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コーギーとお昼寝

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ブラックラムズさん、福島へ行く

Jヴィレッジ駅で降りるとレヴズが迎えに来てくれていた。
「久方ぶりだな」
「こちらこそお久しぶりです、風強いですよねきょうは」
「今週はずっと然うだが此の辺りは海も近いようだから尚更だな」
冬の冷たい風に体温が奪われないようにきゅっと首もとまでコートのチャックを閉め、ファンキャップを深く被った。
レヴズのほうも気持ちは同じようで今日はロングコートの襟を立てて寒い寒いとつぶやいている。
「これだけ風が強いとボール持ってかれそうですよねえ」
「大雪大雨よりはマシではあるがな」
はじめてのJヴィレッジ開催にどれほどお客さんが来てくれるのかと言う不安はある。
けれども初めて来た場所への高揚感を味わいながらスタジアムへの道を行く。
「斯う寒いと試合後の風呂が気持ち良いだろうな」
「でしょうね。そういえばこの近くの道の駅、温泉付きらしいですよ」
「寒い日の温泉は良いな。まあ我は鮟鱇鍋も楽しみだが」
「あんこう鍋ですか」
「此の辺りは鮟鱇も有名だからな、鮟鱇鍋のキッチンカーを探してお願いして有る」
びゅうびゅうと吹き付ける冬の風の中で思い出すのは出店探しの苦労だ。
土地勘のない地域でスタッフと共に鮟鱇鍋を出して呉れる店を探すのに苦労したが、県境を越えて茨城北部の有名な旅館さんが出して呉れる事になった時の安心感は大きかった。
「楽しみです、あんこう鍋」
「鮟鱇鍋と温泉が有れば勝ち点が無くとも満足はして貰えるだろう?」
「いや勝ち点はくださいよ!」
そうこうしているうちにスタジアムが見えてきた。
さて、今日はどんな試合になるだろうか?



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ブラックラムズ先輩とブルーレヴズさんの福島ゲーム。

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足湯は仲直りに効く

「足湯に入りながら電車待てるのええなあ」
隣に座っていたライナーズがスポーツドリンクを飲みつつつぶやく。
試合後の酷使された足に温泉が心地よく染みわたり、寒風吹きすさぶ駅での待ち時間を温めてくれる。
「そりゃよかった」
「メヒカリのから揚げ食うて勝ち点貰うて温泉も入れて言う事ないわ」
「……前半のあの好調が後半にも続けられれば勝ち点になったんだけどなあ」
そうぼやくとライナーズは「ごめんな~」とへらへら答えた。
全く申しわけなさを感じない声色だがもうあきらめるしかないのだろう。
「まあ俺んとこ来たら美味いカレーパン奢ったるから、な?」
「カレーパンよりてっちりがいい」
「シレっとええもん頼みよるわあ~」
ハハッと笑っていると構内に品川行きひたちの到着を告げるアナウンスが響く。
確かライナーズが乗る電車だ。
「ぼちぼち足湯出なな」
「そうだな。事故らないように気を付けて」
「おん。あといわきFCくんに差し入れのゼリーのお礼言うといてくれる?」
「覚えてたらな」
足湯から出て靴を履きなおすと、そばに置いていたキャリーを手に取る。

「ほな、次は花園で」

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シーウェイブスとライナーズ。
今年のいわきゲーム遠征もやっぱり温泉から離れられませんでした。

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30年目の朝に

まだ暗い冬の早朝、竹灯篭の中にろうそくの火が灯っている。
ここにいるほとんどの人があの30年前の朝を覚えているのだと思うと、30年前というのは思いの外最近の事なのだと気付かされる。
「……もうすぐよ」
隣にいた姐さんが俺にそう声をかけると公園に「黙祷」という合図が響く。
その日喪われたあらゆる命に黙祷を捧げながらこの30年のことを思い返す。
この30年で理不尽に喪われていったものは多く、その中には人間が引き起こした過ちによるものも多かった。
「姐さん、」
「うん?」
「俺らは無力やねえ」
「……そうね。でも私達には知恵があり、動かせる身体があり、回せるお金もある。必要な時にはそれを差し出して理不尽に対抗していくしかないと思うわ」
あの日、ラグビーのために鍛えられた肉体を活かして何度も瓦礫をどかした。
そうして助け出した後にさまざまな現実に耐えかねてこの世を去った、と風の噂に聞いたこともあった。
「姐さん」
「なに?」

「俺はこの街の人にとっての希望でいられたんやろうか」

そう問えば姐さんは少し考えてからゆっくり口を開いた。
「この街の人全てとは言わないけど、少なくとも私と加古川、そしてその周りにいた人たちにとっては希望そのものよ」
「もっと色んな人の希望でありたかった、って言うのはわがままやろか」
「それはちょーっと難しいけどあなたを見て『もう少し生きてみようか』と思った人はいるんじゃない?あなたを見て1人でもそう思えた人がいれば、それはあなたがいる意義を十二分に果たしてる」
姐さんはそんなふうに俺に言う。
「せやったら良いんですけど」
「大丈夫よ。ところで明日試合だけど寝不足は辞めなさいね?」
「帰ったら寝るんで大丈夫ですよ」
「じゃあ帰ったらよく眠れるようカモミールティーでも淹れましょうか」



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スティーラーズと神戸ネキ、30年目の朝に。

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花園にて

花園ラグビー場にはきょうも日本中のラグビーファンが集う。
「こんにちわ、」
「ああ、神戸製鋼所さんやないですか」
冬物のロングコートに身を包んだ神戸製鋼所さんがふらりと顔を出してきた。
こんな年の瀬間際にも花園に来る企業さんは少ないが、この人は大体一度か二度は高校ラグビーを見に来る。
「今年もブース出してるのね」
「もうこれはお約束なもんで。うちの選手らのサイン貰います?」
「それは大丈夫。あと使い捨てカイロ要る?」
「助かりますわあ」
さっそく使い捨てカイロの封を切ってお腹辺りに貼っておくと、ちょっと体が楽になる。
(お腹冷えるとホンマにアカンことになるからなあ……)
「そう言えば今日スティーラーズ連れて来んかったんですねえ」
「あの子は今日仕事納めなのよ。あ、今年の高校ラグビーのパンフも買わなきゃ」
「パンフは例年通りいつものブースに置いてますんで~」
「ありがとう。……そういえば、第2グラウンドが随分ひどい状況になってるって聞いたけど本当なの?」
思い出したように神戸製鋼さんがそんな事を聞いてくるが、その声には微妙な遠慮が含まれている。
花園の第2グラウンドの整備問題はここ最近度々話題に上がっていた。
2019年にFC東大阪が指定管理者になった際、第2グラウンドをスタジアムにして寄贈することを表明して指定管理権限をもぎ取った。
……が、この5年間ずっと改修は止まったままとなっており問題となっていたのだ。
「まあ、残念ながら」
「悔しくはないの?」
その声の明瞭さに、この人が一番聞きたかったのはそこなのだろうと察してしまう。
スティーラーズやレッドハリケーンズには言えない気持ちも、この人になら明かしてもいいだろう。
「俺が指定管理者のままやったらあんなことにはせんかったけどなーって気持ちはありますけど、取れなかったんはどうしようもないですからねえ。第2グラウンド改修は行政とFC東大阪本人の問題ですし、俺に出来るんは第1グラウンドの優先使用権は俺が握っとると言う事実で軽ーく脅しかけるぐらいですよって」
カラッとごまかすようにそう答えると「そうよねえ」とつぶやいた。
「ここはあなたの庭だもの、あなたが一番悔しいはずよね」
「そうですよ。ここはラグビーの聖地で俺の庭なんですから」
遠くから試合終了のホーンが鳴り響く。どうやら試合がひとつ終ってしまったようだ。
彼らに最良の花園ラグビー場を見せてやれない口惜しさはあるけれど、俺に出来ることはあまりにも少なすぎた。

「……ああ、もうすぐ次の試合始まりますよ」

俺たちに出来るのはただ、ラガーマンたちにとって最良の道を探すことだけだ。

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ライナーズとこべネキ。
高校ラグビーの季節に花園の整備問題を想う。

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君とまた最高の冬が来る

真っ赤に染まる日産スタジアムの真ん中で、最初の一勝を噛み締める。
「前半無得点から逆転とかされちゃうと自分がまだ鍛え足りないって思っちゃいますねえ」
今回の負け方に思うところがあったらしいイーグルスの愚痴が背後から聞こえてきた。
「まあその辺はイーグルスの頑張り次第だよ」
「そうですね。まだリーグ戦始まったばかりですし、最後に勝てばいい訳ですから」
「言ったな?」
生意気な後輩のわき腹を2,3回突いてやると「若者パワーですよ!」とイーグルスも突き返す。
そんな折、イーグルスがふと客席の方に視線を止めて走り出す。
「先輩!サンゴリアス君!」
俺もそれについて行くと確かに二人が黄色と黒のハンカチを振って俺らを呼んでいた。
(と言うかよく見えるな……?)
「イーグルス、今回はちょっと喝だな」
「そこは重々承知してます」
ブラックラムズからお叱りの言葉を受けてるイーグルスは置いといて、サンゴリアスは「先輩後半だけやる気出してたね」とからかってくる。
「俺はずっと本気だったけど?!」
「いやー、前半危うく無得点だったのはやる気なく見えるでしょ。フリゼルはすごかったけど」
「80分間ずっと本気だわ!ったく、お前この後酒奢れよ!」
「はーい、イーグルスとブラックラムズさんも飲み行く?」
「我は行くぞ、面白そうだしな」
「ちょっと僕いまお金ないんで奢りなら行きます」
そうは言いつつブラックラムズは連れて行く気満々のようで「金なら我が出してやろう、冬の賞与も出たしな」とイーグルスを誘ってくる。
今日はやかましい飲み会になりそうだけれど、これもまたラグビーの冬の景色と言える。



(今年もリーグワン始まったんだなあ)

そんな心地で笑いながら「じゃあ30分後に合流で」と客席の声をかけるのだった。

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ブレイブルーパス先輩とイーグルス君の開幕戦withサンゴリ黒羊。
今年の開幕戦はテレビ鑑賞でした。

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