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コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

ある冬の朝・昼・晩

・朝
もう寺を出て半世紀以上過ぎたというのに、どうしても体が6時には目を覚ましてしまう。
永平寺領として生まれた時から雲水や典座の仕事をこなしていたせいもあり、早起きが身体に染みついて剥がれなくなっている。
寝間着を作務衣と半纏に変え、顔や歯を磨いて身支度を整える。
昨夜上志比が置いていった大根と鶏手羽の煮物と冷凍した玄米粥をレンジで温め、あとは漬物が数切れあればいい。
これが夏ならばパンに野菜を挟んで終わらせてしまうのだが冬になるとどうも暖かいものを欲してしまう。こうした横着も寺暮らしを止めたが故の特権であろう。
(……それでも粗食気味なのが治らんのは、仕方ないか)
生来の城下町である福井やもてなしを生業とするあわらとは事情が違うのである。
ほかほかの大根と鶏手羽の煮物に玄米粥に漬物に手を合わせ、五観の偈をいつものように唱えて食事をする。
汁一滴も残さずに平らげた後は食器をすすぎ、家のなかを一通りの掃き掃除をする。
「……さて、行くか」
半纏を和装コートに変えて、スニーカーを履けば朝の務めは終わりだ。

・昼
いつも昼過ぎには役場での仕事は終わるようになっている。
俗世の書類仕事には慣れたつもりでいるが、次々に出てくる新しい機械の使い方にはいつも悪戦苦闘してしまう。
鯖江などは一番に道具の使い方を覚えてしまうのでそれがうらやましく思うが、かといって教えてもらっても半分ぐらいしか理解できないため覚えることもまた修業と言い聞かせてしまうことが多い。
ようやく今の機材に慣れてきたが、また今度機械を一新するという話もあるので出来るならばあまり操作方法の変わらないものであってほしいと願うばかりである。
役場を出ると連絡用の携帯が鳴り響いた。
「勝山か、どうした?」
『おじいちゃんさあ、日本酒要らない?』
「日本酒?」
『だいぶ前に貰って来た日本酒が一升出て来たんだよ、未開封だから飲めるとは思うんだけど一升も飲み切れないし、おのくんもそんなに飲めないからいいって言うんだよねえ』
「……うちに白菜と豚肉があるから常夜鍋にするか?」
『あー、じゃあ今からそっち行っていい?』
「じゃあ鍋の準備でもしておくか」
早くも雪の降り始めた街を抜け、自宅に戻ってさっそく包丁を握る。
白菜を刻み、豚肉も食べやすい大きさに切り、そう言えば長ネギが残っていたのでついでにそれも入れてしまおう。
「ごめんくーださい!」
「どうぞー」
「もう野菜の準備出来てるんだね、さっそく作っていい?」
「おう」
土鍋にたっぷりの日本酒と作り置きの出汁(昆布・干ししいたけ・野菜の切れ端を煮込んで瓶に入れてあるのだ)をを入れて火にかけ、白菜と長ネギをたっぷり入れておく。
「そう言えばおじいちゃんいちおうお坊さんなのに常夜鍋食べていいの?」
「決まり事ってもんは時と状況によって変わるからな、仏の教えは原則で時と場合に応じて変えていくってだけ」
「おじいちゃん意外に生臭坊主だね」
「生臭じゃないわい」
野菜に半分火が通ったら豚肉を入れてもう少し。
その頃には酒精も飛んでいるだろうからゆっくり食べさせてもらおう。

・夜
仕事という仕事をこなしていたらもう10時を過ぎていた。
近隣の住職のない寺を回って積雪への備えをしていたらもう疲れ切ってしまったのである。
(……今日は軽く食べて寝よう)
湯を浴びてさっぱりした身体で台所に立つ。
乾燥うどんを湯がき、作り置きの出汁にたっぷりの乾燥野菜ときのこを入れて煮込んで醤油をひと回ししてからお湯で片栗粉を溶いて出汁に混ぜて煮立たせる。
あとは湯きりしたうどんにかけるだけだ。
人ではないが腹は減るのは不便であるが仕方ない。
この身体で今日も生きていく。




永平寺おじじの日常。

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あの娘の事は

時間はいつだって怒涛のように流れ去っていくせいで僕一人がおいていかれてばかりなのはいつものことだけれど、寂しいと言うには僕は長生きしすぎていて今更何の文句も言えないものだから、時々僕は北ノ庄がもうここにいないことにびっくりしたりするのだけれど、またその忘れ形見が美人になったものだからそれにも驚いたりするのだ。
「……福井も美人さんになったよねえ」
「さばばー何言ってるのさ、うちの本家が美人なのは今に始まったことじゃないでしょ」
「まあねえ」
小浜や美浜が何言ってんだこいつらと言う顔をしてるけど、彼らは彼らの価値観があるので強制するつもりはないがどう客観的に見ても福井は美人と呼ぶべきだろうと僕らは確信している。
「敦賀、あの二人っていつもあんな感じなん?」
「まああんな感じと言うか割と常に『うちのお姫さんは常に最高にかっこいい』的な感情はたまに見えますね」
「はー……越前はほんといまだにわからんわ」
敦賀も小浜も随分な言いようである。
北の庄譲りの初雪のように白い肌と鋭利な刃物に似た目、そして武道によって鍛えられたすらりとした体つき、あれを美人と称せずに誰を美人と称するのであろう。
まあつまり一言で要約すると、『うちの県庁所在地様は今日も最高』という話である。




ただただ福井が好きすぎる鯖江の話。

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蟹食うあの子

越前町がうちの台所でカニを茹でている。
「……妹よ、いったいなぜうちでカニを茹でている?」
「こっちのコンロの方が火力強くて使いやすいから」
別に越前町がほんとうの妹だとかそういう訳ではないのだが、ノリでそう呼び合うようになってもう10年以上過ぎたのでもはや定番のネタとなっている。
「ちなみにそのカニは俺の分もあるよな?」
「いちおうね、残りは全部みやまさんとか常滑さんに贈る予定だから」
「客人に贈るカニなら自分ちで茹でろや……」
溜息を洩らしつつもカニの茹でられるあの匂いは食欲をかき立てられる。


(……この匂いは冬って感じがするよなあ)

カニ漁が解禁され、あちこちで越前ガニの看板が立つこの季節は、嫌いじゃあない。
「味見用のカニが茹で上がった!食べよう!」
越前焼の大皿いっぱいの大きな大ぶりの越前ガニが、どんと突き出された。
「いただきます」



越前ガニの解禁日だよ!

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福井の詰め合わせ

ちょっとした小さいネタの詰め合わせです


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秋は食のクオリティー・シーズンですよ!

そもそものきっかけは、勝山からの連絡だった。
『ねえおのくん、そば粉5キロも貰ったんだけど一緒に食べない?』
『うちも大根あるから、嶺北で集まっておろしそば食べればいいんじゃない?』
『それだ』
そんな訳で、福井さんに連絡を入れて嶺北の暇な奴らで集まってそばを食べる事になったのである……。

秋は食のクオリティ・シーズンですよ!

「せっかくだからキノコの天ぷらでも作ろうかと思って準備したんだけどどう?」
久し振りにお邪魔した福井さんちの台所には、大きなざる一杯のキノコが盛られている。
おろしそばに天ぷらと言うのも悪くはないなと考えながら「いいと思いますよ」と返すと「ならよかった」と呟く。
「おっじゃましまーす」
「ああ、南越前か。越前町は?」
「なんか焼き物のイベント準備あるから無理だって。あとこれうちに余ってた秋ナスなんですけど要ります?」
「秋ナスかあ、焼いて食べようかな」
「あ、じゃあ福井さん七輪借りて良いですか?」
「外の物置小屋にあるから自由に使って」
「はーい」
そんな調子で全員が家に余っていたものを持ち寄って来るので、1時間もしたら食卓は大盛りになっていた。
武生と越前市の持って来た食用菊の酢の物、あわらと金津が持って来たブランドトマトのチーズ焼き、丸岡の持って来た厚揚げステーキ、春江の持ってきたきゅうりと茄子の糠漬け、池田の持って来たイノシシ肉をにんにく醤油で漬けたもの、そして現在湯がかれている蕎麦である。
「ねえおのくん、」
「なに?」
「食卓賑やか過ぎない?」
「秋だから色々貰うんでしょ、勝山は黙って大根おろしなよ」
「うん」
僕は黙々と大量のそばを湯がき、勝山は大根を下ろし、福井さんはキノコを天ぷらにしていく。
庭からは越前町の焼く秋ナスの匂い、食卓からはホットプレートで焼かれる厚揚げステーキとイノシシ肉の匂いが漂ってくる。
蕎麦を冷水で締めながら僕は考える。
(……これ、遅れてくるっていう鯖江もお土産持ってきたら全員明日胃もたれなのでは?)
そんな直観に襲われつつどんぶりに蕎麦と大根おろしをどさどさと乗せていくと、玄関が開いた。鯖江だ。





「遅刻してごめんねー、お土産にヤマ〇ツのスフレロール持って来たよー!」

「「「「「「嘘だろ(でしょ)?!」」」」」」



秋だから色々美味しいものあるよねっていう話。

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