気味にそう叫ぶ。
気持ちは分かるがジョッキで机をドンドンするのはやめて欲しい。
「しょうがないだろ、勝負事は時の運だしな」
「なんかヤマハに負けたのもちょっと悔しいんだよねえ、サッカーならうちが勝てるのに!」
「別競技の話すんなよ……あとつまみ次何がいい?」
「軟骨食べたい」
「はいはい」
タブレットで手早く注文を出し、ついでに俺もレモンサワーを追加する。
かずさマジックの敗戦はやはり悔しい、悔しいのだが。
「こうやって試合の話しながら酒飲むって事自体が十分楽しいんだよな」
「それはそうだけどねえ……来年は日程ズレても俺かずさくんの応援行こうかなあ?」
「来るんなら歓迎するぞ」
今年は応援に来たメンツも多くて会って話をする楽しみを思い出せた。
「鹿島、」
「うん?」
「俺も来年はお前んとこの野球部応援いくわ」


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君津と鹿島と都市対抗

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野球の季節とラガーマン

ラガーマンにとって夏はオフシーズンなので日本代表戦を見る以外はただただ仕事をこなす季節である、いや合宿とかもあるけど。
まあ比較的余裕のある季節なので全く関係ないイベントに呼ばれる事もままある。
「……東京ドームって何回来ても迷うなあ」
都市対抗野球の応援の手伝いとして呼ばれた僕はトランペットを抱えながら、応援席を探して歩き回っていた。
「レヴズ?」
「シーウェイブスさんなんでいるんですか?!」
「旅行で東京に来てたら応援に駆り出されてな」
「応援って、相手鹿島ですよ?」
「血縁じゃあないが鹿島もいちおう日鉄だからな」
そう言われればそうだった、どうもうちの親と接点の薄い業種だと覚えられないよなあ……。
シーウェイブスさんは応援グッズにビールと牛串やモツ煮などのセット、僕の方も身内の応援グッズで揃えてるからお互い見慣れぬ服装である。
「でもこんなとこで会えて嬉しいです」
「そうだな。ああ、あとお前さんのお兄さん来てるならうちの応援団とタイミング合わんようにした方がいいぞ」
「なんかありました?」
「鹿島さんとアントラーズが来てるんだが、ジュビロの身内になんか負けないぞー!って妙な気合い入れててなあ……鹿島さんはともかくアントラーズはすぐ帰るから帰り駅で鉢合わせたら面倒そうで」
「うちの兄さんとアントラーズさんってライバルでしたしねえ、Nボックスとかやってた時期なんでだいぶ昔ですけど」
「N-BOXはホンダの車だろ?」
「あー……まあいいや。とりあえず鉢あわないようにしときます」
「じゃ、応援頑張れよ」
そう告げると反対側へと抜けていき、それを見送りながら今日は純粋に観戦を楽しんでもいいかなあと思うのだった。


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レヴズとシーウェイブスと社会人野球の話。

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旅行に行く話

「熊本行きませんか」
イーグルスが突然そう切り出したのは6月上旬の事だった。
「突然如何した?」
「秩父宮でのオールブラックス戦のチケット取れなかったんで、熊本のほうのチケット見てたんですけど思ったより席に余裕あるから先輩と一緒に見に行ったら楽しいかなあって」
「あれはな……」
大人の事情故に新国立ではなく秩父宮開催となったオールブラックス戦は激しいチケット争奪戦となり、自分たちの中にも取れなくて泣き言を零した者は多かった。
関東勢全員でチケット争奪戦に挑んだが、無事にチケットを取れたのはダイナボアーズ・サンゴリアス・Dロックスの3人だけであった。
如何でも良いがサンゴリアスは運に恵まれているところが有るよな。
「にしても熊本か、旅行も兼ねてと云う事になりそうだな」
「もちろんそのつもりですよ。前日に温泉で一泊してから試合なんてどうです?」
「試合は土曜日だから前日休みか……1日位なら有休を使っても良いかも知れないな」
「じゃあ決定で、チケット類全部僕のほうで取っていいですか?」
「ああ、自分の分ぐらいは出すから金額が分かったら教えてくれ」
そんな訳で決まった温泉旅行。
試合観戦のついでに温泉や美味しいものを楽しむのは初めての経験である。

(これが所謂スポーツツーリズムと言うやつなのだろうな)

自分の身を以てスポーツツーリズムを味わってみるのも悪くない。


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ブラックラムズとイーグルス。
熊本での試合、行きたかったねえ

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偶像は涙腺を持たない

『代わりに様子見てきてよ』という電話と一緒に電子マネーを送金されたので、休日だというのに車を走らせている。
目的地は鹿島の暮らす社宅の一室。
(此花も甘いよなあ……あいつがミスったからってどん底に落ち込むタイプには見えねえけど)
鹿島が昨日大きな事故を起こして落ち込んでそう、という心配は分かるが俺と違ってすっぱり切り替えてそうな気がする。
まあ落ち込んでいないわけではないだろうし、今頃事故の原因究明に必至だろうから陣中見舞いという事にしよう。
少し前に飲みたいと言っていたスタバの新作フラペチーノを片手に事務所の扉を叩く。
「あ、君津さんご安全に。どうかなさいましたか?」
「鹿島の陣中見舞いに来たんだけど」
「今日ちょっと調子悪いらしくて自宅のほうにいるみたいです」
「わかった、あいつの家行ってみるわ」
事務所から車で10分。
社宅にある鹿島の部屋のチャイムを鳴らすとゆっくりと鹿島が現れた。
「元気そうだな」
「落ち込んでいらんないからね」
鹿島の足首には包帯が巻かれており、どうやら影響が足のほうに出てるらしい。
(災害や事故とかで設備が壊れると体に不具合出るのめんどくせえよな)
自分も身に覚えがある体の不具合にほんの少し同情しつつ陣中見舞いのフラペチーノを渡す。
「あ、これスタバの新作じゃん!ありがとね」
「それと此花が心配してたぞ、電話で代わりに俺に様子見に行ってくれって頼んできたし」
「……大丈夫だよ、今の俺はみんなに愛される最高の俺だもん」
鹿島はフラペチーノを手に笑うが、その笑顔には僅かな無理を感じた。
昔の自分は愛されていなかったとでも言うようなニュアンスに違和感を抱きつつも、そこを突っ込むのは無粋なように思えてあえて口にはしなかった。
「しばらくは事務所行くのもしんどいから連絡あるときはオンラインでお願いできる?」
「分かった、千葉にも言っとくわ」
「ごめん、俺仕事の続きあるから戻らなきゃ」
「じゃあまた今度な、足大事にしろよ」
立ち話を遮るように扉が閉まる。
確かに今日はいつもよりも気が弱っている気がするが、そこに俺が立ち入っていいのかも分からない。
車の扉を開ければまだ冷房の冷気が残っていて、話していた時間の短さを感じさせた。
自分の分にと買った檸檬のフラペチーノはやけにすっぱかった。

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君津は優しいなあ、とフラペチーノを片手に思う。
甘味の奥にレモンの酸味が効いたそれを飲みながら仕事用PCを流し見る。
(……別にこの事故で俺が死ぬなんてことはないだろうけどさ?)
幼少期から刷り込まれた愛されないという不安と恐怖はこういう時になると首をもたげてくる。
胸の奥に秘かに残る不安と恐怖と愛されるための努力で埋めてきたけど、こういう時はどうも駄目だ。
「心底愛されてみたいなあ」
そんな独り言は梅雨の晴れ間に空に吸われていった。


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君津と鹿島の話。

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さよなら銀河鉄道

もう夜だというのに遠くから汽笛の音がした。
「何の音だ?」
「SL銀河じゃないですか?きょうラストランらしいですよ」
従業員が何度か見たことのある観光列車の名前を挙げた。
確かにSLは時折見かけていたが今日が最後なのだと言われるとちょっと寂しく思える。
「SLがなくなったと思ったら最近は観光用で持て囃されて、時代の変化の速さにびっくりするな」
「釜石さんはSLしかない時代からここにいる訳ですもんね」
「物の移り変わりは早いな。
ただ、同時に不便だと言って捨てたもんをまた拾い上げたりするから人間ってのは不思議だよな」
一度は主役の座から降ろされたSLが観光用と言う名目で復活し、またここを去っていく。
それは人間のエゴであるがそのエゴによって生まれて生かされているのも事実。
「その拾い上げる行為もまた愛ってやつだと思いますよ」
思い返せば自分もまた人間の愛で瀕死の淵から拾い上げられ、こうして生きてきた身の上だ。
それを愛と呼ぶのなら自分は確かに愛に生かされている。
「また、そのうちここで汽笛が聞ける日が来るのかもなあ」



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釜石おじじとSL銀河ラストランの話。

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