*今週は短編集です
*できっこないをやり遂げて(ルリーロ+キューデンヴォルテクス)
『ルリーロ、おめでとう』
電話越しにそう告げてきた先輩の声に「いえ、」とつい否定の声が出る。
「やおいかん(容易でない)ち分かっとったはずやったのに、初勝利がこがぁに遅くなったんは至らなさやろうとしか思えんくて」
『そげん事なか。お前は充分強い子やけん、卑屈になるな』
キューデンヴォルテクス先輩の博多弁がぺしんと背中を叩くように響いてくる。
この人がそう言ってくれるだけでこんなにも心が暖まるのは不思議だ。
『まだシーズンはあるんやけん、次勝ったら奢っちゃるからもう少し頑張れ』
背中を押してくれるその言葉の温かさに涙ぐみそうになりながら「はい」と小さく答えた。
*お土産物屋にて(ブレイブルーパス+ブレイブループ+ヒート)
ヒートがうちの妹とずいぶん話し込んでいるので、つい気になって息を殺して二人のもとに近寄った。
(うちの妹に手を出すなら覚悟してもらおうか!)
「この六花亭のノートとかどうかな」
「ノート系は確かにあれば便利ですけど毎日使うものでもないしなあー……文房具系好きならマスキングテープとかどうですか?」
六花亭のグッツを見比べながらああでもないこうでもないと盛り上がる。
「あ、ハンカチどうですか?何かと使うし消耗品だからいくらあっても困らないし!」
「花柄のハンカチかあ、確かに可愛いかも」
「パールズさんもきっと好きですよ」
なるほど、パールズへのお土産選びの相談に乗ってただけか。なら引き止める必要はなさそうだ。
「……ブレイブルーパス、いたの?」
「うちの妹に何しでかすか監督してた」
「しないよ?!」
*グリコの縁(ブラックラムズ)
「まさか本当に使用許可が降りるとはな……」
清水エスパルスから貰った応援歌の使用許可の覚書に目を通しながら、ありがたいという気持ちになる。
先日のブルーレヴズ戦でエスパルスの応援歌を使ったところ、思いのほかしっくり来たのでこのまま恒常的に使おうという話が出た。
そこでうちの応援団長と共に許可取りに赴いたところあっさり許可が取れてしまったのである。
「更にお土産まで貰ってしまうとはな」
スポンサーさんから貰ったという地元のお菓子や名物の詰まった紙袋を手に、お礼について少しばかり考える。
(折角ならば珈琲とお菓子を幾つか送らせて貰うか?)
ついでに我らがラムまる君のグッツを幾つか同封し、我について一寸ばかり知ってもらう機会にしても良い。
色々と考え込みながら見上げた車窓の向こうには青空と富士山が浮かんでいた。
*萩の月(ワイルドナイツ)
そう言えば全然仙台観光してないな、という事に気づいたのは仙台駅に着いた時だった。
試合前は悪い方向にちょっと思考が流れ気味だったのもあるかもしれない。
(なにかそれっぽいお土産でも買おうかな)
新幹線に乗り込むまでの短い時間にお土産物屋に駆け込んでふと気づく。
「……仙台土産って何買えばいいんだろ」
仮にもホーム側であるDロックスがいればいい案を貰えただろうが、こういう時に限って遭遇しない。
うろうろと回っているとふと目についたのは萩の月。
(お菓子系かー、俺よりアルカスのほうがこういうの好きなんだよな)
腐れ縁の同居人がニコニコ食べつつありがとー!と言ってくるのを想像すると悪い気はしない。
留守番のスタッフさんや知り合いの人の分込みで10個入りを手に取ると、かすかに頬が緩む。
(あ、この牛タンの燻製も買っとこ)