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コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

クリスマスソング

まだ11月のはずなのに早くもクリスマスと正月の話をし始める気の早い街並みを歩きながら、ガシガシと頭をかく。
仕事で東京に出張に来たら同じ製鉄所なんだしいいだろと予算の都合で和歌山と海南と同じ部屋に突っ込まれ、居心地の悪い部屋を出て行ったはいいが気の早いクリスマスイルミネーションの下で一人というのもやはり浮いている気がした。
どっかで酒でも飲んで一晩やり過ごしたいが土地勘のない東京では動きようもなく、結局当てもなくふらふらと歩くしかなかった。
「うげ」
「……君津かいな」
イルミネーションの青い光を反射した金髪は昼間会った時よりも随分と切り落とされてさっぱりした君津の彼女と同じ色の瞳には驚きの色が浮かんでいた。
好きでも無いが嫌いでもない、しかし彼女の名残りを探したくなる。君津とはそういう男だった。
「なんでこんなとこに……」
「別にええやろ、というかそっちこそなんで」
「髪切ってもらってた、練習台になるとタダで切ってもらえんだよ」
「ふうん、なら金余っとんのやろ?今晩飲ませてぇや」
「断る」
「なんでぇ」
「……あんたの俺から別人を見ようとする目は嫌いだ」
それに奢る義理ねえし、と君津は言い切る。
やっぱり、この男は彼女じゃない。
彼女の残り香を帯びながらも違う存在だ。
「あと、この先の3つ目の信号右折して100メートルんとこに安くてうまいバルがあっからそこで飲んでろ。酔いつぶれたら泊めてくれるし」
そう言ってさっさとどっかへ行く君津の背中を見送る。
……ああくそ、今ちょっとグッと来た。




君津と堺のめんどくさい関係が好きです。堺の言う「彼女」についてはおいおい。

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どうにもならない初恋ロード

100年生きていたってうまく行かない事が沢山ある。
そんな沢山のことと折り合いをつけながら、人は生きて暮らして死んでいく。
なら、死なない自分はどうしたらいい?折り合いをつける事も、妥協することも出来ないまま、また100年を生きていけと言うのか。
「釜石」
「どうした?」
着物姿で都会を闊歩する後ろ姿は昔と何一つ変わらない。
近代製鉄の歴史の生き証人たる彼と逢うのは半年ぶりのはずだ。
何せ普段は北東北の海の街で暮らしているかの人と、九州の大都市のど真ん中で生きる自分とでは生活範囲が違いすぎた。
「……怒りましたか、私の事を」
釜石は微かに驚いた顔をした。
漆黒の瞳から発する光はまっすぐに此方を貫いた。
「怒ってるように見えるか」
「ええ」
「八幡は官営時代の象徴、それを観光地化することに異論はない。」
現在、八幡製鉄所は日本の近代化遺産として世界遺産登録をめざし整備が進められている。
そしてその基盤を作ったのは釜石である。
「むしろお前が分からないだけだ」
「はい?」
「その事で怒ってると思うお前が」
「怒ってるような気配がしたので」
「思い込みだ」
過去に執着なんかしていない、と嘯くようにくるりと踵を返してく。
その足は東京駅へと向けられていることは分かっていた。
まるで自分ばかりが過去への執着を忘れられずにいるような、この人への想いを引きずっているような、そんな想いだ。
「100年経とうが200年経とうが、好きなんですよ」
「んあ?」
「初恋なんですよ、釜石が」
そう告げると世界の音がふっと消えたような気がした。


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ここでキスして

ずっと、僕の世界は僕を中心に巡ってきた。
なのに一人だけ、僕とは違う場所にいる人がいる。
「で、直江津にガン無視されてうちに来たと」
「そう!酷くない?!」
「……んな事言っても直江津の事よく知らないから何とも言えねーんだけど」
君津は突っ張った見た目をしている割にこういう風に僕の話を聞いてくれるんだから意外と優しいと思う。
なんせ生粋の民間企業たるうち(住金)とは違って、官営である八幡や釜石がいるからいろいろ厳しかったんだろうと推測する。
「直江津は、自然現象以外で思い通りにならない唯一のものだよ」
ぶすくれてチョコを食べつつ僕がつぶやく。
あの灰色の瞳がじっと僕を覗くたびに欲しいなあと思うのだ。
僕や和歌山や君津の物とは違う、銀にも似た灰色の瞳が。
「恋してるみたいだな」
「……こい?」
「魚のじゃねーぞ?」
「いやそれくらいは分かるけどさ。でも、恋なの?」
「俺がそう思っただけだよ」



君津と鹿島と時々直江津

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