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コーギーとお昼寝

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雨の日と名前の話

奇妙な取りあわせになってしまったな、と思わずため息が漏れそうになる。
毎年のように訪れる奥出雲の地で秋の通り雨に降られて雨宿り。
それ自体はいいのだが一緒に雨宿りする相手が問題なのだ。
隣にいた少女がちらりとこちらを見やるとチッと舌打ちを漏らす。
日立金属安来、たたら場の血を引き継ぐ日本で唯一の存在。
出雲は古来から日本有数の製鉄の地であったが、明治以降量産に不向きのたたらは高炉による近代製鉄にとってかわられ今や正当なたたら場の地を引き継ぐのは彼女ばかりとなった。
「……日立金属、「そんな風に呼ばせん」
ぎろりとした彼女の三白眼が突き刺さる。
安来訛りをきつく響かせてこちらを睨まれると妙な凄味があって思わず腰が引ける。
「すまん、ただこの雨がいつ止むかと思ってな」
「知らん」
懐に入れていた携帯が鳴ると八幡からの電話だった。
『釜石、今どこです?』
「林道で雨宿り中じゃが……」
『わかりました、迎えに行きますからそこにいてくださいね』
「ああ、それなら傘一本多めに持ってきてくれ」
『は?』
「頼むぞ」
電話を切ると安来はやはり先ほど以上に不機嫌になっていた。
「ここでずっと雨宿りしとっても仕方なかろう?」
すると安来は思い切りこっちの脛をけ飛ばされて雨の中を走り出す。
さすがに骨は折れなかったが結構痛い。
「釜石なんで蹲ってるんですか?!」
「脛蹴られた」
「……また安来ですか、あんな手負いの野良猫みたいのに構う必要ないでしょう」
「言うてもなぁ。出雲来るたびに敵意むき出しにされるのもしんどくてな」
「安来のことは佐賀関辺りに丸投げしておけばいいんですよ、ああいう手合いは構わないのが一番です」
「そうかねぇ?」
蹴られた向こう脛を引きずりつつ、雨の林道をゆらりと歩き出す。
まだ雨はやみそうにない。





日立金属安来と釜石さん。
2人の間にあったあれこれについてはいずれ。

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冬が始まるよ

11月の北海道は完全に冬だ。
窓の外にぽつぽつと降る湿った雪を見ながら布団から這いずり出て、ラジオのスイッチをつける。今日の天気予報を聞き流していると今日は一日中この天気だと告げられてため息が漏れる。
「……ほんと、寒いのはやだなあ」
生まれも育てもこの北海道室蘭と言っても寒いのが好きな訳じゃないのだ。
まだ高炉近くの40度を超える暑さの方が耐えられる。
今日の朝食はインスタントのコーンポタージュとロールパンが三つ。質素と言えば質素だが朝は食欲がないのだから仕方ない。
お湯が沸いたころにはラジオは地元のニュースから全国ニュースの時間になり、それを聞き流しながら軽く朝食を済ませる。
使い終わった食器を軽く洗い流して、歯磨きと洗顔を済ませた頃にはちょうどお出かけの時間だ。
愛用のダッフルコートにブーツを履けばいつも通りの仕事の時間。
ラジオは止めたし、戸締りも完璧だ。


「さて、行ってきますか」

今日も寒いけれど、仕事の時間だ。


室蘭の何てことない冬の朝の話。

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オリオンを繋ぐ

子どものころ、釜石さんのところにトヨタさんと2人で行ったことがある。
光害のない三陸の真っ暗い夜の海を三人で散歩したのを今でもよく覚えている。
窓の外は大都市名古屋の光の海。
「ほんと、星空みたいだなあ」
トヨタさんに頼まれて名古屋の家の風通しに来ることは何度かあったけれど、そのたびにこうして窓の外の光の美しさに溜息を吐く。
名古屋の空は墨をぶちまけたように真っ黒で星が見えない。
だけれどこの家から見る名古屋の町の光は、子どもの頃に見た三陸の星々にも似た輝きがある。
指先でうっすらと光を繋いでいく。
あのビルの光が北斗星、あの光が冬の大三角形、流れていく車の光はさしずめ流れ星だろうか。
じっと窓の外の光の海を見つめていると、心の奥の棘が少しだけ抜け落ちる気がした。




フォロワさんからリクエストを頂いて書いた名古屋の話。

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ハロウィンを遊ぶ

千葉君から『京浜さん今日暇なら渋谷行ってみませんか』というメールが来た。
『どうして?』
『ハロウィンで盛り上がる町を見てみたいなって』
『そうね、行ってみましょうか。ハチ公像で待ち合わせで良い?』
『了解です』
携帯をポケットに戻してゆっくりと身体をあげ、外出用のコートを引っぱり出した。

ハロウィンを遊ぶ

小雨の渋谷に集う仮装した人々の群れの中で、いつもと変わらない私服で立っている千葉君は少し目立っていた。
ひらひらっと手を振ると「こんばんわ、」と声がかかる。
今夜だけはワインレッドの瞳が血糊のようにも見えてくる。
「こういうバカ騒ぎ嫌いじゃなくて良かった」
気にしないでという風に顔を振る。
幸い池上や渡田の方もこういうバカ騒ぎは嫌いじゃない方なのだ。もちろん私も。
そういった旨をぽちぽちと携帯に打ち込んで見せると千葉君が「ならよかった」と呟いた。
お祭り騒ぎに紛れて歩いていれば、小さな子供がひらっと手を振るので私も振り返す。
≪7つまでは神のうち≫というけれど今の子も見えてたのかしら、なんて考えてしまう。
「子どものときなら、鹿島や君津呼んでたんだろうけどなあ」
『遠慮なんて要らないんじゃない?』
「そうかもしんないんですけどねえ」
他社である二人の事はあまり知らないけれど、私よりも2人の方がよっぽど年が近いのだし気にしなくてもいい気がするけれど千葉君なりに思うことがあるのかも知れなかった。
『次会った時にトリックオアトリートすればいいんじゃない?』
私がそう告げれみれば「じゃあ京浜さん、





trickOrtreat
(お菓子をくれなきゃいたずらするぞ?)



東日本製鉄所コンビがハロウィンの渋谷を歩くだけ

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あねとおとうと

『今晩鍋やるから好きな鍋つゆと具材買ってこい(すき焼きは不可)』というメールが届き、ビニール袋を片手に姉の家を訪れる。
「ねーちゃーん、いるー?」
「おう、何のつゆ持って来た?」
「とりあえずピリ辛味噌味にした、あと酒もあるよ」
「よくやった。コンロ準備してあるからつゆあっためといて野菜だけ寄越せ。全部切る」
「鍋用のカット済み野菜買った」
「お前いつの間にそんな気の使い方覚えたんだ、褒めて遣わそう」
ちゃぶ台の上にはカセットコンロと土鍋が並んでいてつゆを鍋にそそいで火をつけてから野菜と肉を放り込んでふたをする。
冷蔵庫から出てきたのは貰い物だという赤ワインのハーフボトルとコーラ。
それをグラスに半分づつ注いで手渡してくる。
「なにこれ」
「職員に教えて貰った、赤ワインとコーラ混ぜて飲むと美味いんだと」
「それつまり俺を毒見係にしてない?」
「そうとも言うな」
まあいいけどさ、と思いながら一口飲んでみる。
赤ワインのベリー系の匂いをコーラの炭酸が混じり合い、まあ不味くはないけど特別美味いとも思わない。というかワインが辛いからコーラとぶつかってるのかなこれ。
「不味くはないけど、もっと甘い赤ワインでやった方が良い。コーラ足していい?」
「了解」
そう言いつつもワインのハーフボトルが空になった頃にはいい感じに鍋が煮えてきたので、買ってきたワンカップで乾杯しながら鍋に箸を伸ばす。
ピリ辛味噌という売り文句のわりにはちょっと辛味が薄いというので七味を足し、日本酒で肉の油を洗い流し、そしてまた野菜に箸を伸ばす。
鍋と日本酒の組み合わせはいいよね。飽きない。
「最近一人鍋とかいうけど、最低2~3人はいないと鍋やってもつまんないよな」
「それは分かる。でも和歌山呼ぶと海南がついてくるから煙草吸えないしね」
「鹿島は地理的に論外だし、西宮は向こうの都合があるし、神戸は呼ぶとめんどくさいしで、結局お前と鍋するのが一番気楽なんだよなあ」
「西宮と神戸呼ぶんだ」
「前に一度女三人で飲んだら、神戸が食いもんの好き嫌い多くて選ぶのめんどくさいし西宮はちょうど葺合がいなくなってまだ間もない時期だったからきっつい酒がばがば飲んで葺合葺合って泣くしで地獄だった」
完全に死んだ目だった。
うん、まあそうなるよね気持ちは察する。
「しかも神戸って日本酒飲めないだろ?」
「あー、なんか醸造酒飲むとすぐ気持ち悪くなるとか言ってたね」
「酔っぱらった西宮が神戸に日本酒飲ませて潰した挙句気持ち悪いとか言ってベランダで吐いた」
「家のなかじゃなくて良かったね、としか言えないんだけどそれ」
「ついでに言うと翌朝も吐くから上から土かぶせてごまかした」
「すごい苦情きそう」
「それ以降あの二人と仕事以外で食事するときは酒抜きなんだよな、仕事なら飲む量セーブするからいいんだけどもうあんな大惨事やだ」
「なんかもうその話で色々理解したわ」
「結局一番気楽なのは弟って訳だ。……ぼちぼち〆にするか」
鍋に〆のうどんを入れてから再び火をつけると、食後酒にと林檎のシードルを持ってきて笑うのだった。





此花と尼崎の話。
そういえばちゃんと尼崎を出していなかったので姉と弟のぐだぐだ話を。

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