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コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

秋祭りの屋台にて

いつもと違うお菓子屋さんの制服を着て店先に立つと、遠くにはおはやしの音がする。
秋晴れの土曜昼過ぎの空はすっきりと晴れ渡り、この様子なら明日も大丈夫だろうなんて考えこむ。
「シーウェイブスさん、もう12時半ですよ」
奥から出てきたお店の人に声を掛けられると、もう12時半だ。
今日は1時過ぎからジャパンXⅤの試合があるのでそれを見るつもりでいたから声をかけて貰えるのはありがたい。
「じゃあ今日はここで失礼しますね」
「いえいえ、急な欠員埋めてくださって助かりました」
バイト代のおまけにとシーウェイブスコラボシュークリームまで頂いてしまい、駄目にならないうちにと小走りで店を出る。
小走りで向かうのは製鉄所の社宅の一角、うちの親の暮らす部屋だ。
「ただいま」「おう、お帰り。お前の分もあるぞ」
釜石製鉄所その人はのんびり焼きそばを食べながらテレビを見ており、ついでに俺の分まで盛られている。
シュークリームは食後に回そうと冷蔵庫の隅に入れておき、さっそく焼きそばに手を伸ばす。
「今年もお祭りは盛況か?」
「天気いいから人出も多かったな」
「そりゃよかった、昨日の宵宮もそこそこ人出てたし今夜の宵宮も人出るといいんだがな」
釜石の秋祭りは市内の尾崎神社と釜石製鉄所山神社二つの神社が合同で行っているので、ひとつのお祭りに宵宮がふたつある。
製鉄所そのものたるこの人にとっては昨夜の尾崎神社の宵宮より、今夜行われる山神社の宵宮の方が重要度が高かったりする。
「これで今日のジャパンXVが快勝してくれれば最高の休日だな」
「どうなりますかね」
この後の試合の話に花を咲かせつつああだこうだと花を咲かせていると、もうすぐキックオフの時間になる。
テレビをつければさっそく選手たちの歌う国歌が響く。
「さて、今日はどうなるかな?」

―90分後―
テレビの前にいた製鉄所さんは、それはそれは多いに頭を抱えていた。
「……ここまでひどいスコア久しぶりに見たな」
「ですねえ」
50点以上の点差をつけての大敗にお互い深いため息が漏れる。
2019年ワールドカップを目標に強化を続けてきた日本ラグビーは、ワールドカップという目標を失ってから迷走気味だったがそれがここまで来たかと言う気持ちも正直ある。
「まあ、ブルームフォンテーンの悪夢よりはマシか」
「そこと比較します?」
日本ラグビー史上最悪の試合を引き合いに出されると何も言えなくなる。
けれど今日はあくまでジャパンXVであり、代表試合じゃない。本番は来週だ。
「来週はスカッと勝ってくれるといいんですけど」
「そうだなあ」
「……シュークリーム食べたら、気晴らしにお祭り行きましょう」
「だな」



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シーウェイブスと釜石さん。
昨日の試合のスコアはー……うん、どうしてああなったんでしょうね……。

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鮭食いねェ!

スピアーズが来るたびに色々と米を用意してる気がするが、今年は米が高いので取れたての銀河のしずくを用意しておいた。
「今年はこれだけかー」
「しょうがないだろ、米が高いのが悪い」
「値段はねえ……」
そのぶんおかずはいろいろ揃えておいたので、おかずを一品づつスピアーズの前に並べていく。
ご近所さんからいただいた漬物、自然薯のとろろとむかごの塩ゆで、ブロッコリーのくたくた煮にトマトのおひたし、無限ピーマンと焼きナス、シイタケのバター醤油焼き。
ちなみにお味噌汁はわかめとねぎだ。
「全部美味しそう!」
「とろろは掘るの大変だったんだからな?途中でめんどくさくなってへし折ったが」
「確かに自然薯は掘るの大変だって言うもんねえ。ちなみにたんぱく質は?」
「あるに決まっとるじゃろうが、ちょっと待て」
どんと目の前に出したの大きな石製のプレートに乗せられた鮭の切り身。
付け合わせ無しのシンプルな一品だが脂ののった鮭がじゅうじゅうと立ち上らせる香りだけで十分であろう。
「南部鮭の溶岩焼きじゃ」
「シャケ!ちょうど今の時期だもんねえ~。そういえばフライキーも持ってたよね」
「釜石の名産だからな。まあ他所の地域の人には岩手と鮭は結び付きにくいだろうが……」
チームマスコットには以前からしゃけのぬいぐるみを持たせてるのだが、県外から来た人にはいまいちイメージが湧きにくいらしく不思議がられる。
まあそれも含めて地域PRになると思えばいいのだろう。
「いただきます!」
そんな独り言をスルーしたスピアーズはさっそくお米に箸を伸ばすと「新米うまぁ……」ととろけたような声を上げる。
「やっぱブランド米は美味しいねえ。鮭も食ーべよ」
脂ののった南部鮭で米を喰らい、漬物でも米を喰らい、幸せそうによく食うのでもはや何も言えなくなる。
「やっぱ年一くらいで釜石遠征捻じ込めないかなあ」
「お前がこっち来るたびに米米言うから用意するの大変なんだぞ」
別に米が嫌いなわけではないが岩手の美味しいお米沢山食いたい!と言うせいで、地味に種類を揃えるのが面倒なのだ。あとで米代は払わせるし残りは自家消費に回せるからいいのだが……。
「感謝してます」
「おう」
「来年のリーグワンライジングも釜石がいいなあ」
「それならもし来年うちのチームがお前のホームで試合になったら、成田山のうなぎ奢れよ」



おまけ:溶岩プレートはどこから来たのか
シーウェイブス「溶岩プレート助かりました」
釜石「おー、と言うかわざわざ返しに来なくて良かったんだが……」
シーウェイブス「一応借り物なんで返しとくべきかと思って。というかこんなもんなんで持ってたんですか?」
釜石「……ネット通販が普及し始めた頃、翌日配送が売り文句なのを見て『本当にこんなとこまで翌日配送できるのかー?』って思って酔った勢いで買った」
シーウェイブス「酔っ払いにネット通販はダメですね」
釜石「ホントにな」

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シーウェイブスさんとスピアーズさん
リーグワンライジングの話するはずなのに何故かこうなった。

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お好み焼きと平和

「こんにちはー、」
8月の昼下がり。スカイアクティブズ兄さんはリビングで広島風お好み焼き(大阪風の混ぜ焼きではない)を焼きながら「おー」と気の抜けた返事をしてくれる。
「玄関開けといてくれて助かりました」
「今日も暑いもんなぁ」
「借りてた本どこに置けばいいですか?」
「ローテーブルのとこ置いといてー」
お好み焼きを焼くことに全神経を集中させている兄さんからの適当な答えではあるが、テレビの前のローテーブルならたぶんすぐ気づいてくれるだろう。
「そろそろじゃな」
そう呟いた後、お好み焼きを思い切り持ち上げて全く崩すことなくひっくり返した。
「そう言えば他のマツダの人達はどこ行ったんですか?」
「平和記念公園の方だな、式典はもう終わっとるけど地域の平和祈念イベントの打ち合わせとかあるらしくてそっち行ってる」
今朝の平和記念式典に僕や兄さんは参加していないが、兄さんの家族は毎年参加してるらしくそういう話がよく出てくる。
それにしても兄さんの手は全く止まることがない、今はお好み焼きに合わせるそばと卵を焼いている。
「最近うちのマスコットの動画でオタフクの博物館行った時に教えてもらったんじゃけどな、この辺のお好み焼きやってみっちゃんとかはっちゃんとか人の名前が多いじゃろ」
「多いですよね」
「アレは戦争や原爆で生き別れた家族と再会するために自分や家族の名前をつけてるらしいな」
お好み焼きが程よく焼けたことを確認した兄さんは冷蔵庫からお好みソースとマヨネーズを取り出して、お好み焼きにたっぷりとかけてくれる。
「こうやって平和だからラグビー出来るし、呑気にお好み焼きも焼ける。そう思うとありがたいよな」
しみじみと兄さんが呟いた。
戦争を知らない僕らではあるが、戦争をしていたらきっとラグビーなんかしてないで働けと言われることになってただろう。
「本当に、そうですよね」
焼き上がったお好み焼きが僕の前に差し出される。
これからも平和に楽しく生きていけたらいい、と心から祈りながら。


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レッドレグリオンズとスカイアクティブズ。
今日は広島の平和記念式典の日です。

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枇杷の木と夏

『うちのグラウンドの枇杷が豊作だからコンポートを作ったんだが、ちょっと量が多いんで良かったら一つ貰ってくれないか?』
ブラックラムズ先輩からそんな電話が来たので、本社からの帰り道に先輩のところに顔を出すことにした。
二子玉川の駅を一歩出れば湿気が纏わりついてひどく蒸し暑く、梅雨の晴れ間の日差しが肌に突き刺さるように暑い。
「来て貰って悪いな」
先輩の暮らす部屋を訪ねるとモノクロでスタイリッシュな部屋の雰囲気にそぐわない枇杷の葉っぱが山のように積まれている。
「この葉っぱは何にするんですか?」
「枇杷の葉を乾燥させてお茶にしたり焼酎に漬け込むんだ、親が割と好きなんで毎年剪定した時に出た葉っぱで作ってるんだが此の光景を見せては居なかったか」
「先輩のところのグラウンドに枇杷の木があるのは知ってましたけどね」
枇杷の葉は新鮮な青い香りがしてグラウンドの芝の匂いに少し似て心地よく、その香りを嗅ぎながら作業する先輩の顔を眺めるのは退屈しない。
葉っぱと枝を分けて、使い古しのタオルで枇杷の葉っぱを綺麗に拭く。ただそれだけの単純作業だ。
やがて先輩は葉っぱを全て干し網に並べて外に干して行く。
「此れで良し、と。待たせて悪いな」
「お気になさらず。今日はもう仕事終わってるのでゆっくり帰っても怒られませんから」
「其れならば良いんだがな」
冷蔵庫からタッパーに入れられたコンポートが出てきて、それを薄いビニールに入れて渡してくる。
明るいオレンジの果肉は夏によく映える色味だ。
「じゃあ、先輩の手料理うちでおいしく楽しみますね」
僕がそんな風に笑うと「そうだな」と先輩も穏やかに微笑んだ。



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イーグルスとブラックラムズ。
ブラックラムズのグラウンドに枇杷の木があるという話をTwitterで見たので。

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初物スイカで乾杯を

まだ梅雨明けしてないはずなのに本格的に夏の日差しが降ってくる。
(差し入れが重い……)
チョイス間違えたかなとぼんやり考えながら、スタジアムの控室の扉を開ける。
扉を開けた瞬間にクーラーのひんやりした空気が漂って来てちょっとほっとする。
「あ、ワイルドナイツじゃん」
「こんにちわ!」
そう言って声をかけてきたアルカスとナナイロに「差し入れに来たよ」と声をかける。
窓の向こうの試合を真剣に見ているのは、ながとブルーエンジェルズと三重パールズだろうか。
TKMは山九フェニックスのテーピングを巻きなおしているし、みんなどこか試合前の緊張感を帯びている。
「これで全員だっけ?」
「今試合してる日体大とVENUS、あとPTSとディアナが試合前の準備で、桜七ちゃんが運営の方行ってる」
女子の試合はそこまで詳しくないけど名前ぐらいは聞き覚えがある。
居ないものはしょうがないので彼女たちの分は後で渡そう。
「で、差し入れって?」
「大玉スイカ冷やして持ってきたよ」
クーラーボックスに冷やされた大玉スイカ(もちろん地元産)を取り出すと、フェニックスがそわっとこちらに視線を向けてきた。
「このスイカ切ってないじゃん」
「包丁とまな板持ってきてあるから」
お陰で重くてしょうがなかったが近くだからできる事でもある。
包丁で12等分にすると、ナナイロが目をキラキラさせながらこちらを見てくる。
ブルーエンジェルズもスイカが気になるようで時々こちらを見るので「全員分あるよ」と声をかける。
「……ジャージ、汚すの嫌なのでかけるものありますか」
ブルーエンジェルズの要望に応えて大きなごみ袋に首と腕が通る大きな切れ目を入れて「これ被れば汚さずに済むよ」と告げる。
そう告げると軽く頭を下げてビニール袋を被り、ジャージを汚さないようにパクっと頬張るとその味に目を輝かせた。
「私もスイカ貰っていいですか?」
試合が休憩に入ったタイミングでパールズも遠慮がちにそう聞いてきたので「全員分あるんでどうぞ遠慮なく」と手渡す。
アルカスは最初から何も言わずにスイカをバリバリ食っており、フェニックスとTKMもそれを見て「差し入れあざっす」「頂きますね」といってスイカを食べ始めた。
「まさか初物スイカが大会の差し入れになるとはねー」
「ちょうど休みだったし、一度見てみたかったんだよね」
女子セブンスの大会は男子15人制と雰囲気が大きく異なり、お祭り的な賑やかさで知られる。
しかし国内の女子セブンスの試合を見に行くタイミングはあまり多くなく、休みと大会日程が被ったので思い切って直接来てみることにしたのだ。
「そういうことね」
「アルカスの試合ってこの次の次でしょ、せいぜい見苦しくないようにしてね?」
「当然でしょ」
アルカスがスイカを手にニヤリと笑う。
スイカで程よく冷えた頭で、この街よりも暑い試合を見れるなら安いものだ。




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ワイルドナイツと女子組。
太陽生命ウィメンズ、始まりましたね。

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