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コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

ファン感謝祭の片隅で

「シーウェイブス、遅くなってすまんな」
「参加者プレゼントど……え?」
そう声をかけてくれた親の後ろに、当然のような顔をしてついて来ていた八幡さんに「えっ」と声が漏れた。
「なんで八幡さんが?」
「ようやくまとまった休みが取れたので釜石の所に来たら、ファン感謝祭に行くって言うのでついて来ただけですよ」
「客が一人増える分にはよかろう?わしも去年のファン感は来れなかったから今年はどうしても見に行きたくてなあ」
タイミングによってはそういう事もあるかと思えば納得する。
八幡さんがうちの親にべったりなのはいつもの事だが、向こうから積極的に邪魔してくることはほとんどない。
「まあそういう事なら……」
「釜石、ビール飲みませんか?」
八幡さんがさっそく指さしたのはべアレンの生ビールコーナーだ。
折角の休みだというのに気温の割に湿度も高いからそりゃあビールでさっぱり行きたくもなるのが人情だ。
「お、行くか!じゃあまた後でな」
「はい」
いちおうイベントが終わったら飲めるよう家で冷やしているビールもある。
(今は運営の仕事優先!)
自分にそう言い聞かせつつ、参加者プレゼント配りに精を出すのであった。

*****

イベント終了後、八幡さんから突然こんなことを聞かれた。
「あのイベント中のクイズ、素人には結構難易度高めじゃないですか?」
「スポンサー企業クイズですか?」
「うちで働いてりゃ鉄鋼スラグぐらいなら見分けつくじゃろ」
「ですよね?」
そう言って顔を見合わせていると、八幡さんがはあと大き目のため息をついた。
「……この街から高炉が消えてもうだいぶ経つんですから、釜石の所の職員でも知らない人がほとんどじゃないんですか?」
言われてみればそれもそうだ。
高炉廃止からぼちぼち40年は経つのだ、高炉の仕事を知らない職員が過半数になる。
「それもそうだけどな?鉄の街背負ってるんだから、多少は鉄の事分かって貰わないとなあ?」
うちの親はほろ酔いでニヤリと笑い、八幡さんは呆れたように「まあそれはそうですけど」とつぶやいた。
「でもテックスエンジの製品クイズは本当に難しかったよなあ~」
「釜石はエンジニア部門にノータッチですからね、むしろテツゲンのレタス食べ比べも見ただけじゃ分からなかったですけど」
「わしは食えばわかると思うがなあ」
ああだこうだとどうでもいい話に盛り上がる2人を見ていると、ちょっとうらやましくなる。
ほんのちょっと友が恋しい気分になりながら俺は2人を見守る陰になるのであった。



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シーウェイブスと釜石+八幡
今日のファン感のクイズがむずすぎるというネタでした。

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うちのこいちばん!

「今年もマスコット総選挙の季節が来たな」
「ええ……と言うか去年のマスコット総選挙よりも遅い時期の開催ですよね」
イーグルスの指摘は正しいが、これはプレーオフトーナメントの開催時期が遅れたことによるものなので仕方がない。
しかし重要なのはそこではない。
「今年は二番推しの投票も可能になったが、イーグルスは勿論ラムまるに投票してくれるよな?」
「検討はしてます」
「何故だ?!」
「だってみんな可愛いじゃないですか……不動の一番はカノンちゃんですけど、ウィズリーや鮫太郎も気になってまして……」
イーグルスが困ったようにそう言い訳をする。
思わず机をたたいて「何方も可愛い系ではないだろう?!」と叫んでしまう。
「だってしょうがないじゃないですか!気になるんですもん!」
「我は二番推しをカノンちゃんで投票してるぞ?!」
「そうだったんですか?!」
「マスコット総選挙においてラムまるとカノンちゃんは永遠の好敵手だからな、故に一緒に投票していた」
「そう言う事でしたか」
イーグルスが納得してくれたところで、スッとスマホを差し出す。
画面はもちろんマスコット総選挙の投票画面である。
ちなみにマスコット総選挙が始まってから毎日投票できるように投票ページをブクマに入れてある。
「今此処でラムまる君に投票しなければ我は不貞腐れるぞ」
「先輩……だからって一番推しをラムまる君にするのはダメです」
イーグルスが一番推しをカノンちゃんにしたあと、二番推しをラムまる君にした状態で投票ボタンを押した。
「これで許して貰えますか?」
「……明日からも毎日二番推しをラムまる君にしておけよ」




偶然その場に居合わせたサンゴリアス「マスコット総選挙ガチ勢が元気すぎる」
同じく偶然居合わせたブレイブルーパス「ホントにな」

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特にオチの無いマスコット総選挙ネタでした。
今年のマスコット総選挙についてはこちら

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今週のあれこれ

*今週は短編集です



*できっこないをやり遂げて(ルリーロ+キューデンヴォルテクス)
『ルリーロ、おめでとう』
電話越しにそう告げてきた先輩の声に「いえ、」とつい否定の声が出る。
「やおいかん(容易でない)ち分かっとったはずやったのに、初勝利がこがぁに遅くなったんは至らなさやろうとしか思えんくて」
『そげん事なか。お前は充分強い子やけん、卑屈になるな』
キューデンヴォルテクス先輩の博多弁がぺしんと背中を叩くように響いてくる。
この人がそう言ってくれるだけでこんなにも心が暖まるのは不思議だ。
『まだシーズンはあるんやけん、次勝ったら奢っちゃるからもう少し頑張れ』
背中を押してくれるその言葉の温かさに涙ぐみそうになりながら「はい」と小さく答えた。

*お土産物屋にて(ブレイブルーパス+ブレイブループ+ヒート)
ヒートがうちの妹とずいぶん話し込んでいるので、つい気になって息を殺して二人のもとに近寄った。
(うちの妹に手を出すなら覚悟してもらおうか!)
「この六花亭のノートとかどうかな」
「ノート系は確かにあれば便利ですけど毎日使うものでもないしなあー……文房具系好きならマスキングテープとかどうですか?」
六花亭のグッツを見比べながらああでもないこうでもないと盛り上がる。
「あ、ハンカチどうですか?何かと使うし消耗品だからいくらあっても困らないし!」
「花柄のハンカチかあ、確かに可愛いかも」
「パールズさんもきっと好きですよ」
なるほど、パールズへのお土産選びの相談に乗ってただけか。なら引き止める必要はなさそうだ。
「……ブレイブルーパス、いたの?」
「うちの妹に何しでかすか監督してた」
「しないよ?!」

*グリコの縁(ブラックラムズ)
「まさか本当に使用許可が降りるとはな……」
清水エスパルスから貰った応援歌の使用許可の覚書に目を通しながら、ありがたいという気持ちになる。
先日のブルーレヴズ戦でエスパルスの応援歌を使ったところ、思いのほかしっくり来たのでこのまま恒常的に使おうという話が出た。
そこでうちの応援団長と共に許可取りに赴いたところあっさり許可が取れてしまったのである。
「更にお土産まで貰ってしまうとはな」
スポンサーさんから貰ったという地元のお菓子や名物の詰まった紙袋を手に、お礼について少しばかり考える。
(折角ならば珈琲とお菓子を幾つか送らせて貰うか?)
ついでに我らがラムまる君のグッツを幾つか同封し、我について一寸ばかり知ってもらう機会にしても良い。
色々と考え込みながら見上げた車窓の向こうには青空と富士山が浮かんでいた。

*萩の月(ワイルドナイツ)
そう言えば全然仙台観光してないな、という事に気づいたのは仙台駅に着いた時だった。
試合前は悪い方向にちょっと思考が流れ気味だったのもあるかもしれない。
(なにかそれっぽいお土産でも買おうかな)
新幹線に乗り込むまでの短い時間にお土産物屋に駆け込んでふと気づく。
「……仙台土産って何買えばいいんだろ」
仮にもホーム側であるDロックスがいればいい案を貰えただろうが、こういう時に限って遭遇しない。
うろうろと回っているとふと目についたのは萩の月。
(お菓子系かー、俺よりアルカスのほうがこういうの好きなんだよな)
腐れ縁の同居人がニコニコ食べつつありがとー!と言ってくるのを想像すると悪い気はしない。
留守番のスタッフさんや知り合いの人の分込みで10個入りを手に取ると、かすかに頬が緩む。
(あ、この牛タンの燻製も買っとこ)

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足掻く

帰り道のチームバスの窓ガラスに泣きそうな自分の顔を見た時、思っていた以上に自分が落ち込んでいる事に気づいた。
先週のブルーレヴズ戦に続く手痛い敗戦の傷がじくじくと胸の奥で痛む。
(一人少ない時間だってあったのに、それでも勝ち点をもぎ取れなかった)
何がいけなかったのか?何を間違えたのか?と試合映像を見返しながら思考の袋小路に迷い込む程度には落ち込んでいる。
誰かに励まして貰いたいとは思うけれど甘えさせてくれる誰かが思いつかない。

「……めちゃくちゃ今メンタルに来てるな」

袋小路を全力で迷走してることを自覚してるのに意識を逸らす方法も思いつかない。
良くも悪くも俺はラグビーに生きてる人間だからこういう時に他の気晴らしがすぐに出てこないのだ。
(そう言えばまだ飲み切ってない酒があったっけ?)
唯一出てきた気晴らしの酒の事を考える。
確かウィスキーがまだ瓶半分ぐらい残ってたはずだが、炭酸水は残ってただろうか?
……レヴズに負けた後ハイボールを飲みながら試合を見返した時に飲み切ったんだった。
そう思いだすとギリッと奥歯を噛み締めたくなる。
ずっと強いチームなんてない。黄金期があって、暗黒期がある。どのチームだってそうだ。
けれどまるで自分の足先が暗黒期の泥沼に入ったのではないかと思うと不快でならないのだ。
やっぱりこういう時は、勝つしかない。
意識を切り替えて次の試合に勝つために練習する。それだけがすべてなのだ。



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ワイルドナイツのはなし。
19年ぶりの連敗と言うパワーワードよ。

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遠き友情

「シーウェイブスって同郷のチームさんらと仲ええんやなあ」
試合後の飲み会を終えて駅まで送る帰り道、レッドハリケーンズがそんなことを呟く。
「県内で3つしかないプロスポーツチームだからなあ」
「少ないとこやとああなるんやなあ」
大阪はプロスポーツチームも多いのであの距離感はちょっと物珍しいのかもしれない。
今回は今度行われるスタンプラリーイベントの宣伝も兼ねて盛岡から来てくれたグルージャとビックブルズも交えての飲み会となり、色々と刺激を貰いあうことが出来て楽しかった。
「レッドハリケーンズもこういう集まり参加したことあるじゃろ」
「あるにはあるけど、あんな気の合う友人かって言われると微妙やなー」
「数が多いと気の合わない奴もいるか」
「せやなー」
飲んだ後独特のふわふわした気分で冬の終わりの道を歩くのは心地が良い。
ふと足を止めたレッドハリケーンズがある方向を見つめてから「なあ、アレ鹿?」と聞いてくる。
「鹿だな」
道の向こう側で植木をもしゃもしゃと貪り食う夫婦のシカだった。
「ホンマに町んなか普通に歩いとるんやなあ」
「昔はそんなに多くなかったんだけどな」
そういえばグルージャも初めて鹿を見た時に『こんな街中に鹿?』と悲鳴を上げてたのを思い出す。
あの2人はまだ若いし盛岡の街育ちだからこの街に来るたびに新しい発見に目を輝かせていた。
「もう釜石には何べんか来とるけど、まだ知らん事ってあるんやな」
「そりゃそうだろ」
「今回の手痛い敗北とかな」
レッドハリケーンズ的には色々思うところがあったようだ。
「でもわしもまだ知らない事は沢山あるぞ」
「降格の哀しみとか?」
ピンポイントでそこを言うな。
「もっとほかにもあるわ」
「なら、いつか教えたるわ。降格と昇格の悲喜こもごもをな!」
釜石駅前に着くと、くるっと踵を返して俺の顔を見る。

「次は俺が勝ち点貰うたるからな!泣いて帰ること覚悟しとき!」

「勝ち点とたこ焼きを手に帰りたいけどなあ」
そう言いつつ手を振って見送る。
遠くからラグビーのために来てくれる人は本当にありがたい。
「……そうだ、明日はビックブルズの試合に行くんだった」
良き仲間に恵まれた幸運を抱きつつ、今日はゆっくり寝ようと思った。


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シーウェイブスとレッドハリケーンズ
釜石行きたかったなあ(遠い目)

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