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コーギーとお昼寝

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世界の日差しが落ちる頃10

ファインティングブルが去ったのは3月も終わりの日だった。
周囲への挨拶を済ませて、ぶらぶらと三宮を散歩をしていた。
「桜見にまた行けたら良かったなあ」
「そういや昔行ったもんなあ、ライナーズとレッドハリケーンとお前と俺で」
ようやく梅が見ごろになった神戸に桜の気配は遠く、もう見ることが出来ないのだと思うという事は分かっていた。
街は夕焼けのオレンジから夜のとばりへと移り変わって行く。
さっと背筋を冷たい気配がした。
「死神が来よったみたいです」
ぽつりとファインティングブルが告げた。
俺には見えない何かが見えているのだろうか。
「……こっち来ないでくださいね」
その言葉の意味は分かっていた。
日暮れにファインティングブルの身体は溶けるように消えてく。
「ああ、」
太陽が沈むように、彼はどこかへ去ったのだ。

****

『……ほんと、この世はままならん事ばかりやわ』
電話越しにライナーズが呟いた。
見慣れたグラウンドの芝生の上にはいつものように秋晴れが続いている。
『親の都合で生まれ、他所へ移され、切り捨てられる。これ以上に寂しい事はあらへん』
「ほんとにな」
『でも僕らは親のおかげで生きられるんやから皮肉なもんやね、独立採算なんてしたら速攻赤字で死んでまう』
この国においてラグビーは現在のところ人気種目とは言えないのが現状だ。
トップリーグの観客動員は1万人を超えることは皆無で、平均動員ではJリーグに負けている。
ラグビー専用スタジアムも老朽化の著しい秩父宮と現在改修中の花園ぐらいしかなく、いま建設中の釜石のスタジアムは聞いた話だとラグビー専用にはならないらしい。
ワールドカップに向けての機運醸成についても上手くいっているとは正直あまり感じられない。
「独立採算で、自分の手で必死に生きようとして、それでもダメだったら諦めつくんかな」
『……どうなんやろうな』





自分の生き死にをかけた努力すらさせてもらえずに死ぬことの非業さを知っている。

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