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コーギーとお昼寝

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壁がある、だから

ノーサイドの笛が鳴った時、体がかすかにぶるりと震えた。
だってそうだろう、決勝という大舞台のきっぷがいま俺の手元に転がり込んできたのだ!
「……スピアーズ」
隣にいたサンゴリアズはどこか悔しさをにじませつつ俺に笑いかけてきた。
「最近お前と試合するとこういう白熱した展開になりがちだよな」
「去年の準決勝も今日の試合も、サンゴリアスだから楽しかったのかもね」
「勝たなかったら許さねえからな」
背中をバンバンはたきながらの激励はちょっと痛いけれど、このはたいてきた手の強さはきっとサンゴリアスの悔しさなのだ。
「負けたらもっと強めにはたいてやるから覚悟しとけよ!」
そう言ってスタッフさんたちのほうへ向かっていくサンゴリアスの背中を見て、やっと俺は気付く。

(そうか、いま俺はサンゴリアスのここで負けた悔しさを背負ったんだ)

客席からTMOの多さを愚痴る声や、最後のトライ取り消しへの文句が聞こえる。
確かにそれらは俺に都合のいい方向に転がっていったのは事実だ。
こうした気持ちが来週の決勝戦で心の壁になるかもしれない、でも俺はその壁を越えていける。
負けた悔しさも審判への文句も何もかもを超えて俺はあの優勝カップをつかみ取るんだ!



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スピアーズとサンゴリアス。
今日の準決勝すごかったね……

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祭りばやしの中で

どんたくの賑わいも四年ぶりとなると例年以上に浮かれているように思う。
肩車に乗せたナナイロプリズムもこの浮かれ気味の空気にそわそわしていて、それがかわいく思える。
「どんたく、初めてやもんなあ」
「うん!」
綺麗な衣装で踊り歩く人々に目を奪われているのが見ずともわかる。
その辺はやっぱ女の子よなあ、なんて思いながらその賑わいを見つめている。
(……4年前のどんたくは、ブルースやレッドスパークスがおったのになあ)
親の手伝いに追われていたら2人からどんたく見に来たなんて連絡が来て、一緒に回ったのだった。
まさか次のどんたくの時には2人がいなくなるなんて想像もしていなかった。
「ねー、お腹空いた」
しんみりした気持ちを知ってか知らずかナナイロプリズムが急にそんな事を言う。
肩から降ろしつつ「何喰う?」と聞けば「ラーメン!」と元気な答え。
「んー、この辺で旨いとこってどこやろ」
うちの親に聞いてみようかとスマホを開けば、もうすぐパレードの準備のために合流する時間だ。
まずい、もう戻らないと。
「時間ないから屋台もんで済ましてええか」
「え~」
納得いかない声を上げてくるナナイロプリズムを宥める方法も思いつかず、もうこうなったら腕に抱えて親のところに向かう。
「終わったらいくらでもラーメンおごるから!」
この子がいると孤独を寂しがる余裕もないらしい。


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キューデンヴォルテクスとナナイロプリズム。
前回どんたくの話書いたときは未実装だったのになあ(遠い目)

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東京の夜の中で

ちょうど東京に行く機会があったので、ついでに試合を見に行こうと思った。
単独行動の許可を取ってサンゴリアス対スティーラーズ戦のチケットを取ると、最低限の荷物だけを手に秩父宮の立見席に滑り込む。
夜の秩父宮は肌寒くも賑やかで、その賑やかしさがちょっとだけ羨ましくもある。
(……まあ人口が違うしなあ)
うちでもナイターやれたらいいのになあ、などと無責任なことを考えつつ選手たちの試合前の練習に目を向けていたその時だった。
「シーウェイブス!なんでおるん?!」
給水係のビブスを着たスティーラーズがこちらの方に駆け寄ってきた。
「今日スピアーズとの練習試合でこっちに来ててな、勉強がてら見に来た」
「先言うてや、姐さんの分の席余っとるし言うてくれたら譲ったのに!」
「身内席はお前の身内で使っとけ」
「同業他社の友人は広義の身内やわ」
ぶつくさ言いつつ「まあお前が来てくれるなんてめったにあらへんからええけど」と呆れ気味に言う。
「試合後、飲みに付き合いや」
「新幹線の時間的に無理だな」
「じゃあ後で感想聞かせ、サンゴリアスとも共有するから」
雑談もそこそこに選手の元へ戻っていくスティーラーズを眺めながら、さっき買ったビールをひとくち飲む。
ナイターが持つ独特の雰囲気は代えがたいものがあり、まして春の夜となれば桜の花も風に乗って飛んでくるのがいい。
グラウンドの隅のほうにいたサンゴリアスとも目が合ったので軽く手を振り交わす。
試合が始まるまで30分、国内トップクラスの選手たちのアップを見るのもいい勉強だ。
「今日はいろいろ学べるといいな」



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シーウェイブスとスティーラーズ。
ちょうど偶然同じ日に東京にいたのでそういうネタです。

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花火と恋の歌

春の宵闇に花火の打ちあがる音が響くと、自然に歓声が上がる。
「試合後の花火とかよくやるよなあ」
「お客さんに来てもらわないといけませんから」
色とりどりの花火が咲いては散っていくのを見ながら「夏以外の花火もいいもんだな」とブレイブルーパスさんが言う。
選手もスタッフも観客も花火に目を見開くのが嬉しくて微かに頬が緩む。
「そういやさ、花火の歌って恋の歌も多いよな」
「whiteberryとか米津玄師とかそうですよね」
「だから今日選手のコイバナトークイベントとかプロポーズイベントしてた訳?」
試合前にあったイベントの話を持ち出してきたブレイブルーパス先輩に「そんなとこです」と笑ってごまかす。
「俺らは恋とかそんなしてる暇もないけどプロポーズのやつとか見てて幸せな気分になれるよな」
「恋はするものじゃなくて落ちるものですよ」
僕がそんなことを言うと「そういうもんなのか?」と素直に尋ねてきた。
(ブレイブルーパスさんはそういうのと縁遠そうだもんなあ)
その良し悪しは判断に迷うけれど、その問いに対する答えには迷うものがあった。
「うちの社長がそう言ってました」
素直に答えにくくて社長のせいにすると「人の言葉かよ」と返ってくる。
恋というやつが花火のように一瞬で散ってくれるものならばどれだけ気が楽だっただろう。
「あ、いた!」
そう言って駆け寄ってきたアザレアを捕まえると、暖かい家族の匂いがする。
腕に抱えて花火がよく見えるようにしてやるとわあっと嬉しそうな声を上げる。
「花火、うちの妹にも見せてやりたいな」
「僕は歓迎しますよ」
その腕に抱えた温かさと重みを感じながら僕はそう笑った。


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レヴズとブレイブルーパス。試合後の花火見たかったな~(無理)

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ふりだし

「この度は本当にご迷惑をおかけしました」
玄関を開けると、レッドドルフィンズが深々と頭を下げて手土産のお菓子を差し出してくる。
ご迷惑の心当たりはひとつだけあるがもう終わったことのつもりだった。
「……あの件ならもう協会から審判も下りた、今更詫びられても困る」
「そうかもしれませんが、僕としてはこうしてちゃんとダイナボアーズさんに詫びを入れない事には気が晴れなくて」
その一言で心にかすかな靄が浮かんでくる。
少し意地の悪いことを言って困らせてやろうかというささやかな復讐心である。
「つまりそれは、レッドドルフィンズが自分のために頭を下げに来たということだろう?」
あの件ではこちらも迷惑を被ったし、D2の面々も同様に迷惑を被ったはずだ。
彼らにも詫びを入れるのが筋じゃないのだろうか?
「……そうかもしれません。ですが!」
それまで頭を下げていたレッドドルフィンズが体を起こし、目を見てこう告げた。
「新選組の誠の文字を一度でも背負ったものとして、正しくありたいと思ったんです」
以前見た赤に新選組をイメージしたダンダラ模様のデザインのシャツを思い出した。
「俺に詫びを入れることがその第一歩ということか」
「はい、D2メンバーや関係者の皆さんにもちゃんとお詫びに行くつもりです」
「なら俺に構わず他の者にも詫びに行くべきじゃないのか?」
レッドドルフィンズは虚を突かれたように一瞬ぽかんとしてから「ありがとうございます」と頭を下げた。
お菓子を受け取るとレッドドルフィンズは再び会釈をして去っていく。



(……ちゃんと更生してくれるといいんだがな)

人生にはやり直しが効くが、やり直しのチャンスは決して多くない。
その少ないチャンスをしっかりと正しくまっすぐに生きていくことが彼の新しい始まりなのだから。

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ダイナボアーズとレッドドルフィンズ。
今日から活動再開らしいので、ほんと次こそはしっかりしてくれよ(懇願)

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