忍者ブログ

コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

結城さんが遊びに来たので

唐突に結城さんが福井に来た。
たまたま駅のほうに用事があって立ち寄らなければ絶対に把握していなかったことだった。
「……事前に連絡していただければ案内したのに」
「今回は独りで気楽に回りたかったんですよ。いつもこっちに来るたびに車出して貰ってますし、色々気を使わせるのも気が引けましたから」
案内所のカフェでコーヒーを飲みながら結城さんがそんな事を言う。
私は別に無理をしているつもりは無かったし、結城さんが来てくれるなら大歓迎だったから車ぐらいいくらでも出した。
「ちなみにどこに行くんですか?」
「永平寺と東尋坊、あと福井城址と養浩館に。いつも仕事で来てるから意外にちゃんと見れてないんですよね」
「ふたりに連絡入れて案内してもらいましょうか?」
「大丈夫ですよ。今回は完全に休日で来てるんです、気にしなくていいんですよ」
結城さんはまるで子供をなだめるようにそう言い返してくる。
この人の前で私はまだ子どものようだ。
(……この人に大人に見られたい)
いつから生きてるのかもよく覚えてないというような人に大人に見てもらえるのは難しい。
「コーヒー、ごちそうさまでした。そろそろバスが出るので行きますね」
空になった器を全部自分のお盆に乗せて片づけようとするその気の使いかたも好きだと思う。
「あの、結城さん」
「はい?」
「帰りの新幹線の前にもお茶しませんか、結城さんから見たこの街の印象聞いてみたいです」
「もちろん」
その時は甘いラテなんかじゃなくてブラックを飲んで見せよう。
私がほんの少しでもこの人に並ぶために。



-----
福井ちゃんと結城さん。
先日福井旅行に行ってから書きたいなあと思ってたのですが、ちょっと具合悪くしたりしてたのでちょっと遅めのネタです。

拍手

PR

ガラスペンに愛を

青いガラスペンを頂いた。
透き通った空を固めたようなガラスペンを熊本さんがプレゼントしてくれたのだ。
「で俺を巻き込むんです?」
「お礼状どうしようか決まらなくて……鯖江はどう思う?」
「好きなの贈ればいいじゃないですか、熊本さんもそれが一番お望みだと思いますけど」
「それでもせっかくなら素敵なのが良いでしょう?」
「まあそうですけどね」
ああだこうだと言いあいながら結局買ったのは絵葉書を一枚こっきり。
冬の名残りの残る街から、春の足音が響きだす街へどんな思いを込めて贈ろうか?





フォロワさんへのお祝いに書いた熊本福井のはずがただの鯖江+福井になった。

拍手

今宵は帰れない

窓の外の雪は夜になっても止む気配を見せず、思わず深いため息が漏れた。
県内各地の雪情報を見返すとどこもかしこも雪で立ち往生というひどい有様で、雪による死者の報告も出ていた。
「夜ご飯出来ましたよーっと」
「ありがとう、鯖江」
電子レンジのごはんに肉野菜炒めを乗せただけの簡素な食事ではあったが、こんな日は暖かいものが食べられるだけありがたい。
「にしてもこんなに雪降るの56豪雪以来なんでしたっけね」
「そうらしいわね、とにかく被害を最小限にってことで考えなくちゃ」
「うちの県庁所在地様はほんとにまじめで……ま、俺もいるんで仮眠とってきてくださいよ」
「鯖江が気にしなくても平気だから」
「気にするんですー」
そう言って寝袋を押し付けられると「食べ終わったら少し仮眠しておくわ」と伝えておいた。





福井と鯖江と大雪の話。

拍手

あの娘の白い傘

福井はいつも年代物の白い傘を使っている。
年代物だというのに汚れの薄いそれは薄曇りの街ではよく目立った。
「まだあの白い傘使ってるんだ」
「気に入ってるのよ」
福井はふふっと汚れなき笑みをこぼして言う。
その傘は結城さんが買ってあげたものであることを俺は知っている。
ぱっと傘を開いて玄関を出る彼女を追いかけて俺もビニール傘を開いて後ろについていく。
街は冷たい冬の雨に打たれ、泥と混ざった雪が道路をぐしゃぐしゃにしていて、ただでさえ薄曇りの空をさらに暗い色に染め上げている。
そのなかであってもあの白い傘は特別華やかに生えた。
「鯖江、」
「……そこ曲がるとこでしたっけ」
「こっちに新しいコンビニが出来たから、近道しようと思って」
細い路地裏に入ると、白い傘は砂漠に咲く花のように目立った。


(……果たして結城さんはそこまで考えて福井にこの傘をあげたのだろうか)

ぼんやりとその後ろを歩きながら考える、ある冬の夕暮れ。


鯖江と福井。

拍手

雪と柚子湯

「うん、今日はそう言うことだから……うん、お願いするね。それじゃあ」
電話を切ると買い物に出ていた福井ちゃんが帰って来ていた。
「春江、坂井には言い訳ついた?」
「いちおうね」
今日は久しぶりに福井ちゃんの家にお泊りすることにした。
夕方から降り出した雪のせいで帰るのが億劫になってしまったというのが一番大きな理由だけれど、ただ単に久しぶりに友達の家に泊まりたかったというのもあった。
こうやって泊まるのなんて何年振りだろう。
「夕食作っておくから、お風呂洗って沸かしてくれる?」
「了解」
気の置けない女友達と過ごす冬は嫌いじゃない。
「ああ、あとこれ」
そう言って渡されたのは小さなビニール袋。
隙間からは柑橘の爽やかな匂いと凹凸のある黄色くて真ん丸なもの。
「柚子?」
「今日は冬至だから柚子をね」
「……そっか、今日だっけ。うん、お風呂沸かすときにいっしょに入れておくね」
かさりと揺れるビニールから柑橘の匂い。
普段は入浴剤なんて入れないけれど、この匂いを嗅いでいたら俄然柚子湯の気分になって来た。
たまにはこういう日があったっていいよね。



福井ちゃんと春江ちゃん。
今日は冬至ですね。

拍手

バーコード

カウンター

忍者アナライズ