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コーギーとお昼寝

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世界の日差しが落ちる頃2

1994年、関西社会人ラグビーリーグ戦。
その日はリーグ6連覇と公式戦72連勝のかかる一戦であったが、主力の負傷とチーム内の内紛状態が重なり雰囲気はどこまでも最悪であった。
対戦相手はまだ創部10年と歴史が浅いながら当時頭角を示していたワールド。
漠然とした不安感を抱えたまま幕を開けた試合は相手に試合のペースを掴まれての敗北。それでも一点差のせめぎあいだっただけまあ、マシと言えなくもない。
「きょうのは、あんまり良くなかったですね」
帰り際にそう告げた男がいた。
鮮やかな深いブルーの眼をした小柄ながらもすっきりとした色男であった。
纏うユニフォームは相手カラーの色である。彼こそがワールドのラグビー部であろうと推察は出来たが、決して気分がいい訳でもないので敢えて不機嫌度を高めて返した。
「……どちらさんや」
「ワールドラグビー部」
「がきんちょの説教か」
「違う、」
その目はまっすぐで、深く、真摯であった。
「何やあのザマは!あれじゃ新日鉄釜石越えなんてできんわ!」
期待を裏切られた子供の眼差しと言葉がどこまでも耳にきつく響いた。
聞き慣れているはずの神戸訛りの発音があんなに強烈に響いたのはあの時が最初で最後だった。
「……いまに見とれ」
「は?」
日本選手権7連覇をなしたあの青年の事を思い出す。
俺よりも年下で純朴な北国の彼の事を俺は誰よりも気にしていた。
同業他社であり日本一の座を7度(その前にも一度取っているから厳密には8度だが)獲った北の鉄人を超えたい、その思いはずっと、あの13人抜きの時からずっと俺の中に在った。

「関西1の座はお前にやるが、日本一は譲らん」

目を見据えると、彼は静かに呟いた。
「俺が勝ちたかったのは、そういうあんたなんだ」
その後チーム体制はどうにか立て直され、社会人選手権・日本選手権はともに優勝を飾ることになる。
しかし不幸は続く。
東京から戻った矢先の阪神淡路大震災である。



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