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コーギーとお昼寝

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君に還る日のために4

「ついに合併届け出か」
初春の東京をどこか浮かれたような心持ちで釜石が呟いた。
ようやくこれでひと心地着くはずだ。
「ええ、4月の終わりには公取委の審査も終わるはずですから6月には合併できるはずです」
あと三か月で一緒に暮らせるのだと思えば心が浮かれる。
梅雨支度を終えた頃にはもう私たちは一緒になれるのだ。
同じ新日鉄という名前を抱えて暮らせることは私にとって喜ばしい事なのだ。
「そう言えば扇島にレール製造設備譲渡の話、したんですよね?」
「おう、向こうはまだ腹を据えかねてるようだけどな」

***

その頃、日本鋼管本社。
「本当にレール製造やるんですか?」
福山は心配げに私―扇島―を見ていた。
きょうは、社内上層部が集まっての会議の日だった。
『分からないけれど、そうなるんじゃないかしら』
日本鋼管は独立独歩の民間企業だ。
だとしても国の意向は富士八幡は合併すべきで、そのために協力は惜しまないという。
国の意向に逆らう力を私たちは持っていない。
会議室の隅の椅子に腰を下ろし、会議の内容にじっと耳を澄ませる。
紛糾する会議は長々と続き、やがて一つの結論が出た。
「……本当にレール製造やるんですね」
『なんだか変な話よね』
「なにがですか?」
『国に新しい商材を押し付けられることになって増やすか増やさないか揉めるなんてそうある事じゃないんじゃない?』

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