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コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

此花ネキが夜食を作るだけ

目が覚めたら、午後11時過ぎだった。
しばらく仕事がバタついていて自宅に戻って少し昼寝するつもりのはずが、疲れがたまってたのか思ったより寝すぎてしまったらしい。
「……腹減ったな」
そう言えばまだご飯を食べていなかったことを思い出して冷蔵庫を開く。
コンビニに買い出しに行くのもめんどくさく、パパッと食べて風呂で体を洗いたい。
缶ビールと一緒に入っていたのは和歌山が職員から貰ったという白菜、冷凍豚肉、この間作った鍋の残りの鳥つくね。
「こりゃ鍋だな」
そうと決まれば話は早い。
土鍋を引っぱり出し、水と粉末だしを入れて火をつける。
その間に白菜を刻んでおく。
豚肉と鳥のつくねはひっくり返したアルミ鍋の上に冷凍された豚肉とつくねを乗せ、またアルミ鍋で挟む。こうするとアルミの熱伝導で普通に解凍するよりも早く解凍される。
土鍋の水が沸いたら白菜を放り込み、半解凍の豚肉とつくねを放り込んで蓋をする。
あとは煮えるのを待つだけだ。
「……って、どっちにせよ腹は減ったまんまか。まあしょうがねえか」
とりあえず風呂でも洗って沸かしてれば鍋もいい具合に煮えてるだろう。

―15分後―
土鍋のふたを開ければ鍋はいい具合に煮えている。
小皿にポン酢をとってあつあつの白菜と豚肉をぱくりと口に放り込む。
「……うまいねえ」
片手でビールの栓を開けながら、まずはのんびりと空腹を満たすことにした。




此花ネキと白菜の常夜鍋。
夜食シリーズたぶんまたそのうち書きます。

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真夜中の焼き鳥とビール

金曜日の夜だから、という理由でちょっとお高いビールとやきとりを買って遊びに来た兄に思わず驚きの声が漏れる。
「……にっちゃん、いま何時か分かってる?」
現在の時刻は午前2時。立派な真夜中だ。
ほろ酔い気分なのだろう、英国紳士然とした銀の瞳を甘く蕩けさせて「なんじだっけ」と笑ってくる。
「お迎え呼ぼうか?」
「やだ、ひさしぶりにきょうだいみずいらずでさけのみたい」
「酔ってんじゃん」
「そう?」
「十分酔ってるよ」
ああでもこの調子じゃあ帰らなさそうだなあと諦めて家にあげることにした。
ふわりと甘辛い焼き鳥の匂いがして思わず食欲がかき立てられて、ぐうっとお腹の虫がなる。
「びーるよりやきとりのほうがいいか?」
「食べる」
やきとりの入った箱を開けて、玉ねぎと肉の刺さったやきとりを一串づつとる。
ちょうど6串入っているから夜食にはちょうどいい量だ。
「おとうとのぜんとようようとしたみらいをねがって、Cheers!」
酔ってても発音はきれいなクイーンズイングリッシュだ。
とんと軽くやきとりを重ね合わせてから、ぱくりと口にほうばる。
室蘭やきとりらしく豚の油と玉ねぎ、それとたれの甘みが口に広がり練りからしがピリッと味を引き締めてくれる。
ここ室蘭のやきとりはやきとりという名前に反して豚肉と玉ねぎが標準で(八幡に言わせれば詐欺らしい)個人的にこの味が一番なじみ深い。
「わにし」
「なに、にっちゃん」
「むこうでいじめられたらおれにいえよ、やはたにガツンといってやるから」
「今更いじめる訳ないでしょ?」
「のちのしゅしょーもおいはらったこのおれがガツンといえば!」
「大丈夫だから、ね?」
「……わかった」



そうして、兄と弟の夜は更けていく。


室蘭兄弟の話。

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雨の日と名前の話

奇妙な取りあわせになってしまったな、と思わずため息が漏れそうになる。
毎年のように訪れる奥出雲の地で秋の通り雨に降られて雨宿り。
それ自体はいいのだが一緒に雨宿りする相手が問題なのだ。
隣にいた少女がちらりとこちらを見やるとチッと舌打ちを漏らす。
日立金属安来、たたら場の血を引き継ぐ日本で唯一の存在。
出雲は古来から日本有数の製鉄の地であったが、明治以降量産に不向きのたたらは高炉による近代製鉄にとってかわられ今や正当なたたら場の地を引き継ぐのは彼女ばかりとなった。
「……日立金属、「そんな風に呼ばせん」
ぎろりとした彼女の三白眼が突き刺さる。
安来訛りをきつく響かせてこちらを睨まれると妙な凄味があって思わず腰が引ける。
「すまん、ただこの雨がいつ止むかと思ってな」
「知らん」
懐に入れていた携帯が鳴ると八幡からの電話だった。
『釜石、今どこです?』
「林道で雨宿り中じゃが……」
『わかりました、迎えに行きますからそこにいてくださいね』
「ああ、それなら傘一本多めに持ってきてくれ」
『は?』
「頼むぞ」
電話を切ると安来はやはり先ほど以上に不機嫌になっていた。
「ここでずっと雨宿りしとっても仕方なかろう?」
すると安来は思い切りこっちの脛をけ飛ばされて雨の中を走り出す。
さすがに骨は折れなかったが結構痛い。
「釜石なんで蹲ってるんですか?!」
「脛蹴られた」
「……また安来ですか、あんな手負いの野良猫みたいのに構う必要ないでしょう」
「言うてもなぁ。出雲来るたびに敵意むき出しにされるのもしんどくてな」
「安来のことは佐賀関辺りに丸投げしておけばいいんですよ、ああいう手合いは構わないのが一番です」
「そうかねぇ?」
蹴られた向こう脛を引きずりつつ、雨の林道をゆらりと歩き出す。
まだ雨はやみそうにない。





日立金属安来と釜石さん。
2人の間にあったあれこれについてはいずれ。

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冬が始まるよ

11月の北海道は完全に冬だ。
窓の外にぽつぽつと降る湿った雪を見ながら布団から這いずり出て、ラジオのスイッチをつける。今日の天気予報を聞き流していると今日は一日中この天気だと告げられてため息が漏れる。
「……ほんと、寒いのはやだなあ」
生まれも育てもこの北海道室蘭と言っても寒いのが好きな訳じゃないのだ。
まだ高炉近くの40度を超える暑さの方が耐えられる。
今日の朝食はインスタントのコーンポタージュとロールパンが三つ。質素と言えば質素だが朝は食欲がないのだから仕方ない。
お湯が沸いたころにはラジオは地元のニュースから全国ニュースの時間になり、それを聞き流しながら軽く朝食を済ませる。
使い終わった食器を軽く洗い流して、歯磨きと洗顔を済ませた頃にはちょうどお出かけの時間だ。
愛用のダッフルコートにブーツを履けばいつも通りの仕事の時間。
ラジオは止めたし、戸締りも完璧だ。


「さて、行ってきますか」

今日も寒いけれど、仕事の時間だ。


室蘭の何てことない冬の朝の話。

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オリオンを繋ぐ

子どものころ、釜石さんのところにトヨタさんと2人で行ったことがある。
光害のない三陸の真っ暗い夜の海を三人で散歩したのを今でもよく覚えている。
窓の外は大都市名古屋の光の海。
「ほんと、星空みたいだなあ」
トヨタさんに頼まれて名古屋の家の風通しに来ることは何度かあったけれど、そのたびにこうして窓の外の光の美しさに溜息を吐く。
名古屋の空は墨をぶちまけたように真っ黒で星が見えない。
だけれどこの家から見る名古屋の町の光は、子どもの頃に見た三陸の星々にも似た輝きがある。
指先でうっすらと光を繋いでいく。
あのビルの光が北斗星、あの光が冬の大三角形、流れていく車の光はさしずめ流れ星だろうか。
じっと窓の外の光の海を見つめていると、心の奥の棘が少しだけ抜け落ちる気がした。




フォロワさんからリクエストを頂いて書いた名古屋の話。

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