忍者ブログ

コーギーとお昼寝

市町村・鉄道・企業・スポーツチーム擬人化よみものサイト、オンラインブクマはご遠慮ください。

だって今日は寒いので

東京・江戸川区陸上競技場は試合後の片付けが終わってもまだ冷たい雨が降っていた。
「お風呂行きたい」
イーグルス君が寒さに震えながらそんなことを言うので無性にお風呂に行きたくなった。
「わかる」
「サウナでもいいからとにかく風呂で身体を温めたいですよね」
ずぶ濡れとまではいかないけど足回りは雨で冷え、ポンチョで蒸れて汗もかいてる。
(ただこの辺ってあんまり温浴施設ないはずなんだよなあ~)
いますぐお湯で身体を温めたいのに何にも思いつかないのがツラすぎる。
「ヘイsir、この辺の温浴施設を調べて」
「かしこまりました」
もうお風呂の気分が固まってしまったのだろうイーグルス君の動きは速かった。
最も近い温浴施設を調べて僕を運転席に座らせると「僕この辺の土地勘ないんで運転お願いしますね」と押し付けてきたのである。
「……容赦ないね」
「勝ち点あげたんだからいいじゃないですか。あ、今住所ナビに入れたんで」
「もうそれ土地勘関係ないよね?別にいいけどさ」

****

目的地はいかにも昔ながらの銭湯という風情のところで、入湯料の支払いもそこそこに熱いお湯に浸かれば一気に体が温まる。
「……お風呂っていいねえ」
「クラブハウスのお風呂とは違う風情がありますよね」
冷えて感覚の鈍った指先をお湯で温めながらふと目前のペンキ絵に目が行った。
富士山に三保の松原という定番のペンキ絵で思い出すのはイーグルス君のユニのことだ。
「そういやイーグルス君のユニって北斎柄だけど好きなの?」
「んー、北斎が好きかと言われると悩みますけど今のユニは気に入ってますよ」
「確かにあれかっこいいもんねえ」
「よかったらレプリカ買います?」
「しれっと買わせようとしないでよ」
ちゃぽちゃぽとお湯と戯れながら、お互いの身体を見比べると小さな擦り傷や切り傷が見えた。
あんまり関わりのない後輩ではあるけれどこういうの見ると同じだなあと思うのだ。
「そういやお風呂代後で返してね」
「ブラックラムズ先輩ならこういう時奢ってくれるんですけどね」
「俺は奢りませ~ん」



----
スピアーズとイーグルス。
今日マジで寒すぎません???????現地観戦勢強すぎる

拍手

PR

君と話がしたいのだ

いい加減有休を使え、と親に言われたので有休を取ることにした。
そうは言っても日曜日には釜石での試合があったからのんびり休む気にもなれず、金曜日のお昼から一日かけて向かうことにした。
浦安の家から東京に出て、新幹線で仙台へ。
軽自動車を借りて国道4号線沿いにあったあの場所を探しに行くことにした。
「……久しぶりですね」
あの場所を訪ねるのはいつ以来だろうか、もう15年?以上来ていないだろう。
やがて入力した住所の近くにたどり着くとそこはグラウンドからずいぶんと様変わりしていた。
「もう会社のグラウンドじゃないんですね」
かつてそこはNTT東北グラウンドと呼ばれ、在りし日には日本代表もいた場所であった。
当たり前だがグラウンドをグラウンドのまま遊ばせておくには月日が経ちすぎた。
仙台の駅前も4号線沿いの道もずいぶん変わってしまった。
バーンズがーNTT東北ラグビー部がー今の仙台を見たらどう思うだろう?
プロ野球チームが出来、新しい地下鉄ができ、震災やコロナでこの辺りも変わってしまった。
自分や身内もずいぶん変わってしまったし、もしここに彼がいたらどういう目で仙台を見つめ、語るだろう?
けれどこの町にもう彼はいないのだ。

「こういう時にいてくれればおすすめのお店の一つでも聞けたんですけどね」

ぽつりとこぼれたどうしようもない文句は風に流される。
東北の春は東京より少しのんびりしていて、まだ春風と呼ぶには冷たい。
ぐぐうっ、とお腹が鳴って体が空腹を叫びだす。
そういえばまだ宿も取っていなかったし近くのお店に入って昼食にしよう。
夕方には仙台を出て釜石入りするから少し余裕もあるし、ちょっといい牛タンでも食べようか、
「泊めてもらうなら仙台土産も買っておいた方がいいですかね?」
もう君はいないけれどいつか君と再会する日のために、話すことを一つでも増やしておこうじゃないか。



----
ディーロックスと仙台ぶらり旅。
いつか言及しておきたかった要素を今日のうちに触れておく。

拍手

鵜住居の散歩道

「ここから海って見えんの?」
シャトルズがつまらなさそうにそう呟いた。
地図で見れば海からほど近いこのスタジアムだが海とは方向が微妙にずれており、川は見えるが海が見えない。
「スタジアムからは見えないな」
「駅前も海全然見えないじゃんね。
せっかくおうじょうこいて海の近くに来たでな、海見たかったじゃんね」
地図で見ると駅の中心部もスタジアムも海が近いので海が見えるイメージがあったのだろう。
シャトルズの住む刈谷は愛知の内陸のほうだったはずだし、気持ちはわかる。
「少し行けば見えるところがあるぞ。行くか?」
「行こまいか」
これは確か『行こうよ』という意味だったな。名古屋の製鉄所さんに教わった記憶がある。

****

スタジアムを駅とは反対方向に進んでいくと坂道になる。
坂道のてっぺんにたどり着くと水門があり、上が通れるようになっているのだ。
「海や……」
「今目前にあるのが大槌湾、あれが大槌のひょうたん島だな」
海辺に育った身としては冬の海に余り感動はないが、みんな不思議と海が好きらしい。
もちろん海が嫌いなわけではないしあの日のことには自分なりに折り合いもつけてる。
(ま、喜んでくれるんならええか)
「海もええが、反対側もいいぞ」
晩冬の日をきらめかせた鵜住居川の向こう側に大きく翼を広げたようにスタジアムが立つ。
あれが自分の誇りなのだ。
「……いいスタジアムじゃんね、海も川も山も全部あって駅も近い」
シャトルズからふっとこぼれた言葉と笑みに返すことは一つ。



「そりゃあここは自慢のうちだからな!」

----
シーウェイブスとシャトルズ。
はじめてうのスタ行ってきましたがやっぱ空が広くていいですね。

拍手

温泉は負け試合の穴埋めになるのか

「もう一泊予約しとけばよかったかなあ」
試合後の疲れた体でブレイブルーパス先輩がそんなことを言う。
「ならうち泊まります?」
「うちって大分にも家持ってんの?」
「親の別荘ですけどこっちで試合ある時は自由に使っていいって言ってもらってるんで」
合鍵を見せつつそうこう会えると「金持ちじゃん……」と微妙に引かれた。
企業なんだしそれぐらい持っててもおかしくないのでは?という気がする。
「でも飛行機取り直すの面倒だしいいや、帰ったら反省会しないと」
そういって思い切り体を起こす。
よっほど後半怒涛の追い上げをしても勝ちきれなかったのが悔しいのだろう。
(まーうちも監督が鬼のように怒ってるみたいだったしなあ)
たぶん月曜日はめちゃくちゃ怒られるだろうなあ、と遠い目になる。

「次大分でやるときは圧勝してやるから、そん時はイーグルスの別荘の温泉浸かるかな」

そんな風に不敵に笑いながら答えてくる。
「未来で楽しみにしてますね」


----
イーグルスとブレイブルーパス。

拍手

小さい夢を見る

「24-25年シーズンから新規加入チームの募集かあ」
なんとなく開いたスポーツ新聞の片隅の記事に目が留まって、小さくため息が漏れた。
二人の後輩を立て続けになくしたこの福岡の地にまたもう一人後輩が来るのだろうか?
「……ああ、でもルリーロがおるな」
なくなった二人の後輩の面影を持った瑠璃色の青年を思い出した。
あの子も確かリーグワンを目指すつもりでいたはずだし応募する気はあるだろう、聞いてみたいような悩ましい心地になる。
もしルリーロがリーグワンに来てくれたのなら。
かつてブルースやレッドスパークスにしたように、ご飯を食べながらラグビーの話ができるだろうか。
ナナイロプリズムも招いて三人でテレビを見ながらでも、二人で居酒屋で飲みながらでもいい。
ルリーロの作った果物を食べながらというのもいいかもしれない。
同じリーグで競い合いながら可愛がってきた後輩たちの不在はやっぱりさみしいのだ。
申請の締め切りは6月。
その時までにあの瑠璃色の後輩がここに来る決意を見せてくれたなら、本気であの子を迎え入れよう。



(この小さい夢を現実にしてくれな?)

-----
キューデンヴォルテクスのひとりごと

拍手

バーコード

カウンター

忍者アナライズ