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コーギーとお昼寝

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空を知らない子どもと大人


牛牧衣織@okina_sosaku さんちのスバルくんとプリンスくんと此花ネキのお話。



「ったくなんだよ、この荷物の山……ホントにここにあるんだろうな?」
埃臭い物置はあっちこっちにものが散乱し、最近のものも戦前のものもごちゃごちゃに投げ込まれていた。
私に探し物の手伝いを言い出した総務の男は別の物置部屋に行ってしまったし、ほんとどうすんだよこれ。部屋出たらうがいしよう。喉やられるわこんなん。
がつんと足元が何か固いものとぶつかる。
古い木箱にうっすらと刻まれた文字は明らかに住友のものではなく、被ったほこりを手で拭うと懐かしい名前が二つ並んでいた。

空を知らない子どもと大人

小春日和の新大阪駅ホームで妙にキラキラしいイケメン二人がこちらに手を振ってきた。
「お久しぶりです、住金さん」
「おひさっすー」
「わざわざ大阪くんだりまで悪いな。スバル、プリンス」
「俺はまあ割と暇なんでいいんすけどねー」
陽気なプリンスに対しスバルの方はどうにも不機嫌だ。
プリンスの方はわざわざ本来より早い新幹線に乗って来てもらったのでそれもあるのだろう。
「これ、群馬土産の温泉饅頭と入浴剤です」
「ありがとう、気が利くな。プリンスは?」
「えっ?」
「……期待したあたしが馬鹿だった、まあいいや行くよ」

****

大阪支社の一番小さな会議室の机に木箱が二つならんでいる。
どちらも住友の井桁ではなく中島飛行機と立川飛行機の焼き印の入ったものだ。
「へー、これが昔のオヤジの私物……」
「そ。プリンスの方は立川にこれ押し付けといてくれ。要らないって言われても人のもんだから捨てにくいし困んだよ。スバルの方はどこ連絡したら出るのかとんと見当つかねーから後で適当に連絡つけて渡しといてくれない?
重工の方はちゃんと引き取るっていうから着払いで送り付けたけどお前らのオヤジがなあ……」
「俺連絡とれますよ?」
「プリンス連絡とれんの?」
「……俺が引き取るんで大丈夫です」
スバルが威圧感のある低い声でそう告げてくる。
いつもとだいぶ違うトーンなので若干ビビるが本人が言うならいいんだろう。
「あ、そうだ。中身確認していいっすか?」
「つってもたぶん大したもんじゃないぞ?」
プリンスが立川のほうの木箱のふたを開ける。
古い着物や作業着が5枚ほど、そして奥の方から出てきたのは飛行機に関する書籍や設計図だ。
「なんか専門店とか持ち込んだら高くつきそう……」
「いや持ち込むなよ、一応お前の父親のもんなんだし。スバルの方も確認しといたほうがいいぞ?カビとか生えてたらアレだし」
「……じゃ、そうします」
そうしてもう一つの木箱のふたが開く。
古い作業着と着替えが1組づつ、そして手帳と万年筆に鉛筆と消しゴムの入った首から下げる袋が一つ。
「あ、この鉛筆入れあたしがやった奴だ」
「そうなんですか?」
「鉛筆をあんまり頻繁になくすから鉛筆買い直すの面倒だしもったいねーから首から下げとけって押し付けたんだよ、重工と立川にも押し付けたから覚えてる。」
鉛筆入れは古い木綿の手ぬぐいを袋状にし、そこに首から下げる紐をつけた簡素なものだ。
その中に鉛筆だの消しゴムだのを入れておいたのだが紛失率が下がるついでに実用的だったのでスルメとか紙切れとかも突っ込んでいた記憶がある。
「想像したらすげーシュールなんすけどそれ」
「いま思えばな」
色々思うところはあるのだが、一つの目標に向けて何かをこなしていくという楽しさは確かにあの頃は存在していた。全員方向性は違えどモノ作りが好きだったのだ。
(まあ作っていたモノの事とか、その後の事とか考えると一概に明るい事言えねーけどさ)
「にしても、なんでこんなのがココにあんすか?」



「……お前らのオヤジと一緒に飛行機作ってたからだよ」

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