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コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

贈り物の話

釜石はけっこう地味好みである。
きょうの着物は青灰の着物に黒の角帯に雪駄で、俺からするといささか落ち着きすぎているぐらいの組み合わせだ。
「……前から思ってたんだけどさぁ、」
「うん?」
「もう少し華やかなの着てもいいんじゃない?」
ジンギスカンを食いながら釜石に尋ねると、年相応のもん着てるだけだと返される。
八幡なんかは同じ気持ちらしくちょくちょく着物や反物をプレゼントしては好みじゃないのを貰ってもなあと釜石を困らせている。
まあ八幡は釜石に似合う自分好みの着物を選んでるようなのだが、それが釜石からすると好みじゃない・若作りと言う風に映るらしく結局人に譲ったりしているようだった。
「ちったぁあいつもわしの好みを考慮してくれればなあ……これを贈ってくれた時は良かったんじゃが」
「今着てる奴?」
「おう、うちが津波でダメんなったときに夏物を贈ってくれてな。光が一緒に選んだとかでわしの好みも考慮されてた」
「あー……光はセンスいいよね。大分は無頓着なのに」
大分の妹分である光はセンスが良くていつもプレゼントやお中元にびっくりするほど好みに合った素敵なグラスやお酒なんか贈ってくれる。
よく見ると釜石の着物は無地だと思ったら白く細い線が入っていることに気付き、なるほどこれが好みなのかと納得する。粋というかなんというか。
「自分の趣味にさえ走らなきゃセンスがいいんじゃがな」
釜石のぼやきに軽い苦笑いが漏れた。





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八幡さんも楽したい

それはそれは深い溜息を一つ吐いて新聞を閉じる。
「朝からえらい深い溜息吐きはりますね、八幡さん」
「堺……あなたいっぺん殴りたいと思ったことはありますか?」
「ポスコさんの話ですか?」
「あんな恩知らずにさん付けしないでくださいヘドが出る」
しまった、韓国最大の製鉄企業に対する八幡の恨みの深さを忘れていた。
あの辺の因縁はあまり把握していないので深入りしないようにしているが、あの一年中寝惚けているような広畑が丑の刻参りをしてでも息の根を止めようとした相手なので恨みの買われ方がえぐい。
「じゃあ誰殴りたいんです?」
「中国ですよ、本当に鉄鋼減産する気あるんですかね」
その言葉になるほどと溜息を吐く。
不況に見舞われる鉄鋼業界ではその原因となっている中国による鉄鋼減産を望み続けてきた。
あの国ではあまたの製鉄所があり一度は不景気で高炉を止めたものの、今年に入ってから中国国内の景気が良くなってきたため再び生産を再開するゾンビ製鉄所が続出。
その鉄は中国国内にとどまらず世界の市場に放出されて世界の鉄の値段を下げ続けている。
「止めろ止めろとは言うても急に止まるものやないですからねえ」
「こっちは殴りたくて仕方ないですけどね」
「……高炉持ちの年長者やなくて良かった」
「今何か言いました?」
八幡に黙ってお茶を差し出せばずずっと勢いよく啜っていった。




堺の家に泊まりに来た八幡の話。
八幡とポスコの因縁はいずれ書きたい(書く機会があるのかは謎)

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拝啓、金子商店様。

拝啓、金子商店様。
梅雨入り前の暑さ厳しいこの季節をいかがお過ごしでしょうか。
私と加古川は今日も元気に過ごしており、加古川も少し背が伸びたような気がします。そのうち追い抜かされそうで怖いです。
最近はもっぱらこの身長の事で悩んでいます。
ここのところ来年11月の高炉停止で身長が縮むのではないかと戦々恐々としているせいで、洋服を買い足すときどうしても来年秋以降も着れるのかと思っては服を諦める日が続きます。
良い服を買ってもすぐ着れなくなったらもったいないですからね。
加古川は私の洋服のセンスは派手だから遠慮すると言って譲る事が出来ず、さてどうしようかと洋服箪笥の前で頭を抱える日々です。
もしあなたがいてくれたら私の洋服を代わりに着てくれたでしょうか?
そんなことをぼんやりと考える日々です。
それでは、またいずれ手紙を出します。
あなたの妹たる神戸製鋼より愛を込めて。

書き終えた手紙を封筒にしまい込み、軽くため息を吐く。
どうでもいい日々の事をこうして行き先の無い手紙を書いてはお菓子の缶に投げ込むという不毛なことをもう何度も繰り返している。
「神戸姉様」
「加古川、どうかしましたか?」
「おやつ時ですからお茶にしませんか?スコーンを焼いたんです」
「そうね」
私の可愛い年の離れた妹である加古川は山野草のごとき素朴な少女で、口の悪い小倉なんかは『何度見ても血のつながった姉妹とは思えんたい』と言うくらいだ。
木皿に盛られた出来立てのスコーンとイチゴジャムにクロテッドクリーム。そしてストレートティー。
「また少し背が伸びましたこと?」
「そうかもしれません」
「大きなこと自体は悪い事ではないわ、今のあなたは真岡や高砂に並ぶうちの主力だもの」
そう言うと気恥ずかしそうに軽く視線を逸らす。
(兄弟姉妹と言うのは本当にいいものだわ)
今度は加古川の話を手紙に書こうか、なんて思うのだった。





金子商店と神戸の話はそのうち書きます。あと加古川ちゃんちゃんと書くの初めてですね。

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大阪の桜

久しぶりの大阪の街には満開の桜が待ち受けていた。
「小倉さん」
「ひさしぶりたいね、和歌山」
時々、息抜きにこうして大阪まで行くことがある。
今や小倉から新大阪まで新幹線で2時間もあれば行く事が出来る、毎日あの偉そうな元官営の顔を見ないとならないのだからこれくらいは許容範囲だ。
自ら高炉技術を教えた和歌山は自分が大阪に行くというとこうして迎えに来る。
ついでに飯も奢ってくれるので大阪に行く和歌山に一声かけるのは食費を浮かすためなのだが本人のプライドのために黙っておく。
「飯食っとーとか」
「ううん、まだ食べてないよ。うどんでいい?」
「よか」
大阪の街をふらふらと渡り歩きながら、和歌山も随分とでかくなったものだと思う。
住友に連れてこられてすぐに半ば押し付けられるように育てた弟子もこんだけでかくなれば立派なもんだ。
『私らが求めてるのは高炉技術なんだ』
最初に出会ったとき、じっと此花はこちらを見据えて言った。
『お前が住友に馴染む気が無かろうがそれはお前の勝手だ、仕事さえ確実にこなしてくれれば何をしてもいい』
「……今思うと、よく此花もお前を俺に預ける覚悟しとったな」
「何の話?」
「昔の話」
「信頼されてたんでしょ、きっと」
そうなのだろうか、と考える。




(まあ、これも信頼なのだろうなあ)

うどん屋に入る和歌山を追いかけながらそんなことを考えていた。


小倉さんと和歌山さん習作。

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喫煙室での対談

「銘柄変えたんやな」
人から煙草と火を貰っておきながら随分な言い草だ、と思いながらブルーベリーとメンソールの味わいを呑みこんだ。
「別にいいだろ」
「まあな、煙草なんて好きなもん買えばええんやけど」
「口に合わないか」
「そんな事言うてないわ、ただえらい個性的な味の選んだなって」
堺の言い分はまあ分からないでもなかった。
たぶん八幡や釜石は嫌いなタイプの味だろうと思うし、堺は元から煙草呑みな訳じゃないからこうして時折俺からもらって呑む程度だ。
「そんなに嫌なら俺じゃなくて別の奴から貰えよ、いっつも俺から強奪しやがって」
「強奪は言い過ぎやない?」
「いっつも人から貰っておきながら毎回味の批評してくるのほんと意味分かんねーんだよ」
「……こっちから声かけんと話してくれへん君が悪い」
「そんなに話したいのか?」
「おん」
煙草を灰皿に押し付けてもみ消す。
「どうせ、お前が話したいのは俺じゃなくて四日市なんだろ」
そう吐き捨てて喫煙室を出て行った。
うっすら漂うブルーベリーの匂いを落としたい、と思いながら。



製鉄所組はみんな程度の差はあれど煙草を嗜むよ、という設定をぶち込んだ話。
恋愛要素なしなので日常ものです。
今回の話で君津と堺が吸ってるのはメビウスオプションっていう銘柄です。(どうでもいい補足)

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